擬態
隠れる方法は既に考えてある。マリアンが考案したものだ。ブロブが融合した生物のDNAを保持し再現できるというのなら、それを利用すればいい。ちょうどこの辺りにはそれにうってつけの動物がいる。<リクガメ>だ。
と言っても、実際には<リクガメに似た六本脚の動物>だが。プリンとシフォンにそれに擬態してもらい、洞窟の奥に潜んでてもらうのだ。そうすれば、もし洞窟の中にまで捜索に来たとしてもやり過ごせる。何しろ、動きの遅いリクガメはブロブにとっては絶好の捕食対象と見られており、ブロブがいればリクガメが生きていられる筈もないので、リクガメがいる=ブロブはいない、という理屈が成立するのである。
プリンやシフォンが変わったものだと体が透明になってしまうが、そこは泥を被ってもらうことで偽装する。もともとリクガメは土埃を被って土色に変化してるのが一般的だからだ。
シルフィとマリアンとベルカはさらに洞窟の奥に潜めばいいだろう。今回の目的はあくまでブロブ。ブロブがいない洞窟を捜索している暇は彼らにもない。
洞窟周辺にマリアンが用意したマイクロドローンを監視カメラ代わりに配置し、洞窟に戻る。
戻ったプリンとシフォンを、シルフィが、マリアンの持っていた資料映像を見ながらリクガメへと変化させる。それに泥を被せてリクガメの出来上がりだ。
「上出来。それじゃ素人目には本物との区別はつかないわ。たとえ普通のリクガメと違うと感じてもどのみちブロブだとは分からないしこれでOKよ。後は、捜索時間終了まで隠れていればいいわ」
マイクロドローンを使った監視カメラの映像も端末で見られる。準備万端だ。入り口から辛うじて見えるところにプリンとシフォンにはいてもらって、その陰にシルフィとマリアンとベルカは身を潜めた。駆除業者達が近付いてくれば更に奥に隠れることになるが、今はマリーベルと連絡を取り合いたい。
だがその時、プリンの触手を咥えていたシルフィが困ったような顔をした。
「マリーベルさんが応えてくれません。こちらの声は届いてるはずですけど。何だかすごく怒ってるみたいで」
「…どういうこと…?」
ベルカの問いに、マリアンが応える。
「彼女は元々、人間を嫌ってるからね。感情的になってしまってるのかも。任せておいても彼女なら上手くやるとは思うけど、むしろ彼女の場合はやりすぎてしまわないか心配かもね」
そんなマリアンの懸念を裏付けるように、この時のマリーベルの顔つきは、それまでの彼女とはまるで違っていた。以前からきつい顔つきはしていたが、今の彼女のそれは、<邪悪>と言っても言い過ぎではない貌になっていたのだった。
「来い……来い……人間共……貴様らは一人残らず我が供物となれ……!」




