「けっこうオウム」
「けっこうオウム」はオウムに似た日本特有の渡り鳥です。
体長は10cm、重さは野球ボール一個分ですが足がなく常に地面から2mm程浮遊しているので重さを感じることはありません。
この浮遊力は彼らが空気を入れたビニール袋の様に体内に水素を溜めているために発生しています。
「けっこうオウム」は黄色い羽毛に包まれ、触るとほのかに暖かいです。
嘴が丸くご飯を食べるのには不便そうです。
しかし彼らは空気を吸って体内の水素と化学反応を起こし電気エネルギーを生み出しそれを主食としている様なのでその心配はないようです。
彼らは人間の生活圏内を風船のように自由に放浪していて、彼ら好みの条件を満たす人物の肩に止まります。
彼らの個体数は多く基本的に常に私達の側を飛んでいますが、それ故にそこにいることが当たり前すぎていつの頃からか我々は彼らを空気と同様に「そこにあるけど認識出来ないもの」として認識するようになってしまいました。
彼らを見つけるには水をかける事が有効です。
「けっこうオウム」は水に濡れると姿が視認できるようになります。
しかし彼らの移動速度は結構早く、雨の日は室内か雲より上に逃げてしまうため彼らを捉えるのは中々難しいです。
以下、彼らが止まり木に選ぶ人物の条件です。
条件1:おしゃべりである。
条件2:語彙が少ない。
条件3:割と雑な性格である。
「けっこうオウム」が肩に止まっている人物は会話中よく「結構」という言葉を使います。
これは「けっこうオウム」が空気を吸って電気エネルギーを生成する際に微弱な電磁波が発生し、それが肩を通じてその人物の全身に伝わり全身の筋繊維がごく微量な痙攣を起こすことによって発生します。
まぁしゃっくりと同じ様な要領だと思ってください。
以下、これまでに確認された発言例です。
「へー、結構すごいね。」
「明日作戦を結構しよう!」
「もう結構です。」
「結構なお手前ですこと。」
「タマネギを食べると結構が良くなります。」
「お値段はいくらでも結構です。」
統計の結果、「けっこうオウム」が肩に止まられるとこのような言葉を結構使用します。
「結構」の意味を履き違えていても「けっこうオウム」にとって結構どうでもいいようです。
彼らが肩に止まることで結構円滑に会話を進めることが出来ます。
結構凄いですよね。
「けっこうオウム」のもっとも特筆すべき特徴として数多の亜種が存在することです。
「やっぱりオウム」「かなりオウム」「でもオウム」「あぁオウム」「たしかにオウム」など数え切れないほど種類が豊富です。
それぞれ色が異なり横に並ぶとカラフルです。
雨上がりになると集団で地上へと大移動を起こし空に七色の軌跡を残す事が確認されています。
これは空中への移動のため大量に消費したエネルギーを落下時に大量の空気を吸うことで補い、その結果として彼らの体温が高温になり外気との温度差で体表に大量の霜がかかった結果の様です。
彼らはそれぞれ好む人物の条件が異なりますが時として数種類の「オウム」達が特定の人物の肩に並ぶ場合もあります。
このように「オウム」達に好まれる人物は良くも悪くも印象的な人物である傾向が強いです。
彼らの目的、存在理由は未だ不明です。
結構あなたの肩にも止まってるのかもしれません。




