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さみしんぼ

「うーん… また二日酔いか…」

あの後、サントリナを交えて軽く飲むことになった。軽くのはずだったが話が弾み、注がれるがままに飲んでしまった。そもそもですよ、飲み食いした後に全力疾走していたわけですよ。追加でアルコール入れたらダメでしたわ。

「今日もつら辛そうだな、サクラよ…」

「ここ数日、こんなのばっかな気がする…」

冷たい牛乳が胃袋に染み渡る。大きく深呼吸。よし、大丈夫だ。完全ではないが復活!

「そういえば、リナさんは?」

昨日はけっこう飲んでいたが、最後まで片付けも手伝ってくれていた。なので強いものだとばかり思っていたが… それとも普通に朝に弱いのかな?

「彼女ならもう出掛けたぞ。昨夜はごちそうさまと言っていた」

「いやいや、一人で行かせちゃダメだろう!?」

どこでどんなトラブルになるかわからない。ましてや、まだ彼女の存在は世間に知らせていないのだ。急いで追いかけようと準備しようとすると

「心配するな」

と部屋の隅を指差す。そこには床に画かれた魔法陣が淡い光を放っていた。

「移動用の魔法陣。異召省応接室と繋いだそうだ。なにやらカドマツ氏と相談事があると、朝食もそこそこに飛んで行ってしまったよ」

なるほど。彼が微塵も焦っていないのはそういうことか。目的地に瞬間移動するならば、道中のトラブルなど起きるはずもない。しかも、その目的地が我らが職場なら、むしろ安心安全この上ない。しかし、いつの間にこんなものを…

「移動用の魔法陣は一つだけでは発動しない。出発点だけでなく到着点も設置せねばならぬ。昨夜、あの時に仕掛けておいたのだろう。しれっと卒がない。白金大賢者プラチナムセージの名は伊達ではない」

勝手に部屋に通路を作られたようで、少し気分は穏やかではないのだが… こういう感じにも慣れてきている自分が怖い。

「せっかくだから私も使わせてもらおう。時間ギリギリまでのんびり出来るね」

「ちなみに、魔法陣の外周に目盛りがあるだろう? 残存魔力の表示だそうだ。あれが無くなると魔法陣も消えるらしいぞ?」

なるほど。たしかにタイムショック的な目盛りが淡く光っている。残りはだいたい円の1/3くらいか。あ、ひとつ消えた。

「ふ~ん。ずっと出てるわけじゃないんだね。誤作動や悪用防止なのかな?」

「普通に魔力の問題だろう。半永久的に残したいのならば、常に魔力供給をせねばならぬ。国家事業のレベルだな」

魔力はわからんが、こちらの世界でそういう物を作ったとしての維持費やエネルギーコストを考えると…

うん、うちの部署では取り扱いたくない問題だね。あ、またひとつ消えた。

「あれ? 思ったより消えるスピード早くない? もしかして時間無い?」

通勤で楽をしたいがために、急いで朝の準備を整える。なんとか間に合ったが、結局いつもより疲れる朝になってしまった。本末転倒。反省である。


「でも、いい経験になったよ。これ、日本人初?」

「こっちの世界では地球人初かもな」

急いだ分、始業まで時間があるので応接室のソファーでくつろいでいると、カドマツとサントリナが入ってきた。二人ともちょっと嬉しそうな顔をしている。どゆこと?

「実験成功。まぁ、あとは企業秘密ってやつだ」

「無理言って早起きした甲斐がありましたわ」

顔を見合せニヤニヤしている。なんかムカつくなぁこういうの。企業秘密って言いますけど、同じ企業の仲間ですし~

「彼女は魔法だけでなく機械工学にも精通している。故に、だいたいの予想はつくな」

と嬉しそうに納得の勇者様。いや、知らんわ!

なんか、周りはどんどん進んで行って、自分だけが取り残されていく感じ。今から仕事だというのに、なんかもやもや。わかってはいるんだけどね。みんなにそんなつもりはないってことはさ。

まもなく始業時間。立ち上がってゆっくり歩き出すと、サフィニアとカドマツが背中をバシッと叩いてきた。びっくりして固まっていると、サントリナも二人に倣って一段強くバシンッと叩く。

「んダアッ!?」

と思わず変な声が出てしまった。まったく、みんないい顔しやがる。さあ、今日もお仕事頑張りますか!

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