33 犯罪行為と燃える執念1
今回の話は海北学園(根野が通っている学校)での話です。
進藤がインターホンの映像を見るとそこに映っていたのは以前ボランティア活動をした時に会った法堂守里だった。彼女は海北学園の生徒会長であり正義感が強い女性である。何か用があるのかと思い進藤は家に上げリビングで話を聞くことにした。
「突然の訪問、夜分遅くに申し訳ない」
「いや別にいいけど、どうしたんです? 俺に用事でも? あれ? 何で俺の家知ってる!?」
「ああ、根野に聞いたんだ。それで用件なんだが――」
法堂は少し間を空けてから口を開いた。
「我が校のことを貴殿に頼むのも申し訳ないのだがどうか犯罪者を捕まえる手助けをしてくれないだろうか」
「は、犯罪者?」
法堂からの話は進み、最近海北学園で下着が盗まれるという被害が頻繁に起きていること、生徒会で捕まえようという判断になったが自分と根野以外相手にやられてしまい病院送りにされてしまったこと、制裁を加える為にも人手がいるということ、進藤が聞いたところかなり事態は大事になりつつあるようだった。
「しかし何で俺なんです? こんなこと言いたかないけど根野一人いれば戦力充分でしょ、それに他校生だし」
「……いや、相手の実力は未知数。根野から君の事は聞いていたので戦力として申し分ないと判断したので救援を要請をしているのだがやはり駄目だろうか」
「……まあほっとけないし手伝いますよ、そんな奴とっとと捕まえたいし」
「そうか、すまないな。それでは放課後でいい、我が校に来てくれ」
進藤は後日解決部には休むと連絡をして海北学園を訪ねていた。校門では生徒会長である法堂と生徒会に入ったらしい(強制)根野の姿があった。
「来たか、そんじゃ勝負といくか」
「お前達にどんな因縁があるかは知らんが目的を見失うな。とりあえず我々が得ている情報を伝えよう」
進藤が聞いた話を整理すると犯人は放課後に運動部の更衣室にて犯行に及び下着を盗んだ、そして姿をくらまし今も手がかりすら掴めていない。犯人は男だったと病院の生徒会メンバーは証言していた。現在分かっていることはこれだけだった。
「そして今日我々は囮作戦で犯人を釣ることにした」
「んで現れたらすぐ捕獲だ、分かったな?」
「まあ効果的だろうな」
進藤達はグラウンドにある野球部の更衣室の目の前に来た、ここまで来て何か変に感じたが気のせいだと進藤は思い込んだ。
「さて、ではすまないが……囮を頼んだぞ」
「はい?」
しかしすぐに気のせいじゃないと進藤は悟った、何かがおかしいと思うしかない言葉だった。
「いや囮なら女の法堂さんだろ?」
「私の下着など魅力はないだろう、故に貴殿と根野に囮をしてもらう」
「おかしくない!? 男の下着なんてもっと興味ないだろ!?」
「……会長よお、もしかして話してないのか」
「そういえば重要なことを話していなかったな」
「重要な、こと?」
「犯人は男だ、そして盗まれているのは男子生徒の下着なんだ」
「盗まれてるのそっちかよ!? てか犯人ソッチかよ!?」
「まあ俺も初めて聞いた時は耳を疑ったぜ……」
「そりゃそうだろ!」
驚愕の事実を知った進藤は根野と一緒に更衣室に入り支給された野球のユニフォームに着替えて外に出た。
「これで犯人が来ればいいんだがなあ」
「個人的には来てほしくないけどな……そういえば法堂さんは?」
「別の場所で見張るってよ、被害が出るのは運動部の更衣室でランダム。どこが標的にされるか分からないからな」
十分経過
「来ないな」
「ああ」
三十分経過
「……来ないな」
「ああ」
一時間経過
「来ねえ! これもう別の場所に行っちまったんじゃ」
「その可能性もあるか、チッ! せっかく着替えたのに無駄骨かよ」
進藤達は犯人はもう来ないと判断し更衣室に戻りドアを開けて硬直する。
「あ?」
「は?」
「だ、誰だお前ら?」
そこには自分達が先程まで履いていた下着をまるで犬のような姿勢で匂いを嗅いでいる変態男の姿があった――こんな光景を見てしまえば固まって行動が咄嗟には起こせないものである。
「まさかお前達もこの下着を狙ってるのか!? ダメだ! これはもう僕のだからな!」
「「いや俺達のだよ!」」
「あ、お前生徒会に最近入ったっていう…………まさか生徒会も下着を狙って?」
「いや狙ってんのはテメエだクソ犯罪者がアアアアア!」
「こわっ!?」
自分の下着で変態行為をされているという屈辱、怒り、その感情は根野の顔を歪ませまるで般若のようになっていた。そして根野は変態を罰するべく突進していく。
「な、何!?」
「消えた?」
消失。変態は二人の下着と共に突然姿を消したのだ、少なくとも二人の目にはそう映った。
「チッ、転移能力か! 厄介だな!」
(転移能力? でもそれ特有の空間のブレがなかった、俺はジルマのテレポートを経験してるから分かるが転移は空間に干渉するから必ず何処かがブレる筈なんだがそれがない。これはもしかして転移じゃない……?)
「クソッ! 外か!?」
「待て根野! 扉を開けるな、奴は――」
その進藤の忠告は少し遅く、根野は既に扉を開けてしまっていた。
「アァ!? もう開けちまったぞ!」
「消えたからといって転移とは限らない、もしも透明化だったりすれば迂闊に開けるのは――」
「うるせえ! とにかく外に出て待ち伏せんだよ! もし透明化とかなら絶対に扉を開けなきゃならねえからなあ!」
(コイツ……少しは考えてやがる)
進藤達は一旦外に出て扉を開けるのを待っていた、しかしそこで思わぬ事態が発生する。
出現。さっきの変態はそこから五十メートルは離れた場所にいきなり現れたのだ。
「何!?」
「へっ、みいぃつけたあぁ!」
「おい一応慎重に――」
進藤の忠告が届く前に根野は下着を持ったままの変態男と距離を詰めるべく走り出す。その距離はグングンと縮まっていきついにあと数メートルというところで――また消えた。
「何だと!? クソッ、何処だ――うっ!?」
根野は消えた相手を探すため辺りを見渡すがどこにもいないことに腹を立てていた、そして予想外なことが起きる。根野がいきなり誰かに殴られたように仰け反ったのだ。根野はその直後攻撃された方向に蹴りを放つが手応えはなかった。
(何? 転移だとしたら姿が消えたまま攻撃は出来ない。透明化だとしてもあの反応での蹴りを躱せるとは思えない。転移でも透明化でもなく姿を消せるものといったら何だ?)
「何処だああ! 出てこいやああ! テメエ出てきた瞬間ぶっ殺すぞゴラァ!」
「これどっちが悪人だったっけ!?」
「ブッ!? コソコソ攻撃してきやがって!」
そしてまた根野が攻撃を喰らった。だが進藤はそれを見て何かが分かったような気がした。
(今、地面の砂が空中に舞ったか? すごい少量だったから確信が持てないがまさか……そこにいるのか?)
「根野! そいつの能力は恐らく縮小化だ!」
ここから反撃が始まろうとしていた。




