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解決部 ~あなたのお悩み解決します~  作者: 彼方
一章 解決部と悪魔
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0 進藤と解決部

12月8日。主人公の名前が一か所間違っていたので修正しました。


 783年。突然、現代では異能と呼ばれる力を持つ者が出現した。風を操ったり、口から火を吹いたり色々な力を持つ者が現れた。当時はその異能力者を妖術使い、魔法使いなどと呼んでいたが今では異能力者として統一されている。それから永い時が経ち、2020年の現代では世界中の約8割が異能と呼ばれる力を持つ異能力者となっていた。


 とある県、伊能町。もう日が暮れるという時に、二人の高校生が喧嘩していた。だが勝負は一方的で、勝者は無傷なのに対し、敗者は顔が大きく腫れ、痣もところどころに出来ている。そんな敗者を見て勝者は肩をすくめて口を開く。


「なあお前これでいったい何度目だったかなあ? 喧嘩吹っ掛けてきてはボコボコにされて帰っていくのは」

「きょ、今日で1349回目だ! 悪いか!」

「悪いわ! 毎日毎日ボコスカボコスカ殴られやがって! 殴る奴の気持ち考えたことあるのか!? お前のせいでスーパーのタイムセール逃すし散々だってのに……明日は鶏肉が安いんだ、邪魔するつもりなら容赦しないぞ」

「それを聞いて、何が何でも、邪魔したくなった、ぜ」

「お前は今日からしばらく病院でゆっくり休むんだな」

「グホアッ!?」


 傷だらけの男は百メートル程吹っ飛び動かなくなった。


「もしもし救急です、知り合いが大怪我しちゃって……ああ場所は――――はい、じゃあよろしくお願いします――――ったく、これで何回目だったかなアイツのせいで救急車呼ぶのは……帰ろう」



* * * * * * * * *



 カーテンの隙間からの日差しが俺を眠りから覚まそうとしてくる、あともう少し……だけ。


「……もう、何回も呼んだのにいつも降りてこないぃー。ほらほら起きないとこのフライパンで耳を叩いちゃうぞおぉ」

「止めろ」

「あー起きた、ご飯出来てるから早くしてよ?」

「ああ、すぐ行くから」


 眠気もバッチリ覚めるな、おそらく危機を感じて強制的に目が覚めるんだな。さて学校の制服に着替えてから一階の食卓に降りるとベーコンエッグともやし、白米が並んでいた。家は生活費ギリギリだからもやしは必需品、それとタイムセールもな。昨日も一昨日も根野(こんの)のせいで逃しちゃったからつい病院送りにしたけどいつものことだし気にしない気にしない。


「そうだ、また根野君と喧嘩したんだって? 仲いいね」

「どこがだよ、喧嘩してるんだから良くないだろ」

「喧嘩するほど仲が良い!」

「だいたいの場合は仲が悪いと思うけどな」


 目の前にいるこの同じ制服を着た少女、ひょんなことからこの家で居候している水瀬(みなせ)胡桃(くるみ)。成績優秀で頭は良い、運動神経壊滅的で容姿は16歳だというのに小学生と間違われるレベル。ただし料理の腕は三ツ星レストランのシェフ並みに高い。今食べてるベーコンエッグだって俺が作るのより数倍は美味しいし、ただしもやしはそのままなので素材本来の味である。

 学校には一緒に行って、昇降口で分かれる。俺は二年で先輩だからな。クラスに着いて席に着くと後ろの席の女子からトントンと肩を叩かれた、これはあれか? 振り向いたら指で頬をつついて悪戯するあれだよな? まあいい、罠にかかってあげよう。


「何だよ何か――ギュベッシ!?」

「指だと思った? 残念、拳でした!」

「指にしろ! 指に! いや悪戯自体するなよ!」

「無理だねえ、君をからかうのが生き甲斐の一つだし」

「そんなものを生き甲斐にするな」


 こいつは楠木(くすのき)(なぎ)。中学校からの付き合いの女子で、趣味は情報集めということもあり新聞部に属している。しかし楠木の情報収集能力は異常の一言に尽きる、つい数分前にあったことも知ってたり、ニュースで報道される情報を既に知っていたりする。本人曰く能力らしいがいったいどんな能力を使えばそんなことが出来るんだと疑問に思う。


