プロローグ2
『はい』
電話をかけると聞きなれない声が聞こえてきた。電話番のおばちゃんの声じゃない。
「あの。そちら編集部でよろしいですか?」
なんにせよ、始めての人のようなので余計な事を言わないでおこう。
『そうです』
そうですじゃねぇだろ。お電話ありがとうございます。編集部の田中ですって言って出たぞ。あのおばちゃんは……
まあいい。担当の鈴木君にかわってもらおう。
「私そちらでお世話になっております作家の岩戸です。鈴木さんに連絡がありますので代わっていただけますか?」
「ああ。あの金の亡者と噂になっている」
なんだこいつ……?
そりゃ言われているが、面と向かって言ってくる奴はこいつが初めてだぞ。
「あんたの小説には足りないものがあると思うんだよ。俺が教えてやろうか?」
ホントなんだこいつ?
聞いてもいないのに語り始めやがった。
俺の作品に足りないものがあるのは分かっている。
つうか、全ての要素を入れるなんて不可能だしあえて捨てている部分もある。そういう意味で足りない部分はあえて作っているという感じだ。
「やっぱり仲間とか助け合いとかの大切さを書いて、心温まる作品をあんたは知らないんだよな」
あー。俺が一番捨てている部分だ。
俺の作品は主人公が困った時は自力で解決する事を考えるからな。
ライバルがやってきて「お前を倒すのは俺だ。こいつの相手は俺がしてやる」なんて展開は俺の作品ではありえない。
「まあ、そういうものが見たければ他の作家で見てくれよ」
「待てよ。あんたは腕はあるんだから覚えればずっと良くなる。俺が教えてやる」
何言ってんだこいつ?
「まあ、教えてもらいたくなったら言うさ。とりあえず電話を替わってください」
正直これ以上会話したくないんだが。
「つうか電話番なんてバイトかなんかじゃないの? 作品を作るのは社員に任せなよ」
「俺はちょっと前に入社したんだ。コネクションというものがあってね」
コネクションってものを俺が知らないって思ってんのこいつ?
つうかこいつ社員なの? 社員が電話番をしているなんてふつう恥ずかしい事なのに、よく臆面もなく言えるね。
「自分の仕事に専念しなよ。仕事として電話を替わってくれ」
「なあ。俺と一緒に連載をしないか?」
「聞いてくれない? 君?」
「答えるまで電話代わらないぞ! さあいえ!」
俺は無言で電話を切った。
仕事の連絡を本人の電話にするなんて本当はよくないんだが、個人の携帯番号知っているんだよね。