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お父さんドラゴン

作者: zako2

 ねぐらの前に捨てられていた人の子を拾った。

 今年は雨が少なかったから…よくある事だ。

 拾った理由は、自分でもよく分からない。全く、どうかしている。私はドラゴンなのに。


 しかたなく面倒を見た。赤子ではあんまりなのでシアと呼んだ。

 赤子は泣く、シアは特に泣いた。お腹が空いて泣き、おしめが濡れて泣いた。しばらくしてあまり泣かなくなった。

 人の成長は早い、私を見てパパと喋った。パパ…悪くないな。




 シアは外に憧れるようになった。私が記憶投影の魔法で外の世界を見せた事が原因だ。ある日シアが冒険者になりたいと言ってきた。精霊の話によると、とある男の子と冒険者になる約束をしたそうだ。人の子の成長は早すぎる……

 やはり(ドラゴン)が人を、育てるべきでは無かったのかも。


 A級冒険者のシアが竜に捕らわれたという噂はすぐに広まった。誰もが諦める中で一人の少年が立ち上がった。




「ぐっ!」

脆弱な種族の癖に時折こう言う奴が現れる。何より気に入らないのが、この小僧が「シアを返せ!」と言ってくる事だ。お前はシアの何だと言うのだ。

 お互い限界を感じ、最後の一撃を構える。

「やめんか!」

 瞬間、横から巨大な火球に吹き飛ばされた。


「シア!良かった、無事だった!」

「ちょっとパパ!どういうつもり!」

 勇ましかった少年が硬直する。


 私は答える事が出来なかった。だってシアが麓の町に行ってしまったら。


「別に良いわよ」とシアが私に魔法をかける。まずい!この魔法は記憶を投影する魔法だ。


『やはり(ドラゴン)が育てるべきではなかった。彼女の本当の親が麓の村にいるはずだ』

『それが、彼女の両親は10年前に…』


 ああ、知られてしまった。シアの本当の親は…


「なんだ、そんな事」

 シアはあっけらかんとして言った。

「えっ?」

「一言文句言ってやろうと思ってね。冒険者になった日に探したの。無駄足だったけどね」


 なんて事ないと彼女は言う

「たとえ血が繋がってなくても、たとえドラゴンでも、私のお父さんはパパだけだもの」




 なあ、本当に私が出ても良いのか?

「何よ?娘の結婚式に参加しない訳?」

 し、しかしだな、私が人の街に行くなんて。

「もう、領主様にも話しちゃってるんだから、いい加減に覚悟を決めてよね」


 この街には勇者が結婚式を挙げたという伝説がある。

 伝説では勇者の妻はドラゴンに育てられたと言われており、伝説を伝える壁画には必ず、窮屈そうに身を縮ませながら、でも誇らしそうな顔をしたドラゴンの姿が描かれていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴンと人、種族は違うけれど心を通わせることができる。そんなことを感じさせてくれるところが良かったです。また、メッセージ性がありながらも重苦しくなりすぎておらず読みやすく仕上がっていると…
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