31 並行世界人と異能力者
今回短め、内容薄めです。
味噌汁、卵焼き、白米、焼き魚。平凡な和食が食卓に並ぶ中、その食卓を囲み食べる面子は平凡とは言いづらい。
「今日も美味しいわねこの卵焼き、フワッとして柔らかいし」
魔界の魔法使いであるジルマ。
「そう? まあ私家事しか出来ないしね」
運動以外はほぼ出来る家事の天才である水瀬胡桃。
「家事が出来るってのが貴重なんだけどな」
戦闘力では右に出る者はほぼいない、自分の正体に悩む青年の進藤歩。
「あは、美味しそうだね。僕にもくれよその味噌汁」
そして――。
「誰だよ!?」
「僕だよ」
「え、知り合い……じゃないな! 誰だ!」
「あはは、僕の名は斉江学。並行世界からやって来ました」
そして今日、新たに普通ではない者が食卓を囲んだ。
朝食も食べ終わり自己紹介も済ませ、進藤達は突然現れた眼鏡、マッシュルームヘアーという何だか暗そうな真面目そうな若い男、学に事情を問いただしていた。
「で? 旨い卵焼き食ったんだ、当然話してくれるよな? てか話せ、さっさとな」
「では話しましょう、僕は斉江学。並行世界からやって来ました」
「…………あ、え? 終わり?」
「あはは、終わりですが何か」
「いやもっとあるでしょ、何かこう、ね?」
「あはは、まあ目的としてはこの世界の観察でしょうか」
「世界の観察? っていうかそれよりもどうやってこっちの世界に来たんだよ」
「僕の世界は科学の発展が並ではなく、既に星の移住も出来るし、なんなら惑星旅行だって行ける、飛行機なんて乗らなくても空を一人で飛べる。更にお金を使うというルールと存在はなくなり、仕事は全て機械が行い、欲しいものがあれば自分で作るか貰うかする。そんな発展を遂げた世界に生まれた僕は別の世界というのに興味を持ったんです、だから造ったんです。並行世界に行ける装置を」
学の口から出た話はスケールが違った、その信じられないような話に一同は茫然とする。
「そうか、それでその装置は?」
「あはは……それが実際に稼働したのは今回が初めてなので想定外だったんですが、装置は元の世界に置き去りになってしまったようです」
「「「…………」」」
そのあまりの天才なのかバカなのか分からない行為に一同は茫然とする。
「つまり帰れないの?」
「あはは、まあこっちで元の装置と同じものを作れば帰れます」
「へえ、良かったじゃない」
「まあこの世界の科学力だと完成には予想だと五十年以上かかりますけどね」
「ダメじゃん!? 完成した時にはもうジジイだぞ!?」
「質問変えるんだけど何で俺の家に転移してきたんだ? 偶然にしては酷くないか?」
「あはは、それなら予想は出来ます。恐らく転移を開始した場所とこの場所が世界同士を照らし合わせた時に全く同じ場所だったのではないかと」
「……ああ、じゃあもし転移先が崖とかだったら」
「あはは、死んでますね」
「笑い事じゃねえだろそれ」
それから学はこの世界のことを聞いて信じられないという風に驚愕した。
「異能……空気中に散らばる未知の粒子がそれを可能とするのか、確かに食事中テレビでマジックのようなことを平然とするし誰もツッコまないと思っていたけどまさか異能とは……いったい何故世界はこうも違ってしまうんだ? 何か原因が――」
「なんかブツブツ言ってて怖いね」
「凄い勢いで喋ってるけど疲れないのかしら」
「おい、おい! ……聞こえてねえのか?」
学は何かを小声でブツブツと呟き続けること数分、ようやく我に返った学は三人に謝罪する。
「いや申し訳ない、昔から気になることがあったら口に出して考える癖があってね。しかもその間どんなことをされても周りの音が聞こえないものだから」
「凄い迷惑な性格だなおい」
「あはは」
「そういえばこの世界に来たってことはどこかに住まなきゃダメだよね? 当てはあるの?」
「いやない、そもそもお金がないからな」
「だよなあ? じゃあどうすんだ」
「あはは、どうすんだって言われても選択肢は一つだろう?」
「泊めてくれ」
「やっぱそうなるよなあ!?」
* * * * * * * * *
「それでその後どうかな? 並行世界からの客人は」
「教えてないのにもう当たり前みたいに知ってるよなお前」
「情報収集だけは誰にも負けない自信があるからね、で?」
「別に何もねえよ、ニートが一人増えて消費が増えたくらいだ」
「……それはご愁傷様」
「……ああ、本当にな」
平日、学校にて凪と進藤は他愛ない話で時間を潰していた。
「そういえばそろそろ解決部に依頼が来るかもね」
「何で分かる」
「生徒達も例の事件からいつもの日常に戻りつつあるんだ、つまりまた前みたいに依頼が来るかもって話。今は解決部の評判も悪くはないしね」
「なるほど、な」
* * * * * * * * *
夕食の時間。新たに学も加えた四人の食卓は慣れつつあった。
「しかし美味しいな水瀬の料理は」
「えへへ、そう?」
「あはは、まるで万能旨味増大調味料をふんだんにかけたくらいの味だ」
「なんかまた知らない道具出てきたよ」
「万能旨味増大調味料とは――」
「ああいいから、大体どんなのか分かるし」
「酷いな!」
「とにかく使わないに越したことはないからな、助かる」
「その言い方だとまだ持ってるみたいなんだけど」
「ああ、持っている」
そう言うと学が手を伸ばすといきなり真っ黒な空間が現れそこに手を突っ込む。それを見て驚く進藤達だが驚いている内に学は何か小瓶を取り出して空間は閉じた。
「これが万能う――」
「いやそんなことより! 今の……何?」
「何って……収納空間発生装置だが?」
「そんな当たり前だろ? みたいな反応されても!?」
「凄いね、他に何があるの?」
「あはは、秘密だ」
笑う学を見て進藤はそこに得体の知れない不気味さを感じ、不審に思いつつも日常を過ごしていった。




