36 解決部とポスター
今日も依頼人が来ない解決部だったが、部長である成瀬はこの状況に不満を持っていた。
(依頼人がいないのは誰も悩んでないってことだから良いこと、でももしかしたらこの部の存在を知らないから来れないなんて場合も……これは早急になんとかしないといけないわ)
「というわけで解決部のポスターを作りましょう!」
「いやどういうわけだよ」
「おお、いいね!」
「アタシの画力を見て吠え面かかせてあげるわ!」
「へっ、俺は小学生の頃漫画家になるって言ってたんだぜ?」
「あれ意外と乗り気!?」
え、何? お前らあれだろ? 特にやることないからやるんだろ? あと雷牙は上手いとは一言も言ってないな。
「というわけで一人一人この場で描いてね」
「こういうのって明日までにとかじゃないのか!?」
「決めるのは出来るだけ早くがいいからね」
そして全員で配られた紙に絵を描くこと一時間、どうやら全員が書き終わったようで見せ合う時間が来た。
「さてじゃあまず部長である私から」
「ま、妥当だな」
「部長の楽しみー」
「はっ、まあ見させてもらおうかな漫画家志望だった俺からすればこの中の全員が俺より遥かに――」
「私のはこれよ」
そう言って見せられた絵はなんというかコメントに困るものだった。真ん中に解決部という文字、これはいい。だがその周りには恐らく人の笑顔を三日月のように描いたものが大量にあった、これが少量なら大丈夫だが紙いっぱいに描かれているとなると。
「魚の鱗?」
「おいおいこれじゃ俺達海中探検部だぜ」
「いや何よその海中探検部って」
「え? あるだろうちの学校に」
「いや人の笑顔よ!」
「「「え?」」」
まあこうなる。いや本当に魚の鱗に見えてるので俺が分かっただけでも奇跡的なんだがな。
「次はアタシね」
「まともだろうな?」
「どういう意味かしら?」
そして見せられた紙には日本刀の絵と剣道部の文字。
「この部活のじゃねえのかよ!」
「しょうがないでしょ! そんなすぐに思い浮かぶわけないんだから!」
「一時間何してた!?」
「ふ、ようやく俺の出番が来たみたいだな」
「おう早く見せろ、もうオチは分かるから」
雷牙が手に持つ絵には文章では伝えづらい形容しがたい何かだった。
「ねえ、このゴミ箱みたいなのは?」
「ゴミ箱? ああそれは進藤の顔だ」
「ゴミ箱と間違えられたの俺!?」
「じゃあこっちの爪楊枝みたいなの持ってるのってもしかして」
「ああ、藤林だ」
「ちょっと待って! アタシの顔コレ!? これってアフロのオッサンじゃないの!?」
下手すぎる。いやもうオチは分かってたからそんな驚かなかったけど……というか何だアフロのオッサンって、この部に関係してないよな? まあ確かに何故か藤林の髪がボンバーしてるような感じになってるが。
「私かあ、私はこれかなあ」
胡桃の紙には勇者っぽい男と魔王のような男、仲間の僧侶、魔法使いも加え旅に出て――はいおかしいの来たあああ! もう何なんだよお前ら! 解決部要素ゼロだよ! あと魔法使いジルマじゃん! 関係ないじゃん!
「なんか不満そうだね歩は」
「そうよそうよ文句ばっかり言って」
「お前の絵は文句言うの当たり前だぞ」
「まあまあ皆、次で最後ね。じゃあ進藤君お願いね」
「ああ、俺のはこれだよ」
俺は絵は得意じゃないと雷牙と違って自覚してる、だから文字だけだ。俺が広げた紙には「解決部 あなたのお悩み解決します」とシンプルに書いた。
「絵は!」
「そうだそうだ散々人の絵乏しといてお前は描かねえのか!?」
「別に絵を描かなきゃいけないなんてルールじゃなかったよな!」
「そうよ、私はこれでもいいと思うわ」
「私もね」
反対賛成ともに二票、シンプルな方が見やすいし良いと思うんだけどなあ。
「じゃあさっそく皆のを会長に見せて許可取ってくるわ!」
そう言って成瀬は出て行ってしまった。あれ? 剣道部ポスターも持ってくのかよ!?
* * * * * * * * *
「というわけでこのポスターを貼る許可を!」
「いや……どういうわけだ?」
生徒会室にて竜牙と成瀬はポスターの件で話をしていた。
「別にそんなもん許可取らなくたって好きなだけ貼っていいぞ」
「え? そうなんですか!? じゃあこれを百枚コピーして貼ろうかな――」
「それは貼りすぎだが! 数枚だ、それ以上は止めてくれ」
生徒会に許可を貰ったことにより成瀬はポスターを提示版に貼り、部室に戻ってきていた。
「それで許可取れたんですね」
「ええ、全員分貼って来たわ」
「剣道部のも?」
「ええ、貼って来たわ!」
「意味ないだろ!」
「ところでその手に持ってるのは?」
「進藤君のポスター、結構いい感じだから部室に貼っておこうと思ってね」
「それ本人恥ずかしいから止めてくれよ!」
進藤の抵抗も意味なく部室の窓の上に「解決部 あなたのお悩み解決します」という文字が書かれた紙が堂々と貼りつけられた。




