「タベナイデ」
「タベナイデ」は棘皮動物目であるナマコに分類されるヒトデ型生物です。
体長10㎝、体重はビスケット一枚程です。
出現した環境によって表皮の色を変えますが基本的には暖色系の色あいをしており、ほんのりと白みがかった発光をしています。
彼らは以下の条件を満たす食料品が存在する空間に単体で突如として自然発生します。
条件1:成人以上の人物がその食料品の一部を咀嚼し、その全てを完全に口に入れていないこと。ようするに先だけかじった板チョコの様な状態。
条件2:条件1の人物にまだその食品を食べる意思があること。
条件3:条件1の人物がその食品から3メートル以上離れ、食品を視界にいれていないこと。
条件4:条件1の人物に好意を持つ人物がその食品の2メートル以内に入ること。
「タベナイデ」は出現すると同時に対象となった食品に覆い被さるように現れて最初に咀嚼した人物が戻ってくるまでその食品を守り抜こうと努力します。
何故彼らがその食品を守るのかは諸説有りますが現在有力とされているのは食品に卵を産み付けている説です。
気に入った人物が咀嚼した食品に卵を植え付けることで卵をその人物の体内に送り込み幼体時をそこで過ごしていると推測されているためです。
彼らは食品の2メートル以内に近づいた人間に対して強い警戒心を示しその人物が食品に近づくほどに発光を強めます。
その光をみた者は強い罪悪感を感じ食材から距離をとろうとします。
基本的にはこれで対象者が食材から離れ、2メートル以上離れることで「タベナイデ」は発光を停止し、食品を咀嚼した人物、若しくは部外者がその場に現れた際に消失します。
しかし稀に「タベナイデ」の活動が阻害される場合があります。
それは天敵である「タベテタベテ」の出現です。
「タベテタベテ」は白色のメガネモチウオに似た外見を有する魚型の生物で空中を遊泳しています。
彼らは「タベナイデ」が出現すると同時に出現します。
体長は「タベナイデ」出現の条件4に該当する人物のその場での空腹度、及び食品を咀嚼した人物への親密度、友好度に比例して大きくなり最大で1メートル程の実体が確認されています。
「タベテタベテ」の存在に気付いた「タベナイデ」はその大きさに応じて体の色を青色にし警戒を強めているようです。
「タベナイデ」を一飲みで捕食できる大きさの「タベテタベテ」が出現すると目にもとまらぬ速さで「タベナイデ」を捕食します。
その速さは我々人間には感知できないほど俊敏でその場にいた者も「タベナイデ」の出現に気付けない程です。
捕食の際に「タベナイデ」が出現した食品には一切手をつけないことから「タベテタベテ」がかなりの偏食家であることが窺えます。
「タベナイデ」を捕獲し調理する試みも何度か行われましたが「タベナイデ」は外的な刺激を受けると消失してしまうため「タベテタベテ」同様一飲みで飲み込む以外に食する術がなくそれを試した人物の感想は生臭いの一言に尽きました。
「タベテタベテ」は「タベナイデ」を捕食すると満足げに消失し、出来なかった場合も「タベナイデ」消失と共に消失します。
「タベナイデ」「タベテタベテ」が消失した後に「タベナイデ」が守っていた食品も消失する場合が確認されていますが彼らの出現、消失との因果関係は不明です。
彼らの目的、存在理由は未だ判明してません。
あなたの側に現れたとき、あなたはきっとお腹を空かしているのです。




