勇者道
異召省の応接室に移動する。二人にお茶を出す大臣。ついでにと、まだ息が上がっている私にも出してくれる。ほんとは私の仕事なのだが、少し落ち着きなさいと座らされてしまった。
ガチャ
一息つくと扉が開き、カドマツが入ってくる。
「勇者の仲間の来訪、それに伴う会見の予定、各所へ通達完了しました」
「お疲れ様。君もお座り。はい、お茶」
今まで言われたことのない言葉、されたことのない行動にアワアワと挙動不審になる。その姿に皆が笑う。それにしても…
「勇者王…」
その肩書きに半信半疑。だって、そういうのって、魔王を退治したら貰えるんじゃないのか?
「前に少し言っただろう。勇者とは魔王を倒すだけの存在ではない、とな」
「魔王が生まれる原因は人々の負の感情。簡単に言いますれば、彼はその原因たる人々の負の感情を取り除いて回った勇者でありますの。魔王を誕生させない勇者。正に勇者王の称号に相応しいと、この妾も納得するばかりでありますわ」
サントリナがサフィニアの言葉を補正するように続けて話す。そう言われれば私も納得だ。彼のこちらに来てからの行動。たしかに人々を正しく、楽しい方向に導いていた… ように見えなくもない。
「うむ。人々を平和に導くのが勇者というもの。故に、これぞ勇者道であると心得る」
(いや、少なくとも私は負の感情が芽生えそうになりましたけどね! 私、魔王誕生させちゃいますかこれ!?)
この数ヶ月を思い出し少しイラつく。そして直ぐに、まだ触れられていない『あの事』に気付く。
「あの、サントリナさんはサフィニアを迎えに来た… んですよね? サフィニア、帰るのか?」
「国王様、突然の勇者王失踪に心を傷めておられますの。出来れば直ぐにでも帰還し、無事な姿を見せて差し上げて頂きたいのでありますわ」
どこから取り出したのか、サントリナが持参したオヤツを食べながら話す。
「とはいえ、帰還するにも世話になったまま事情も説明せずに消えるのは有り得んな。あと数日は準備が必要だろう。待てるかサントリナ?」
お茶を飲みながらコクりと頷く。急ぎたくはあるが、礼節は重んじる主義のようだ。さて、ならば私も働かなくては。
「大臣、彼女の宿泊先の手配なんですが…」
「うん、いつものとこなら今からでも大丈夫だね。サントリナさん、夕食は済ませて来たのかな?」
その質問に、二人が顔を見合わせる。
「妾はサフィニアと同室で構わないでありますわよ?」
「わざわざ宿泊先を別にすることもあるまい。警備の面でも面倒だろう」
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え?二人ってそういう関係?これ、いろいろ聞いても大丈夫?とテンション上げていると
「旅で寝食共にした仲だ。今さら気にすることでもない。もちろん他の仲間も一緒ではあったし、部屋が別に出来るなら別にするが、今回は二人ともサクラのとこにいた方がいいだろう」
ああ、そういうことかと納得。少し残念。てか、
ん? 二人とも私んち? マジ?