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第3話 vs Mr.マッスル

 試合が始まった。

 相手の力量がわからない以上こちらから考え無しに攻めるのは危険だ。ひとまず相手の様子を見よう。



「うおおおぉぉぉ!!マッスルー!!お前の筋肉の力を見せてやれー!!!」


 観客がマッスルに声援を送る。



「ちっ、仕方ねぇなあ。全く困ったファン達だべ」


 マッスルはそう言うと、床に拳を叩きつけた。



 ドゴォッ!!!



 ⋯⋯⋯これは一発食らえばひとたまりもないな


 闘技場の舞台のレンガの床が粉々に砕ける。


 

「うおおおぉぉぉ!!! 流石はマッスル!!! その筋肉はやっぱり伊達じゃねえぜ!」


「試合相手は粉々にするなよマッスル!!!」


 観客はより一層湧き上がった。前大会準優勝だけあって人気も実力もかなりのもののようだ。



「ダッハッハ! 見たかオラのパワーを! お前もこの床みたいになりたく無ければさっさと降参するんだな!」


 筋肉を誇示するようなポーズを取り、マッスルは俺を挑発する。



「ご忠告ありがとう、ただ俺には優勝商品のあの石が必要なんだ。降参は出来ないな」


 木刀を構える。確かにあのパワーは強力だが、相手の間合いに入らないようにすれば何とかなるだろう。

 幸い相手は丸腰だ。木刀の分だけリーチはこちらに分があるはずだ。



「そんじゃ仕方ねぇなあ、今日は後3戦控えてるんだ。体力の温存のためにさっさと終わらせてやるべ。どおりゃああぁぁぁ!!!」


 マッスルは巨体に見合わないかなりの速さで突進してくる。


 だがこれぐらいの速度であれば見切れる。


 ギリギリの所で身をかわし、体制を崩した所に後ろから頭へ向けて木刀を振り下ろす。



「もらった!」



 ガンッ!!!!

 



 どうやらただの筋肉馬鹿では無いようだ。マッスルはとっさに頭の後ろに腕を差し込んで後頭部への攻撃を防いできた。


 一撃もらったらゲームオーバーの戦いで無理に追い討ちをするのは得策では無いだろう。

 一旦距離を取り、相手の間合いから離れる。



「ふぅ〜、あっぶねえなあ。お前見た目によらず中々やるでねえか。ちょっと油断してたべ」


「そいつはどうも。ガキの頃から爺さんに剣術を叩き込まれてきたんでね」



 再び木刀を構える。

 パワーだけの肉体派だと思っていたが、中々頭も切れ、スピードもかなりあるようだ。

 間合いの外から様子を見つつ、上手く致命傷を与える必要がある。

 相手の攻撃の隙を見つけて行こう。



 再びマッスルが突進してくる。

 今回もギリギリの所でかわし後ろに回るが、今回は体勢を崩してはくれない。こちらに向き直ると同時に裏拳を放ってくる。



「フンッ!!!」



 かなりの威力であったがしゃがんでかわし、下から顎に向かって木刀を突き上げる。



「ガハァッ!!!」



「おおっとー!! Mr.マッスルまさかのダウン!! カウントを始めます! 1! 2! 3!」



 上手くカウンターを決め、ダウンを奪う事が出来た。


 が、4秒も経たずにマッスルは立ち上がる。



「ハァ⋯⋯⋯ハァ⋯⋯⋯まさかオラがダウンを取られるとは⋯⋯⋯もう容赦しねえぞ!!」


 息は少し乱れているがまだ大分余裕があるようだ。


 かなり良い角度で木刀が入ったはずなのだが、かなりタフらしい。



 木刀を構え相手の攻撃に備える⋯⋯⋯が、今度はマッスルが距離を取り、試合開始直後に砕いたレンガを拾い上げる。


 ⋯⋯⋯まずい!!!



「どおおおりゃああぁぁぁ!!!!」



 砕けたレンガが弾丸のように襲いかかる。


 なんとか避けることが出来たが、その時に乱れた俺の体勢をマッスルは見逃さない。

 猛スピードでタックルを仕掛けてくる。



「しまった!!」



「うおおぉぉぉぉ!!!!」



 ドォォン!!!



