せめぎ合い
「フフフ……ファハハハ! 下等で醜いケモノが作ったものにしてはなかなかの威力ではないか! これはいい! 貴様ら全員、消し炭となれ!!」
洞窟の中で、ブロブを通してその光景を見ていた<マリーベルの姿をしたそいつ>は、高らかに笑いながらそう言った。
「さあ、次は貴様だ。目障りな虫けらめ!」
狂気の笑みを浮かべたまま、<そいつ>はカルシオン・ボーレのパワードスーツを操って荷電粒子砲をフィとシェリルのいる方向へと向けた。さっきの威力で放たれれば、たとえ直撃を免れたとしても生物としては致命的なダメージを受けるだろう。
「消え去―――――…!」
『消え去れ!』と叫ぼうとした瞬間、
「ダメーッッ!!」
という叫び声と共に、覆い被さってきたものがいた。ヌラッカだった。ヌラッカが<マリーベルの姿をしたそいつ>を押し倒すようにして覆い被さったのだ。
「ダメ! ニンゲンコロスノ」
「ダメ!!」
「マリーベルカエシテ!」
「マリーベルカエシテ!!」
ヌラッカは自分の体に浮かび上がらせたいくつもの口から口々にそう声を上げて、叫んだ。
「マリーベル!」
「マリーベルオキテ!!」
『マリーベル起きて』。ヌラッカは確かにそう言った。だがそんなヌラッカに、<マリーベルの姿をしたそいつ>は言った。
『無駄なことは止めろ! この体はもう私のものだ! そのマリーベルとやらはもう二度とこの体には戻れん!!』
しかしヌラッカはそいつの言うことを聞き入れようとはしなかった。さっきまでは抑え付けられていたが、カルシオン・ボーレのパワードスーツを操ろうとして意識がそちらに集中したことでそれを撥ね退けることができたからだった。だからそれと同じことがマリーベルにも言えるはずだとヌラッカは確信していた。
そして、そのヌラッカを後押しする者達がいた。ブロブと同化し、ブロブの中で生きている人間達だった。
『いい加減にしろ!』
『お前の好きにはさせない!』
『人間を舐めるな!』
『その子を解放して!』
その声は、マリーベルに改めて呼びかけようとしていたシルフィにも届いた。
『マリーベルさん!? マリーベルさんがどうかしたんですか!?』
そのシルフィの意識がブロブの中にいた両親の意識とシンクロし、シルフィの両親の自我が完全に人間としての明瞭なものとなって、ブロブの意識の中をただ茫漠と漂っていたマリーベルのそれに強く呼びかけた。
『マリーベル!!』
『マリーベル!!』
「…! だぁっ! うるせぇぇぇっっ!! 耳元で怒鳴るな!!」
そう叫んだのは、<マリーベル本人の口>であった。




