狙撃
「なんだ…!? 何が起こってやがる…?」
何度も迸ったまばゆい光の帯と、町の方で上がる黒煙に、ゲイツはただならぬものを感じ取っていた。
「こりゃあ、ブロブどころじゃないな。尻をまくって逃げるのが正解だ」
そう判断したゲイツの動きは迅速で躊躇いがなかった。目的の洞窟のすぐ傍まで来ていたが即座に踵を返し、撤退を決めた。それが彼の強みでもあっただろう。危機回避能力の高さだ。恐らく、ヤバいと判断すれば金銀財宝が目の前にあっても迷わず放り出して逃げる。
ゲイツはそういう男だった。
だが、撤退中の彼の視界に、不可解なものが飛び込んできた。カルシオン・ボーレのパワードスーツを相手に戦闘を行う二人の男の姿だった。その動きですぐに軍人崩れだと分かった。しかし、グレネードをことごとく空中で受け止められて攻撃が届いていない。
グレネードは、ブロブを倒すには最適の武器ではあるが、弾速がどうしても遅いので、反応さえできればこの程度の芸当は不可能ではなかった。だが何かおかしい。カルシオン・ボーレと元軍人が戦っているということ以上に、パワードスーツが何かおかしかった。
「ありゃ、ブロブ…か?」
パワードスーツの表面にブロブが張り付いているのが分かった。それでゲイツも察してしまった。
「おいおい…ブロブに操られてるってことか…?」
カルシオン・ボーレが元軍人とあんな風に戦わなければいけない理由が思い当たらず、しかもカルシオン・ボーレのような素人が元軍人二人と互角の戦いをしているという事実だけで、ゲイツはそれに気付いてしまったのである。
本当に勘の働く男だ。
あまり首を突っ込む気は毛頭なかったが、この時点では彼の嗅覚が危険を訴えてこなかったこともあり、バッグから何かを取り出して手際よく組み立て始めた。
ほんの数秒で組み上がり彼が構えたのは、スナイパーライフルだった。弾丸はもちろん麻酔弾。それを躊躇なくパワードスーツに向けて、引き金を引いたのだった。そしてすぐに銃を分解し、バッグに収めて再び走り出した。これ以上は関わる気はなかった。
だがゲイツの放った麻酔弾が、状況を大きく変えることとなった。
目の前の人間が放つグレネードには対応できていたブロブが、自分の探知外から放たれた、グレネードよりもはるかに弾速の早い麻酔弾には反応できなかったのだ。麻酔弾は確実にブロブを捉え、薬剤を注入する。
効果はすぐに表れ、カルシオン・ボーレのパワードスーツを操っていたブロブの動きが鈍り、バレトの放ったグレネードをその身に受けて、きれいに爆散したのだった。




