駆除業者
最初期に入植した人間達には、身内をブロブに殺されたという人間は決して少なくない。だから激しくブロブを憎んでいる人間も多い。
だが、ここ数年で入植した人間達にとってブロブは単なる危険な猛獣と大差ない存在という認識だっただろう。被害は出ていてもそれらは殆どがわざわざ自分からブロブに近付いて行って襲われた事例である。自治政府の支援を受けずに開拓して作られた集落などでブロブに襲われる事例があったとしても、世間的には<自己責任>という認識だっただろう。実際、自治政府の支援を受けて爆砕槽が設置された塀に囲まれた都市や町でのブロブの被害は、既に数えるほどしかなかった。
なので、身内をブロブに襲われたという人間の比率自体が下がってきているのだ。ブロブを保護していた動物保護施設が、ブロブを憎む暴徒に襲撃されてそこの管理者が殺されるという事件もあったりしたが、そこはたまたま、最初期から入植していた人間達が多い町だったからそうなってしまったという一面もある。不幸な偶然が重なってしまった不運な事件だったとも言えるだろう。
「私の兄は、今のウォレド市の基になった開拓団が開墾した場所でのブロブの襲撃について捜索に当たる筈だった部隊に所属してたの……でも、兄の部隊が警護していた開拓団がブロブの襲撃を受けて引き返して戦闘になった時に……」
シェリルの説明を、黒尽くめの女性は黙って聞いていた。既に不穏な気配はかなり収まっていた。そして、
「そう……あの部隊の……」
と、女性は呟いた。そこからは、どこか懐かしむような気配さえ感じられた。
だからシェリルもつい尋ねてしまった。
「もしかしてあなたも、あの時に家族を……?」
「…そう…ね。そういうことになるかな……」
微妙に持って回った言い回しに若干の違和感も覚えつつ、同じような境遇だと知ってシェリルはホッとしていた。同じ犠牲者の遺族という立場であれば対立する理由もない筈だ。
「あなたは、もしかしてブロブハンター? 復讐の為にブロブを狩ってたりするの?」
女性の、どう見ても普通とは思えない風体に、一番当てはまりそうなものを当てはめて問い掛けてみた。
「まあね。どっちかと言えば<駆除業者>ってことになるかもしれない……」
<駆除業者>。その言葉を聞いたシェリルがハッとなる。
『そうよ…! 私、何考えてたんだろ…!? 別に軍人じゃなくてもブロブに復讐できるじゃない……!』
そんな考えが頭に閃いて、自分がどれ程の視野狭窄に陥っていたのかを自覚してしまったのだった。




