12 演劇部と子供達1
演劇部、それは物語の役を演じて劇を繰り広げる部活だ。披露するのは大抵文化祭、しかし今年は気合を入れまくり片っ端から近くの施設で演劇させてくれないかと頼み込んでいるらしいことを目の前の依頼人、熱海綺羅々から聞かされた。
「それで依頼の内容は何ですか?」
「今言った通り今年は期待の新人である横にいる綺羅星君が入ってくれて気合を入れまくってるの」
「新人の下りは全く触れてなかったろ!」
「あ、どうも! 自分は綺羅星政宗って言います!」
「遅いんだよ自己紹介! 最初にしてくれねえ!?」
しかし期待の新人ねえ……そんな凄い奴には見えないけど。敢えて言うなら何故か周りに星みたいなのが出ててアニメなんかで見るイケメンみたいだってことぐらいだ。
「気合を入れた私達は遂に演劇をしていいと言われた場所に出会ったの」
「へえ、そこはどこなの?」
「幼稚園よ、子供達に娯楽を与えたいそうで許可してもらえたわ」
「幼稚園? ここらじゃ一つしかないよね」
「ええそこよ、でも困ったことが起きたわ」
「何ですか?」
熱海は俯いて顔をゆっくり上げて……上げて……長い長い! タメ作りすぎだ! 十秒は経ったぞ!?
「劇の日程は二週間後、でもまだ演目が決まってないの!」
「結構大事だよなそれ!?」
「部長は劇が出来るってことを喜んで肝心の劇の内容を考えていないことに最近気付いたんです」
「あらかじめ考えとけよ」
「つまり私達からの依頼は子供に向けての演劇内容を今日中に決めてほしいということよ!」
やっぱりそういうことかよ! 演劇部しっかりしろ! 何で部外者の俺達に決めさせるんだよ! 熱海は制服のポケットから紙を出して見せてきた、そこには桃太郎、浦島太郎、シンデレラの三つの項目の名前が書かれていた。何だちゃんと考えていたんじゃないか、この中から決めればいいのか。
「問題は私と綺羅星君がその三つの話をほぼ覚えていないということね」
「じゃあダメじゃん! 考え直しなさいよ!」
「子供向けとなるとこんなのしかないのよ」
こんなのって言うなよ。確かに今じゃ昔話の類もあまりされないな、能力を持っていない物語の主人公達は嫌いって馬鹿げたことを言えるような時代だからな。
「それでどんな話だったかを聞きたいのだけど」
「成程、分かりました。じゃあまず桃太郎から考えましょう!」
考えるって何だ。まさか知らない? 俺以外もしかして知らない?
「なあ俺知ってるから話そうか?」
「自分で考えてこそ意味があるのよ、最初から答えを求めるなんて向上心がない愚か者よ!」
「ならここに依頼に来ないで自分で考えとけよ!」
「それとこれとじゃ話が違うわ」
コイツ! まあいい、そんなに言うなら自分達で考えさせるか。最初に話始めたのは成瀬だった。
「昔々お爺さんとお婆さんがいました、お爺さんは山へ芝刈りにお婆さんは川へ洗濯に行きました」
ここまでは正解だ、何だかんだ言ってもやっぱり覚えてるのか。
「その後も平和に暮らしました。こんなところかしら」
「内容薄すぎだし何も起きてないし! ただの老夫婦の日常じゃねえか!?」
「確か桃太郎って人の名前ですよ? あと鬼退治するってストーリーだったような気がするんですけど」
「あ! じゃあこうね! 桃太郎の大好物は桃、しかし鬼が桃を独り占めしたので世界から桃が無くなってしまいました。そこから桃太郎は桃を取り返す為に鬼退治に出かけました」
「桃を軸に無駄に壮大な話にするな! 違うから! 全く違うから!」
覚えてねえよコイツ! でも胡桃は内容少し覚えてるみたいだな。次は胡桃なので少し期待しておくか。
「そもそもお婆さんは川に行きませんよ、だって洗濯機が家にあるじゃないですか」
ねえよ! 昔々に洗濯機なんてあるわけないだろ!
「あのな! 出だしはこうだから! 昔々お爺さんとお婆さんがいました、お爺さんは山へ芝刈りにお婆さんは川に洗濯に行きました。川で洗濯をしているとドンブラコドンブラコと大きな桃が流れてきました、それを持ち帰ってお爺さんが斧で割ると中から赤ん坊が出てきました! こうだよ!」
「え? 川から桃が流れてくるの?」
「あのさアンタバカ? 桃から赤ん坊が出てくるわけないじゃん」
「そもそも桃をどう切っても赤ん坊が真っ二つになるんじゃ……」
「演劇部としては面白い内容ではあるんだけど真剣に考えてくれてるのかな?」
「これ俺が悪いの!?」
「とりあえずそれが正しいとして次に進みましょう」
「桃から生まれたから桃太郎ってことにするのね」
ことにするっていうかそれが本当なんだよ!
「確かキビ団子っていうものを持って仲間を増やしつつ鬼退治に向かうのよね」
「ああ! そうでした! でも仲間は誰でしたっけ?」
「鬼ってようは魔王みたいなやつでしょ? ならきっと仲間は戦士と僧侶と魔法使いね」
「ドラ◯エのパーティーか!」
「あ、あれじゃない? 浦島太郎、金太郎、そして花咲かせるお爺さん!」
「全部別の物語の主人公!」
「何を言ってるんですか? お爺さんとお婆さんという仲間が既にいるじゃないですか」
「年寄りに無理をさせるんじゃない!」
「あの確か動物だったような気がしたんですけど」
そうなんだよ! ナイス! 綺羅星ナイス! 猿雉犬ってわりと有名な方だぞ!
「鬼を倒す程なんだから強力な動物なんでしょうね」
「伝説級の生物なんじゃない?」
「じゃああれね、グリフォン、ペガサスそれにドラゴンね」
「それ鬼が可哀そうになるから! あと一体も合ってないから! 答えは猿雉犬だから!」
「え?」
「はぁ、そんな動物で鬼を倒せるわけないじゃない。少しは考えて物を言いなさいよ」
「そういう設定もありかもしれないわね」
「ねえこれだから俺が悪いの!?」
本当なんだよ! 確かに倒せなさそうだけど本当の話だから! どう倒したのか知らないけど本当にそうなんだよ!
「村のお金を奪った鬼を退治して取り返してその後も平和に暮らしましたっていう話でしたよね」
「それだよ! 何で最後は覚えてるんだよ!」
「あ、あー確かにそうだったわよね」
「あーそうそう」
「うん、私覚えてるわ」
「お前らは覚えてなかったろ」
「じゃあ次は浦島太郎を――」
「もういいだろ桃太郎で! もうめっちゃ時間経ったから! もう終わりそうなんだよ!」
「ええ? まあいいわ、じゃあ次の問題に突入しましょう」
「まだ何かあるの!?」
こいつら問題ありすぎだろ! 気合入れてたわりに色々抜けすぎじゃねえ!?
「実はね――」
そして長い! いい加減にしろ! 時間ないんだよ!
「――――部員が二人だけなの」
「お前ら気合入れる前の問題多すぎだよ!」
こうして衝撃的なカミングアウトを聞かされて、俺達の部活時間は終わった。
一話完結で依頼を解決していく見やすいものにしたかったのに個人的な文字数の目安のせいで一話で終われません。




