矜持
『そこのリクガメでも捕まえて動物園にでも売らないか?』
仲間の発言に呆れたような顔をしつつも、リーダーらしき男は、
「まあそうだな。晩飯代くらいにはなるか」
と賛同した。
『何を言ってるんだこいつらは…!?』
洞窟の奥で、ベルカとマリアンが頭を抱える。お前達にはプロとしての矜持はないのかと。
まあ、そうは言っても山師的な連中がいることも事実だった。プロとしての矜持など、はなから持ち合わせていないのだろう。
しかしこれは想定外の出来事だ。ここまで酷い業者が来るとは考えていなかった。プリンとシフォンが変じた<リクガメ>を捕らえるべく男達が洞窟に入ってくる。
『うそ…! プリンとシフォンが捕まっちゃう…!?』
シルフィが泣きそうな顔をして、思わず『やめて!』と声を出しそうになった時、
「やめなさい!」
と声を上げた者がいた。マリアンだった。マリアンが立ち上がり、リクガメを庇うように男達の前に立ち塞がった。それに続いて、ベルカも彼女の横に立つ。
「なんだ!? 人間がいたのかよ! 何してんだお前ら、こんなところで?」
驚いたことを誤魔化そうとするかのように男の語気が荒くなる。しかしそれに対してマリアンは毅然とした態度で叱責した。
「何してんだってのはこっちのセリフよ! は生物学者のマリアン・ルーザリア。リクガメの生態の調査中! それよりあなた達こそ、ブロブの駆除作戦の途中でしょう? それ以外の動物を捕獲したりってのは許可されてない筈よね? なんだったら今すぐ通報してもいいのよ?」
「なんだこのガキ…!」
突然現れた子供にたしなめられて、男達は頭に血が上ったようだった。しかしベルカが脇に下げたハンドガンを見せ付けるようにしつつそれに手を掛けて、
「なに? ガキがどうしたって?」
と、低くドスの利いた声で問い掛けた。すると男達は、ベルカの肝の据わった態度にただならぬものを感じたのだろう。途端にシオシオと覇気が失せるのが見えた。
「あ、いや、別に……なあ…?」
バツが悪そうに顔を見合わせながら、
「冗談だよ、冗談。本気にすんなよ」
などと誤魔化しながら、踵を返して元来た道を帰って行ったのだった。
「…まったく……ここまで酷いとは想定外だったわ」
マリアンが肩を竦めながら呆れたように声を漏らした。しかし取り敢えずプリンとシフォンは守られた訳で、シルフィはホッと溜息を吐いた。
だが、こうやって穏便に済ませられた一方で、マリーベルがいる方の森では、凄惨な状況に陥っていたのであった。




