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「Meown」

挿絵(By みてみん)


 あなたは「シュレディンガーの猫」をご存じですか?

 量子力学の世界で取り上げられた思考実験の一つです。

 詳しく説明すると今回の記録が説明だけで埋まってしまうのでかなり簡略的に説明します。

 箱の中に条件を満たすことで毒を出す装置と猫を同時にいれた時、装置の起動条件の特殊さから箱を開けるまで猫が生きているのか死んでいるのかわからないとする実験が考えられました。

 生と死が同時に存在するパラドックスとして取り上げられる言葉です。


 今回の【UFA】は生と死に関わる猫のお話です。


 「Meown(ミャウン)」は卵の様な(から)に包まれた猫です。

 その品種は多様でブリティッシュフォールド、マチカン、ベンガル、ペルシャなど多くの種類が存在し、毛並みもそれぞれ異なります。

 共通する特徴としてはそのすべてがイエネコにあたる品種であり、(から)に包まれているということだけです。

 この(から)は非常に(もろ)く、彼らが動く度にひび割れ砕けていきますが、目を離した(すき)(から)は修復されます。

 体長は平均して50(センチメートル)程度で生まれたての猫にしては大きいです。

 卵から前足と尻尾、耳のみを突き出し基本的に移動を行いません。


 彼らは極めて限られた状況下に姿を現します。


条件1:何かしらの要因で近い将来そこで事故が起こる場所であること。

    (トラックによる交通事故、工事現場での建材の崩落など)

条件2:その付近で一週間以内に猫が酸素欠乏症により死亡していること。

条件3:条件2において死亡した猫と何かしらの接点があった人物がその場にいること。


 「|Meown(ミャウン)《ミャウン》」は以上の条件を満たした場所に突然出現し、その多くは発生後に起きる事故により死亡します。


 「ねこがいた。」という目撃証言はあるものの、彼らは死亡と共に消失するため遺体(いたい)の回収には成功していません。


 彼らが死亡する現場ではどれほどに大きな事故が起きても、何かしらの偶然が重なり「Meown(ミャウン)」以外に死ぬものは現れません。


 ですが多くの場合、条件3を満たす人物は大きな後遺症(こういしょう)を負い、その後の生活に支障がでます。

 脳に重傷を負い植物人間になる、四肢(しし)のいずれかを失い今まで通りの生活が送れなくなるなどその多くは筆舌(ひつぜつ)(がた)悲惨(ひさん)なものです。


 これらの事故と「Meown(ミャウン)」との因果関係は未だ不明です。


 我々は条件2にあたる猫の死亡に関連性があると推測しています。


 「Meown(ミャウン)」の目撃例は年を重ねるごとに減少しています。

 現在日本における目撃証言はピーク時の三分の一程度に落ち着きました。


 唯一の手がかりとして我々は以前に一度だけ、生き残った「Meown(ミャウン)」を保護しています。

 目を離した隙に逃走されてしまい、ちゃんとした調査は出来ませんでしたが……。


 これを飼育していた調査員は「Meown(ミャウン)」のか細い鳴き声を聞きました。



 媚びるように、甘えるように、縋るように……。


 その声はまるで生きたいと願うようであったと。



 「Meown(ミャウン)」の存在は一見して当事者を襲う呪いのようです。

 猫の呪いについては数多くの逸話が存在し、化けて人間を襲う妖怪の話も日本には存在します。


 しかし彼らの声を聴いた調査員はこう語りました。




 彼らは恐らく、生きたいと願う猫の生まれ変わりなのだろう。

 それはきっと純粋に、「命を救う力」を宿している。

 だからこそ死にゆく人間の運命を変え、「生かす」力を持っているんだろう。

 ただし結果としてそれは……、救った人間の殆どを苦しめているようだ。

 そういった気まぐれさはある意味で猫らしいのかもしれない。




 「Meown(ミャウン)」は死の淵にあるものの側に現れます。

 それは恨めしさからなのか、はたまた恩返しなのか、それを判断することは彼らに出会った人達にしかわかりません。

 一つだけわかることは彼らがあなたの側に現れた時、きっとあなたはそこで死ぬ定めではないのでしょう。

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