怠惰
カルシオン・ボーレがブロブの<真の力>に翻弄されている頃、シルフィ達の方はただ退屈な時間が過ぎていた。
「どうなんだ? これって」
見るに堪えない素人丸出しの駆除業者達の動きに、ドローンの映像を映し出しているマリアンのタブレットを見ながらベルカが頭を抱えていた。
「これじゃ時間内にここまでたどり着くことさえできないかもね。という訳で、私は少し眠らせてもらうから」
このところあれやこれやと忙しくてやや睡眠が足りていなかったベルカは、キャンプ用のマットを敷いてそこに横になった。そしてすぐに寝息を立て始める。この辺りの図太さはさすがと言うべきか。
「あなたも休んでていいわよ。これからもいろいろやってもらわなきゃいけないし」
マリアンにそう言われたシルフィだったが、さすがに寝るところまではリラックスできない。いくら駆除業者達が素人とは言え、彼女にはそこまで詳しくはないし、不安もある。
マリーベルのことだ。どうして呼びかけに応じてくれないのだろう。
『マリーベル……』
何とも言えない胸騒ぎを感じ、シルフィは悲し気に顔を伏せていた。
マリアンもそれには気付いていたが、今の自分にできることは何もない。まずは目の前の状況を無事に乗り切ることだけが目的だった。
だが、素人のような駆除業者達もせめてもの意地なのか、ブロブに遭遇せずそのまま来られたからなのか、シルフィ達のいる洞窟へと近付いてきていた。
「ふん…! 頑張ったな」
ほぼ皮肉でしかない呟きを漏らしたベルカの背後にシルフィとマリアンは隠れ、そのベルカも洞窟の奥に身を潜めた。その前には<リクガメ>変じたプリンとシフォンがいる。どちらもリクガメらしく非常に大人しくじっとしていた。その洞窟を覗き込む人影が見える。駆除業者達だ。
ライトで奥を照らすと、リクガメの姿が見えた。
「またリクガメか……こいつがいるってことはブロブはやっぱりこの森にはいないってことだな」
殆ど素人の集団のようなその中でも一応リーダーらしき男がそう口にした。ここまでにも何度かリクガメに遭遇したことによる発言であった。
だがその時、男達の一人が発言する。
「でもまあ、せっかくここまで来たんだから、手ぶらってのもどうかと思うしよ。そこのリクガメでも捕まえて動物園にでも売らないか?」
本当に何気ないただの思い付きだったのだろうが、実に間の悪い話である。確かにリクガメを買い取ってくれる動物園はあるのだが、決して高価なものではない。恐らく今日の人件費にもならない程度の価値しかない筈なのだった。




