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なにをしても青春

「居場所がなくなったら俺のところへ来い。俺がお前に居場所を作ってやるから」


 公園を出て、住宅街から駅に向かって歩いていると聞き慣れた声が後ろから聞こえてきた。


「え?」


 振り返るとを帽子を被った女子生徒が立っており、その帽子を脱いでウィンクしてくる。


「かっこいいじゃん」

「ちょっ」


 カスミだ。


「おま……え?」

「一部始終は見させてもらったよ」

「追いついてないわ。え? どこから見てたの?」

「二人が公園に入ったところから」

「はあ!?」


 俺の声が住宅街に響く。


「いやいや! どこにいたの!? いなかったぞ?」

「いたよ」

「どんだけステルス性能高いんだよ!」

「情報収集はステルスからだよ」

「カスミのくせに」

「あー! 言っちゃいけないこと言った! レンレンが言っちゃいけないこと言った!」


 拗ねたような声を出し、若干怒っている様子のカスミにため息混じりで言う。


「まぁ連絡しようとしたから良いや。話しが早くてすむ」


 カスミが隣に立つので歩きながら話をする。


「ほんじゃ、南志見が小山内さんを避けている理由はわかったな?」

「うん。友達と好きな人が被ってどうしようって感じだったんだね」

「ようやくとラブコメ主人公みたいなヘタレ感を出してくれて、俺は安心した」

「あとは告白して付き合ってくれれば、私たちのミッションもコンプリートだけど……」

「ま、あのヘタレ感を出したままじゃ微妙だよな」

「だよねー。あんな気持ちのまま小山内さんに告白されても、OKだろうけどその先が心配だよね」

「俺らからすれば、ここまでやったんだしもう良いって思うけど」

「せっかく乗りかかった船だし、綺麗に終わらせたいよね」

「だな。だから、告白は小山内さんじゃなくて南志見がするべきなんだけど……」


 うーん、と苦笑いが出てしまう。


「南志見くんに告白させるようにしたから、あんなこと言ったんでしょ?」


 あんなことって言うのは、おそらく俺の恥ずかしいセリフのことだろう。


 俺は頭を、ガシガシとかいて答える。


「まぁな」


 でも、とため息混じりで言ってやる。


「ポッと出の初対面のセリフより、南志見はサッカー部の仲間を取るだろうな。だから、まだウジウジしてるはずだ」

「レンレンは今、どうやったら南志見くんが告白するか悩んでるってところ?」

「そうだな……」


 少し考えてカスミに言った。


「南志見の気持ちもわからなくはない。誰だって一人は嫌だからな。もし、南志見が告白して小山内さんと付き合ったら、島屋は容赦なく南志見を敵判定するだろうな」

「あの人はするだろうね」

「島屋はそうなることも予想して予防線を張ってある。仲間に自分の好きな人を教えるってな」

「そうすることで、南志見くんが島屋くんの好きな人を奪ったひどい奴認定させるってことだよね」

「ま、そうはならんとは思う。派閥ができるかもしれないが、孤立には多分ならないとは思うんだ。でも、南志見は最悪のことを妄想するだろうな。それも島屋の狙いなのかもな」

「島屋くんはなんでそんなこと……」

「さぁな。思春期の恋は盲目。それも青春ってやつさ」


 富田先生の言葉を借りて言うとカスミはどこか納得したような顔をする。


「結果のわかっている恋に遠回り。これも青春?」

「それを見守る俺たちも青春してるのさ。結局、俺たちはなにかをすれば青春になる。なにもしないよりはマシだろ」

「だねー」

「あとは見守るだけだ。俺たちにできるのはな」

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、どこまで行っても結局は小山内さんの気持ちだからねえ。勝負は決まっているのだけれど。 でも、確か眼鏡くんには捨て台詞があったから、もう一波乱来るのかな。
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