「小人商人」
「小人商人」は人型生物です。
注目すべき身体的特徴として鰓や鱗をもつ魚類のような頭部しています。
つまるところ半人半魚の亜人であることが推定されています。
因みに外見的に茶色い肌ではありますが「ギンブナ」に近い造形の頭部であると言えます。
身長160cm程度で修道女のように肌を隠す黒っぽい服装をしており、かなりくせのあるパーマヘアーを含めた頭部以外に肌の露出はありません。
性別は女性のようで老婆のようにしゃがれた声で喋ることが報告されています。
彼女は特定の条件を満たす人物の前に現れて世間話に花を咲かせます。
魚類のようなギョロリとした目が目立ちますが気さくに話てきて、彼女に出会った人物達は話しやすい人柄であったと話しています。
世間話の内容としては話しかけられた人物の日常生活に関する内容が多く、初対面であっても「小人商人」はその人物を古くから知っているかのように話てきます。
それはまるで孫を愛でる祖母が昔話を交えて成長した孫を語るかのようです。
「小人商人」は初対面では明らかに知り得ない個人情報を知っているかのように話していたという報告もあります。
これらの話を聞く限りでは身体的な特徴も含め彼女は親しく話すには不審な存在であるように思います。
ですが彼女と話した人物達は、異質な存在である彼女に対して、嫌悪感を示すことはないようです。
これらの調査結果から「小人商人」はなんらかの認識改変能力を持っていると想定されます。
彼女は会話を終えると「あるもの」を渡してきます。
「あるもの」とは「ジンジャーマンクッキー」と呼ばれる人型のクッキーです。
飴玉を渡してくる陽気なおばちゃんみたいですね。
このクッキーの多くは受け取った人物が食してしまうためサンプルの入手は出来ていません。
話で聞くかぎりではしょうがの風味がかおる甘くておいしいクッキーのようです。
調査結果としてこのクッキーを食べても異常現象は発生しません。
ただ、何故か、これを食べた誰しもが懐かしい味であった、と語っています。
ここで「小人商人」と話をした人物の一人からのインタビューログを紹介します。
対象者:19歳女性
ーーーインタビューログ開始ーーー
私はあの人、……人だったのかな?
あの人に話かけられて、……なんでだろう、……よくわからないんだけど嬉しかった。
知り合いでもないのに……、おかしな話ですよね。
あの人は話の最後にクッキーをくれました。
あの人はあれをくれる時、……確かこう言ってました。
私はこの小人を売っている、あなたにはそれが必要だから、って……。
売っているっていうのにタダでくれるんですよ、おかしな話ですよね。
ーーーインタビューログ終了ーーー
「小人商人」に出会う人物の条件は以下の通りです。
条件1:対人能力に自信がない。
条件2:過去三日間、人に自分から話しかけていない。
条件3:外見的コンプレックスを持っている。
「小人商人」は条件を満たす人物に小人を売って回っています。
彼女が何を対価にそれを売っているのかは我々には推測することしか出来ません。
しかし一つわかることがあります。
彼女と接した人物は皆、「承認欲求」が満たされているようです。
彼女はきっとあなたの存在を認めてくれます。
だからこそ彼女があなたの前に現れた時、きっとあなたも彼女を認めてしまうでしょう。