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プロローグ3

「なんか新人がお前に見てもらいたいものがあるって」

 あのヤロウ俺が電話かけた先に回りやがったか。

 編集様からの頼みなら断れないのが下請けの作家の辛いところ。売れているから、もうちっと偉そうな態度も取れると思うが、普段から偉そうなのに偉そうな態度取ったら人脈崩壊の危機だろう。

 旅行に行きたいっていう意思は伝えたからな。これも仕事のうちと思っていっちょもんでやるか。

 メールで送られてきたデータを見る。

「こりゃひでぇ」

 文章くらいは直せと言われたから直しているのだろうが、こいつの場合、文章の問題じゃない。

 基本は滅茶苦茶でこれが海のものか山のものかもわからないような状態。

「悪いところだらけで、どこからけなしていいかわからん」

 最初の十行くらいで、一時間は説教をできるだろう。


 まずはここから攻める。

「モンスターが敵っていうのが古い。今の時代、モンスターてのは人間に飼われて好きに使われてる存在だぞ」

 頭の固い人間はこういわれたら思考が停止するだろう。

 ちょっと考えればデカいタイトルがあると思いつくはずだ。

「なんだよそれは! そんなもんあるのか!」

 ちょっとは考えろ。

「ポケモン」

 頭を抱えた俺は言う。モンスターが仲間になるという発想はドラクエⅤからだったと記憶している。

 それ以降、モンスターを操って戦うゲームが増えていき、創作物でも、主人公がドラゴンを乗りこなすのは見慣れた事になっていった。

「その考えこそ古くないか?」

 ぬかしおるなこいつ。

 では言ってやろう。

「お前が言えたことじゃないだろう。タダのオークとタダのゴブリンが出て来てタダ倒されるだけなんて、古い以前に何がしたいのかわからん。タダのオークを出すなら主人公がボロ負けするとか、そうでなくても仲間全員で死力を尽くして何とか勝利とか、そういう刺激のある展開が欲しい。

 モンスターを仲間にしないなら、オリジナルのモンスターを考えろ。存在自体がネタになるくらいのな。

 このすばとかいい例だ。モンスターの設定自体がネタの塊だからな」

「俺の作品はそういうものじゃない」

「ギャグを入れたら、お前の作品は根本から崩れるのか?」

 これを聞くと大抵言葉に詰まる。

 根本から崩れるかどうかではなく、そもそもこいつの作品には根本がないのだ。

 これは読者を泣かせる話ですよとか、熱くさせる話ですよとか、恐怖でゾクゾクさせる話ですよとか、そういう根本の部分を、こいつはまず決めていない。

 だが言ってやる義理はない。こういう質問をすると思考が停止して、大抵根拠もないのにこういいだす。

「崩れる」

 はい。言った。

「ならいいけど。

 オリジナルのモンスターで俺がいいと思うアイデアは進撃の巨人の巨人だな。ギャグなしでいくならあれくらい特化したインパクトが欲しい。あれくらいのもの考えてくれ」

「待てよ」

「方向は決まったろ? アイデアなんて考え続ければいずれ出てくるんだ。時間をかけてじっくり考えるといい」

 そうは言うが、そもそのこいつの作品には軸がない。アイデアを活かす事はできないと断言する。

 万が一……億が一にでもこいつが、いいアイデアを思いついたら、買い取ってもいい。

 数万で十分。

 もともとアイデアだけでは金にならんし、アイデアなんて、一番ポンポンと湧いてくるものだ。元々人から買わないといけないほど困っている作家はいない。

 困っていないというのと、連載に足るアイデアが作れるって事はイコールではないけどね。

 だから俺のような小説家がマンガ家に絵を描いてもらってコバン鮫ができるのである。

 しかも俺の名が上がって最近コバン鮫のほうがいっぱい食うようになってきたし。

 まったく笑いが止まらん。

「俺たちが組むんだぞ。俺が考えていたら、あんたがいる意味ないだろう?」

 何言ってんだこいつ?

「作家はなぁ。誰とでも組めるコミュ力が必要なもんだっていうじゃないか」

 お前の方からいう事じゃないよね。

 それは確かにそうだが、組んだら稼げる相手ってのが大前提にあるんだがな。

 まあ、俺の場合は有名になりすぎたくないとか、人脈を広げたいとか、いろんな理由で相手を選んでいるから、一概にそうは言えない。

 目先の利益にとらわれていては金は手に入らぬのだよ。

 とにかく大手はいかん。今ですらメンドクセェ奴がやってくる。

 俺の家に来るなりいきなり金をくれとか言ってくる小動物のような奴もいるからな。

 もう週刊誌で連載でもしたらアウト。

 月刊誌なら周りの評価は「んな雑誌聞いた事ねー」であるが週刊誌となれば「なんだって! あの雑誌!?」ってなってしまう。

 月刊誌でも稼げるところはある。

 マンガ以外のもので稼ぐ方法をよく知っているところとかがねらい目である。

 まあ、それでも週刊誌で大ヒットだすのが一番であるには変わりない。一番どころかケタが違う。

 だがそもそも大ヒットなんて飛ばせるのか? っていうのをみんな考えないんだよこれ。

 週刊誌は失敗したらアホ作家の烙印を押されてしまう事になる諸刃の件だ。ネットでつまんないの烙印を押された作家がいくらかいるからな。イメージ回復なんてそうそうできぬ。

 金を稼ぐのが一番だが、もちろん小説を書くのが好きなので長く続けられるというのも第二目標に入る。

 週刊誌はワリに合わなそうであるのだ。

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