人生ハードモードすぎません?
「はぁ〜今日も眩しい太陽だこと」
こんなんじゃ、自慢の薄青の瞳が開かないじゃない。
そう言いかけた時、世界は廻った。
宙に浮く感覚。ふわりと舞い上がる髪とスカート。眼前に広がる眩しい青い空。頭から落ちていく感覚。
この風景、見たことある。
ドサッ という音とともに真っ白に濁っていく世界に私は意識を手放した。
深い闇の中、誰かの呼ぶ声が意識を無理矢理引っ張り起こそうとする。
ん〜待って、あと5分…。
「…さま!…リナ様!エリナ様!」
「ん〜待って、あと5分…」
「エリナ様!ご無事でいらっしゃいますか!?」
重たい体をゆっくりと起こす。
ふかふかのベッドの上のようだ。まだ鈍い意識にぼんやりとしながら目線を上に向ける。
と、そこにはメイド服を着た愛らしい女性が心配そうに私を見ていた。
…ん?メイド服?
いや、うん、別に不思議じゃない。彼女は私のメイドなのだから。
…え?私のメイド?私いつからそんな高貴な身分になったんだっけ?
……………
あれ????
「エリナ様!どこかまだ痛むところがあるのですか?すぐに手当を!」
「えっとー、マリー。マリーよね?」
「はい?えぇ、マリーでございますが。エリナ様もしかして頭をお打ちなられましたか?あぁ大変!エリナ様にこぶでもできたら私…」
青ざめるメイド、マリーをよそに私はベッドの上でふむ、と考え込んだ。
私はエリナ。あれ…私って宮原絵里じゃなかった?
ん?誰だそれ。私はしがない独身社畜で、たしか熱中症で階段から…
「私、階段から落ちたんだわ!!!!!」
思わず大きな声が出る。突然の大声に驚きみじろいだマリーは、不思議な生き物を見る目つきで私を見つめた。
「ええ、仰る通りでございます、エリナ様。つい1時間ほど前に階段を踏み外されまして、その…エリナ様どうかなさいましたか?なんというかその…いつもとご様子が違うと言うか」
階段。落ちる。エリナ。宮原絵里。独身社畜。
瞬間、私の脳内に膨大な量の情報が駆け巡った。
一つの可能性が脳内に浮かび上がる。
いや、そんな、まさかな…。
「マリー、鏡を持ってきてもらえるかしら?」
「エリナ様がお願いした!? えっ、あっ、はいこちらに」
何かに驚くマリーから手鏡を受け取り、中を覗き込んで、そして、確信する。
ー私、転生したんだ。