「で、何の用だ?」

「ああ、いや根野を病院送りにしたじゃん?」

「それがどうした? 中学から変わらないだろ、あいつが病院送りになるのもお前の情報網もな……」

「それがちょっと厄介なことになってね、まあ放課後になれば分かると思うけど」

「放課後呼び出されるってことか?」

「その認識で合ってるけども……まあ大丈夫か」


 何が? 一人で勝手に納得するの止めてくれないかな。放課後呼び出されるか、少しならいいけど長ければタイムセールに間に合わないな……そろそろ肉が食べたいから今日の鶏肉は絶対に買いたいんだけど。

 そして放課後、楠木の予想通り担任の佐藤先生に呼び出されたので職員室に着いていく。


「全く進藤(しんどう)(あゆむ)、お前は問題ばかりだ」

「は? いや俺は至って真面目な生徒でしょ、授業聞いてるしテストも平均超えてるし」

「苦情が来ているんだよ。まず一つ目、道を歩いていたら曲がり角でとんでもないスピードで走っているお前を見て腰を抜かしたお婆さんが歩けなくなって家にしばらく帰れなかったそうだ」


 あ、タイムセールに行く時だ。確かに急いでたから結構飛ばしてたと思うけどそんなことがあったのか……それ俺が悪いのか?


「二つ目、スーパーでお前に弾き飛ばされたと連絡が来た」

「それはタイムセールは戦場だから仕方な――」

「三つ目、スーパーの店員からだな。タイムセールの時間を過ぎたのに値段交渉をしてきて困ったそうだ」

「いやあの時はたった十秒過ぎただけだったからいけるかなと――ていうか全部それ関連ですか!?」

「最後のは違うな、近所でいつも喧嘩をしているお前と根野? だったか? まあとにかくお前達の声がうるさいってさ」

「そんな大きな声出してないし、出したとしても根野のやつだし!」

「そもそも喧嘩をする方が悪いだろ」

「それは……まあそうですけど」


 いやだってあいつ毎日突っかかって来るからどうしようもなくない? 俺から仕掛けたこと一度もないよ? むしろ被害者はこっちだよな?


「で、反省文でも書けばいいんですか?」

「いや、お前への罰はそれじゃ生温い。キツイ罰があるから着いてこい」

「キツイ罰……?」


 いったい何なんだ? タイムセールまであと三十分か。間に合うか? 先生に着いていく、だが何処に連れていくつもりだ? もう校舎の隅の方だぞ? こんなところに連れてきて何を、まさかタイムセールが終わるまで俺を閉じ込めるつもりか!?


「ここだ」

「ここ? えっと、解決部?」


 こんな隅に部室? 解決部ってそういえば聞いたことあるな、確か先生達の雑用手伝ったりする何でも屋みたいなやつらがいるって噂があったような?


「入る前に軽く説明だ、ここは僕が顧問の部活でね。聞いたことくらいはあるだろう? 解決部という名前の通り、生徒の悩みの解決や教師の雑用を手伝うという部活だ。だがここにはあまりそういった者が来ない、何故だか分かるか?」

「いえ、分かりませんけど……認知されてないとか?」

「それもある、だがもっと嫌な問題がある」

「嫌な問題? それは?」

「この世界は現在人口の約八割が異能を持つ。能力を持って当たり前、そんな考えさえ生まれているし僕だってつまらない力でも異能を持っている」


 そう言うと先生は右手から砂糖を少量零した。


「これが僕の力。右手の手のひらから少量の砂糖を成形することが出来る力だ」

「ええ、素晴らしいですよね。砂糖代が浮くんですから」

「そんな褒め方をするのはお前くらいだ。話を戻すが、能力を持っているのが普通。なら持っていない残りの2割は? 答えは簡単、異常だ。無能力者の差別は現代の解決することが難しいテーマの一つでもある」

「知ってます、俺もそういうのは何度も見ました」


 待てよ? 何で今こんな話をする? 話したということは関係があるということ、無能力者の差別、依頼のない解決部、まさかそうなのか? つまりここの部員は残り2割の――


「もう察しがついたか、頭の回転はやっぱり悪くないね。そう、ここの部員は全員――」


「「無能力者」」


「君にはここに入部し、この部で精一杯依頼を解決してほしい」


 なるほど、これは……難易度が高いキツイ罰ってわけだ。にこやかに微笑む先生の姿を見て汗が流れる。一粒の水滴が、先ほど零された砂糖の上に落ちていくのを俺は見ていた。



何か見づらい場所、意味が分からない場所などがあれば容赦なくご指摘下さい。

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