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侵略者  作者: 京衛武百十
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具象化

深夜。シルフィ、プリン、シフォンのいる洞窟に到着したマリーベルとベルカは、シルフィと対面を果たした。マリーベルとヌラッカを通じて話はしていたのでスムーズに事は進んだ。


改めてシフォンを通じてマリーベルの指導を受けながら、シルフィはまず、プリンの中にいる両親を呼び出そうと試みた。


「まあ、理屈なんてあってないようなものよ。あんたがいかにその人間を具体的にイメージできるかってだけ。ただ、ブロブと深く繋がれば繋がる程、自分自分の人間としての感覚が曖昧になってくるから、それを補う為に人間と触れてるといいわ。ま、とりあえずやってみて」


そう言われて、マリアンとベルカにそれぞれ両手を握っていてもらった上に、プリンの触手を口に咥えて、シルフィはまず、母親の姿を思い描いた。すると、シルフィがいつもイメージしている<情報の海>の中に人影が見えた。


『お母さん…!』


母だった。母が、海の中から立ち上がって自分を見ていた。


「シルフィ」


名前を呼ばれて、シルフィはもう我慢ができなかった。自分から駆け寄って、海に入っていく。だがそれは、自分とブロブを隔てている境界線を越え、ブロブの側に飛び込むことでもあった。


するとその時、海の中に母ではないもう一つの影が見えた。父親ではなかった。それどころか人間の姿さえしていないように思えた。


「な…なに……?」


シルフィは本能的にそれを危険なものだと感じ取り、体が竦んだ。


「シルフィ、駄目よ。そいつに近寄っては駄目。あなたはここから出なさい」


母に促されて陸の方に歩こうとするが、何故か体が動かない。その間にも、得体の知れない<影>が近付いてくるのが分かる。


「お母さん! お母さんも一緒に逃げよ!」


思わず母の手を引いてそう声を掛けるが、母は静かに首を横に振った。


「私はここからは出られない。それに、私は大丈夫。あいつは私には何もできない。だけどあなたにとっては危険なの。あれは<憎悪>。正体は私達にも分からないけれど、とにかく人間を憎んでいる。ブロブが時に人間に対して攻撃的になるのは、こいつの所為よ」


そう言いながら、母はシルフィの体を押した。それでも、足が動かない。


「駄目! 動けない!!」


と声を上げた瞬間、


「シルフィ!」


と彼女の名を呼ぶ声が聞こえた。ハッと振り返ると、そこにはマリアンとベルカの姿があった。砂浜から二人が必死に手を伸ばしているのが見えた。


「シルフィ、いきなさい!」


母の強い言葉に弾かれるように手を伸ばすと、その手をマリアンとベルカがしっかりと掴んだのだった。



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