邪魔
<ベショレルネフレルフォゥホ>
正しいかどうかは分からないがマリーベルは取り敢えずそいつをそう呼称することにした。別になるべく正確に呼んでやる必要もないかと思ったが、何だかやけにそれがこびりついたのでそう呼ぶのがしっくりきたからそうした。
「てめぇ! よくも私の体を好き勝手してくれやがったな!?」
およそ十歳くらいの少女とは思えない口ぶりで、しかも少々語弊の有りそうな言い方だったが、彼女にしてみればとにかくそういう気分ではあったのだろう。
『ふん……せっかく貴様らの体の操り方を理解したところだったというのに、とんだ邪魔が入ったものだ』
ベショレルネフレルフォゥホはそう吐き捨てると、フイっとその存在を感知できなくなった。感覚的には『見えなくなった』と言った方が近いか。マリーベルの認識の外に消えたということかもしれない。
「くっそ!、逃げやがった!!」
そう悪態を吐いたマリーベルの体に覆い被さっていたものがいた。ヌラッカだ。
「マリーベル…」
「マリーベルヨカッタ!」
「マリーベルカエッテキタ…!」
体に浮かび上がらせたいくつもの口でそう喜んだヌラッカの体に触れつつ、
「ごめん。心配掛けたな…」
とようやく落ち着いたマリーベルが応えた。
『マリーベルさん…!』
すると今度は、さらに自分の名を呼ぶものがいることにも気付いた。シルフィだった。
「あ、シルフィか。悪い、助かった」
『何があったんです?』
そう問い掛けられてマリーベルは、それまでの経緯を意識してシルフィと共有するようにした。それによってシルフィにも、マリーベルが理解しているすべてが伝わった。
『あいつはいったい何なんでしょう?』
シルフィにも彼女が見たベショレルネフレルフォゥホの姿がはっきりと認識され、背筋が凍るような恐怖と言うか不安と言うか不快を言うかを感じ、思わず問い掛けていた。
「分からない。ただ、やけに人間を嫌ってるってのだけはこれではっきりしたよ。シルフィも気を付けろ。あいつ、実体化したくて私の体を狙ったみたいだからな」
『怖い…』
マリーベルとシルフィがそんな会話をしていた頃、カルシオン・ボーレは、一瞬、自分のパワードスーツの自由を取り戻せてホッとしていたがまたすぐ自由が効かなくなり、
「何なのだ!? 何なのだこれは!?」
とパニックに陥っていた。
そんな彼には構うことなく、非常時に外部からパワードスーツを操作する為に設置されていたコンソールからシステムに侵入したブロブがパワードスーツを操り、再びフィとシェリルのいる方向に荷電粒子砲を向け、そのスイッチを入れたのだった。




