再会
ベルカの運転するワゴンで、一時間ほどでベリザルトン夫妻の家に戻ったマリアンは、「何度もすいません」と深々と頭を下げながらも、改めて夫妻の目を真っ直ぐに見詰めながら言った。
「実は、お二人に、ブロブに会っていただきたいのです」
単刀直入なその言葉に、さすがに夫妻の顔にもギョッとした驚きがよぎった。灯りを背にしているからはっきりとは分からないが、顔色は青褪めているだろうと簡単に推測できる表情だった。
その時、マリアンの言葉を耳にしたキリアが、夫妻の後ろから歩み出てきた。
「ブロブ…!?」
と声を上げた彼女の表情は、夫妻とは正反対に明らかに気持ちが昂っているそれだった。以前からブロブに興味を持っていたキリアは、『ブロブに会える』と思うと興奮が抑えられなかったのである。
逆にイリオは、ずっとブロブと一緒に暮らしてきたから、平然と家の中で待っていた。
時間にすれば二十秒と経っていなかっただろうが、唇を固く結んだカール・ベリザルトンは、自分を何とも言えない表情で見詰める妻に向かって、黙って頷いていた。静かではあったが、二人の中で様々な感情や思考が渦巻いていたのが伺える姿だった。
そして、何かを決心したように強い意志を感じさせる表情を見せたカール・ベリザルトンが、ゆっくりと口を開いた。
「分かりました。会いましょう……」
そう決断するまでにどれほどの葛藤があったのかは、二人にしか分からないだろう。しかし夫妻が出した結論は、『ブロブに会う』だった。その決断に、ベルカも心の中で驚嘆していた。
『この二人は、本当に強い人だ……二人に比べれば、私なんてまだまだ赤ん坊みたいなものって気がする……』
それは、マリアンにとっても同じだった。
『この二人に引き合わせてくれたベルカには、感謝するしかないわね』
そんなことを考えながらも、マリアンはワゴンのリアハッチを開き、「おいで」と中に声を掛けた。それに従って荷台から降りてきたそれを見た時の夫妻の驚きを、どう表現すればいいのか。
二人の視線の先に現れたのは、少し大きすぎる服を纏って、帽子を被ってはいるが、まぎれもなく最愛の娘、イレーナだった。何故か透明だった筈の顔には肌の色が付き、ちゃんと人間に見える姿だった。
「イレーナ……イレーナなのか……?」
うわごとのようにカールの口から漏れるそれに、イレーナははっきりと頷いた。
「ただいま、お父さん、お母さん……」
その声も言葉のイントネーションも話し方も、間違いなくイレーナだった。それを耳にした瞬間、夫妻の目からは涙が溢れ、あまりのことに震える足で娘に近付き、そして二人で抱き締めたのであった。
「ああ……イレーナ、イレーナぁ……!」




