憑依
マリーベルは、手強い敵が紛れ込んでいることを察知していた。ブロブを殺すのではなく麻酔弾で麻痺させて次々と退けていくブロブハンターらしき男と、エクスキューショナーだった。
まずはその二人に対して集中することにする。しかも、ハンターの男はもう既に洞窟のすぐ近くまで迫ってきていた。
ハンターの男に対しては、明らかに動きが他の連中が違うことから最初から融合を目的にするのではなく、まずは致命傷を与えて動きを封じてからと思ったのだが、男の身に着けている洋服が恐ろしく強靭で、攻撃が通らない。しかも融合することを目的に迂闊に接近すれば麻酔弾で麻痺させられる。
一方、エクスキューショナーの方はそれこそ相変わらずの強さだった。当然だ。<奴>はブロブの身体能力を獲得してるのだからな。にも拘らず、奴とは<交信>ができなかった。中途半端に融合した際にトラブルがあったらしく、奴との回路が絶たれているのだ。故に<この体>のように操ることができない。
まあ、この体についても、つい先日ようやくコントロールできるようになったのだがな。散々てこずらせてくれたが、こうなってみれば呆気ないものだ。
しかしそれだけに、エクスキューショナーの存在は目障りだった。そこに、そいつらをまとめて始末するのにちょうどいい<玩具>を、人間共がわざわざ持ってきてくれた。だからそれを利用させてもらう。
「合金とカーボンの繊維で作られた鎧で身を固めて安心しているようだが、所詮は臭く汚らわしいケモノの浅知恵。そんなことで我の攻撃を防げると思うなよ」
そう口にした<それ>は、明らかにマリーベルではなかった。姿形は確かに彼女なのだが、そこから放たれる気配は、もはや人間のそれとさえ思えなかった。
その、<マリーベルの姿をした何か>は、ニヤアと邪悪な笑みを浮かべ、ブロブに命じた。
「そいつに寄生しろ」
と。
命じられた瞬間、周囲に隠れていたブロブが一斉にカルシオン・ボーレのパワードスーツにまとわりついた。
「おおっ!?」
と一瞬驚いたカルシオン・ボーレではあったが、表面に張り付いて蠢くだけしかできないブロブに嘲笑を向けた。
「所詮は下等生物だな」
だがその笑みが凍りつくには、数秒しかかからなかった。
「な、なんだ? 動かん…!?」
異変に気付いた部下達が「カルシオン様!?」と駆け寄った瞬間、カルシオン・ボーレが抱えていた荷電粒子砲が放たれ、部下が纏っていたパワードスーツの頭部が蒸発した。それでも相殺しきれなかったビームが空へと向かって奔り、空気を焼き、イオン化した大気の臭いが周囲に漂う。
頭を失いただのモノと化した残りの部分がゴトリと地面に転がるのを見ながら、カルシオン・ボーレは言葉を失った。
「な…!?」
という意味のない声を漏らすのが精一杯であった。