 ギリギリ木刀で防御することができ、直撃は避けたがマッスルの圧倒的なパワーによって俺の体は吹っ飛ばされてしまう。



「ぐはっっ!!!」



「おおっとお! ここで次はアレフ選手がダウン! カウントを取ります! 1! 2! 3! 4! 5! 6!」



「ぐっ、ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯」


 なんとか6カウント目で立ち上がる。



「ダッハッハ! どうした、息が上がっているべ? そんな状態でオラのタックルを後何回躱せるかな? 行くべ!」



 マッスルがこちらに向かって突っ込んで来る。



 ⋯⋯⋯やはりこの体格差で体術で争うのは無理があるか。大勢の観客の前では使いたく無かったが、背に腹は変えられない。


 手に持っている木刀を腰に収める。




「ダッハッハ!諦めたか!食らえ!!」




電撃魔法(サンダー)!!」




 俺の両手から稲妻が発生し、突進してくるマッスルの足に向けて放たれる。



「どわあぁぁぁ!! な、何だべこれは?! オラの足が痺れて動かねえ!!」


 突進している最中に足が止まったことにより、マッスルは勢い余って地面に転倒する。



「これで終わりだ!!」


 木刀を抜き、なんとか立ち上がろうとするマッスルの首筋に向けて木刀を振り下ろす。



 ドガッ!!!



「ガハァッ!!」



 マッスルの身体は伸びきり痙攣している。

 おそらく気絶しているだろう。



「き、気絶!! Mr.マッスル戦闘不能により!! 勝者は! アレフ選手だあぁぁぁ!!!!」




「な、何だ今のもの凄い魔法は?! まさかあいつ皇族なのか?!」


「いやいや、あの黒髪は間違いなく一般階級だろ。皇族様はもっと神々しい金髪をしてるだろ。でもそれなら何故あんな威力の魔法が打てるんだ⋯⋯⋯?」


 観客がどよめく。

 

 

 人間で魔法が使える人は決して少なくは無い。大体30人に1人ぐらいは魔法の素質を持っている。


 しかし、それを戦闘で使えるレベルの威力で使用できるのは皇族やその血筋、もしくは極一部の天才児ぐらいだ。


 殆どの人間は魔法の素質を持っていてもせいぜい部屋を明るくしたり、タバコに火を付けるぐらいの威力しか出せないので、一般階級の人々とって魔法は一発芸ぐらいの認識でしか無い。


 それをこんな大勢の人が集まる場でこんな風に使用したら注目を浴び、目を付けられるのは明らかだった。もしかしたら誰かに狙われるかもしれない。


 だから出来ればこの大会では魔法は使わず木刀だけで挑みたかったのだが、予想以上に手強い相手と当たってしまったせいで魔法を使用せざるを得なくなってしまったというわけだ。



 そそくさと逃げるようにして舞台から降り、選手控え室に戻ろうとすると、近くに立っている選手の男が叫んだ。


「お、おい! BコートだけじゃなくAコートにもやばい奴がいるぞ!」



 Aコートを見てみると、俺の試合と並行して行われていた試合が続いている。

 


「ウヒョーー!! 食らえっ! ジャンピングアタック!!」


 個性的な掛け声の男がかなりの高さまで跳び上がって相手の女に向かって飛びかかる。


 なるほど、確かに凄い跳躍力だ。

 ただそんなに声を上げて驚くほどのことでは無い気もするが?



 すると女が上から飛びかかって来た男の脚を掴み、ハンマー投げの要領で回転しながら男を振り回す。


 ⋯⋯⋯なんつー馬鹿力だよ

 さっきの選手の言っていたやばい奴ってのはこの女の方だったのか。

 それにしてもあの華奢な身体のどこにあんな力が宿っているのだろうか。



「ギョエ〜!! 何をする! 離せ〜!!!」




「飛んでけえっ!!!」




「ギョエ〜!!」  ドガーン!!!



 女が手を離すと同時に男はもの凄い速さで飛んで行き、会場の壁に思いっきりぶつかり壁は粉々に砕け散った。


 ⋯⋯⋯死んでないだろうな?



「ま、参りました⋯⋯⋯」


 生きてて良かった。真面目に心配した。



「こ、降参!! ポール選手降参により! 勝者、カンナ選手!!」



「やった!! ありがとうございました!!」


 カンナと呼ばれた女は大喜びで相手に挨拶し、選手控え室へと戻って行った。




 ⋯⋯⋯勝てる気がしない。


 トーナメントの山が違ってて本当に良かった。

 しかし、優勝を目指すのならほぼ確実にあの女と試合することになるだろう。

 今の内に何かしらの対策を考えておくか⋯⋯⋯













次回 怪力少女カンナとの出会い


カンナの超人的身体能力の秘密が明らかに!

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