プロローグ
その少女は夜の海岸を歩いていた。大人たちにいけないと、絶対に夜の海には近づかないよう言われていたのに。
少女は浜に座り海を眺めている男と出会った。
その男は月の光に溶けて消えそうなくらい美しかった。
少女は男の隣に座った。男は驚いたように少女を見た。少女は男に話しかけた。男は少し照れながら答えた。
2人はすっかり仲良くなり、毎晩同じ場所で会った。そして、いつしか互いに恋心を抱くようになった。
しかし、少女と男の密会が大人たちにバレてしまった。大人たちは男を殺そうとした。少女は大人たちの目を盗み、男にその事を伝え、逃げるように言った。
男は静かに微笑み少女の頭を撫でながら自分が逃げられないのだといった。少女は不思議そうに男を見た。
大人たちが2人を取り囲んだ。男は少女に大人たちのもとへ帰るよう告げた。少女は首を縦に振らなかった。このまま帰って忘れるくらいならこの場で海に身を返した方がいいと。
男はそれを聞いて覚悟を決めたように自分の正体を明かした。それでも一緒にいたいと言うなら共に海へ身を返そうといった。少女は首を縦に振った。
男は毛並みが美しい馬へと変わり少女はその背に乗った。
そのまま2人は海へと消えていった。