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侵略者  作者: 京衛武百十
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懇願

危うくテレビをグレネードで爆砕するところだったのをシェリルに止めてもらったフィだったが、その激情はまったく収まってはいなかった。それどころか体の中でメリメリと音を立てて何かが膨れ上がってくるのさえ感じた。


『許さない……許さないぞ貴様ら……! そんなにまでしてブロブの味方をしたいか…!? この裏切り者が……!!』


シェリルがテレビを消したことで少しはマシになりながらも、フィの憤怒は収まらない。


だがこの時、会見はまだ続いていた。その中でウォレド夫妻が本当に伝えたかったことが語られていたのだった。


「もう一つ、これは私達の家族のことなのですが、私達の娘を探しています。娘はブロブの中にはいませんでした。ですので、今も人として生きている可能性があるのです。どのような些細な情報でも構いません。私達の娘、フィニスについて何か御存知の方がいらっしゃいましたら情報をお願いいたします」


大手のテレビ局はあまりに突拍子もない話故にまともにとりあうこともせず門前払いした為に小さなネット系のテレビ局での放送であったことですぐには大きな反応にはならなかった。しかしネット上ではこの異様な会見をネタ的に取り上げ、<炎上>という形で広がり始めた。


『フェイクだよ、フェイク。ありえねーだろ常識的に考えて』


『遺族の感情を逆なでして楽しーかクソテレビが!』


『でも画像解析でも完全にウォレド氏と一致したぞ』


『CGだよCG』


『手の込んだ釣りだよなw』


等々。


殆どは悪質な冗談、もしくはフェイク、または陰謀の類だと捉えたようだが、それでもごく一部には『もしかして…?』と思う人間もいたのだった。


とは言え、大勢に影響を及ぼすにはさすがに時間があまりに少なく、一斉駆除作戦のスケジュールには何の変更もなかった。


「やはり、無理でしたか……」


ベリザルトン夫妻の家で世間の反応を見ていたセルガ・ウォレドがうなだれる。妻のネリスは夫に寄り添い、ハンカチを目頭に当てていた。


「いえ、これは想定の範囲内です。いきなり世間の感覚をひっくり返すことまでは私も考えていません。しかし一石を投じることはできた筈です。これをきっかけにブロブに対する認識を改める人が増えて行けばそれでいいのです」


セルガとネリスの前に座ったマリアンが二人に声を掛ける。


そんなマリアンの脇に立ったベルカが口を開いた。


「しかし、お二人の娘さんがブロブの中にいなかったというのはどういうこと? 本当にブロブと同化せずに生きてるってこと?」


だがそれについてはマリアンも歯切れが悪い。


「そうね。あの事件の後での捜索でも発見されずにというのはすごく考えにくいことだけれど、ブロブの中にいないということなら、あるいは……」



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