愕然
『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる……』
グレネードマシンガンの手入れをしながらも、フィの頭の中にはそんな思考が渦巻いていた。いよいよ誰憚ることなくブロブを殺しまくれるようになるという事実に、彼女はたまらない高揚感を覚えていた。
だがその時、手持ち無沙汰にテレビを見ていたシェリルが「えっ!?」と声を上げた。
「―――――!?」
何事かとそちらに視線を向けたフィの目も、大きく見開かれてテレビの画面に釘付けとなった。そんな彼女に振り返ったシェリルが慌てたように声を掛ける。
「フィさん! 第一次開拓団のウォレド氏って言ったら、あの事件で亡くなった人ですよね!?」
言われるまでもない。今、テレビの画面に映っている人物は、セルガ・ウォレド。第一次開拓団の責任者の一人にして、最初の犠牲者の一人でもある。それがテレビに出ているのだ。しかも、生放送で。
「……」
フィはシェリルの言葉も耳に入らないかのように、ただテレビの画面を呆然と見詰めていた。その前で、<セルガ・ウォレドによる緊急の記者会見>が始まった。
それは、小さな町のネット系のテレビ局からの配信であったが、見ようと思えばファバロフ全土はおろか他の植民惑星からでも見ることはできた。ネットワークを通じての配信だからだった。
「…今、この番組をご覧になってらっしゃる方の中には、これを悪趣味な茶番だとみる方もいらっしゃるかと思います。ですが、私は、確かに今、ここに存在しています。
私の名は、セルガ・ウォレド。惑星ファバロフ第一次開拓団の責任者の一人にして、あの惨禍によって命を落としたセルガ・ウォレドであります。そして私の隣にいるのは、妻のネリス・ウォレドです」
セルガ・ウォレドがそう言って手を向けるとカメラが切り替わり、セルガとその隣に座っていた女性の姿が同時に映し出された。その瞬間、フィが、手にしていたグレネードマシンガンの部品を床に落とす。
「……あ、…あぁ……」
声にならない声がマスクの奥から漏れ、彼女の両目からは涙が溢れていた。
「私も妻も、実はあの事件で命を落としたとされてきました。でも事実はそうではなかったのです。ご覧ください」
と言いながらセルガは、今度は着ていた服の袖を捲り上げていた。妻のネリスも同じように袖を捲り上げる。するとそこには、まるで氷の彫刻か、透明なプラスティックの模型のような、透明な腕が現れたのだった。手首の途中までしか、肌の色がついていない。
「見ての通り、私達の体は今、あなた方が<ブロブ>と呼ぶ生物によってできています」
「っっ!?」
その映像を目にし、言葉を耳にしたフィの全身に、ゾワッとした何かが奔り抜けるのが見えるかのようであった。




