駆除開始
「カルシオン・ボーレか……性懲りもなく……」
御大層なトレーラーが森の入り口近くに止まっているのを見て、フィが呟いた。他の連中と顔を合わせるのは真っ平御免だったので少し離れたところに自動車を停め、グレネードマシンガンを手に森へと足を踏み入れる。
「ついてこい。ついてこれなきゃ置いていくだけだ」
後を追うシェリルに吐き捨てるようにそう告げて、フィは躊躇うことなく森の中を突き進む。
シェリルも、決して楽ではないが辛うじてフィに遅れないように続くことができていた。まだ学生とは言え、軍が運営する大学に軍人を志願して入ったのだ。他の大学では決して経験できない、即応できる軍人を育てる為のカリキュラムは受けてあり、そしてそれを優秀な成績でこなしていた。当然、<実技>もだ。
だからアルバイトに毛の生えた程度の駆除業者の従業員とは訳が違う、それなりに鍛え上げられた<軍人の卵>だった。
亡くなった兄の元上官で、自分の後見人を引き受けてくれて、自分の希望の学校にも通わせてくれた恩人であるバレトに言われて軍人は諦めることにしたが、優秀な軍人になることを目的に作り上げてきた肉体は彼女を裏切らなかった。
とは言え、これでもフィにとっては軽く流してるだけである。彼女が本当に本気を出せば、生身の人間ではついてはこれない。
そして、そんなフィの体は、森に満ちているピリピリとした気配を感じ取っていた。人間に対する嫌悪と憎悪の気配を。
『これが人間の敵じゃないって? 寝言は寝て言うんだな…!』
テレビに出ていた<セルガ・ウォレドを名乗るクソ下衆>のことが頭をよぎり、フィは奥歯をギリっと鳴らした。
そして正午。ブロブの一斉駆除開始の時間が来た。
アメリア大陸全土で、駆除業者とハンター達が一斉にブロブを駆除する為に動き始めた。
それは当然、シルフィ達の林でもそうだった。
もっとも、そこに来ている駆除業者達のモチベーションは明らかに目に見えて低く、動きも悪く、ボーイスカウトの方がよほど頼りになりそうな感じでしかなかった。
様子を窺う為にプリンとシフォンが既に彼らからも見える位置の樹上にいて監視していたのに誰一人気付かないのだ。
ベルカも、プリンとシフォンからは少し離れたところからだったが双眼鏡を使って監視していた。
「なにあれ。見れば見るほど酷いね。これじゃやっぱり相手しないで隠れてる方がいいと思う。下手に相手して追い返すと今度はまともなのが来ちゃうだろうし」
ベルカが、元ブロブハンターとしての見地から正直な感想を述べていた。
「ベルカがそう言うのなら、それに従った方が良さそうね。分かったわ。みんなで隠れましょう」
無線機を通じてそれを聞いたマリアンが、そう指示を出したのだった。




