あとがき
僕は悠木君を見殺しにしました。
殺したのは榊と滑川の二人だけど、僕は悠木君がいじめられていることを知っており、それに対して何もすることができなかった。それを僕は同罪、つまりは共犯だと考えます。
僕がこの話を書いたのは、告白して自分を楽にしようと思ったからではありません。僕は死ぬまで楽になるつもりはないんです。
年老いて、死にリアリティを感じ始めた途端、急に自分の人生をきれいに清算するかのように過去を正当化し、人々の同情を誘うように語り出し、自己弁護に励む。傷つけた人の顔も分からず、人生を踏みにじった相手の顔を思い出すことができない人間の話に、誰が耳を傾けるというのだろう。誰も話を聞いてくれないのではなく、それは聞く価値もないからだと、そんな風に思うからです。
少なくとも僕は、自分を正当化するような人間になりたくないと考えます。罪を犯すような人間に生まれてこなければ、そのように考えることもなかったと思いますが、残念ながら僕は幼少の頃から、多くの罪を犯してきました。そして、その小さな罪が転がる雪だるまのようにふくれ上がり、やがては悠木君を死に追いやってしまったのです。ですから僕は、死ぬ間際まで悠木君のことを考え、謝罪し続けると決めました。そうすることが、僕にできる唯一のことだと考えたからです。
悠木君のお葬式に列席できなかったことが、今も悔やまれます。本当に亡くなってしまったのか、それすら確信が持てません。今でも台風が来ると、悠木君が帰ってくるのではないかと思ってしまうのです。もし会えたら、悠木君の耳に直接ごめんなさいと言える。それが僕の願いでもあります。
僕は本当に、ひどいことをしました。