つめかえ
「つめかえてもいいなら…」と彼女は言った。
「どういうこと?」と聞くと彼女は、「つめかえてもいいなら、いいよ。」と、「いいよ。」に力を込めて答えた。
「いや、つめかえるっていうのは?」と聞き直すと彼女は、黙って部屋を出て、5分くらいで戻ってきた。マネキンを抱えて。
「これにつめかえるの、あなたを。」
意味がわからなかった。
でも彼女の顔は真剣だ。これ以上聞いても無駄なんだろうと悟った僕は、黙って、「つめかえられてもいいか」どうか検討することにした。
たしかに僕は、彼女の恋人になるには身体的欠損がある。それを妥協点として彼女が受け入れてくれるとは、全然期待してなかった。拒絶は覚悟の上だ。
でも「つめかえ」って、何?
中途半端な罰ゲームをさせられたような、物足りなさ。
もしかして、遠回しに断られたんだろうか。だとしたら、僕が「それでもいいよ」と言ったら、彼女はどんな顔をするだろう。
僕は実行した。
すると彼女は黙って、僕の襟首から手を突っ込んで、背骨を一気に引き抜いた。
顎から床までの距離が信じられないくらい近い。背骨を失った僕は、脱ぎ捨てられたズボンみたいなぺしゃんこ状態になった。自分では見えないけど、きっと今、頭の下に上半身がダブついて、鏡餅みたいな感じだ。
続いて彼女は、僕を足先から丸めはじめた。歯磨き粉のチューブを絞るみたいに。自分が冷静なのが不思議だった。でもたしかに、さっき感じた物足りなさよりは、今の方がマシなのだ。




