運命だった
最終回まとめたかったのですが、逆に変な感じになってしまいました
おまけのような気分で読んで下さい
沙希がいなくなって一週間が経った。
俺はしばらく抜け殻のように何もできず、何も考えらずにいた。
沙希の心臓が止まって、俺はその場にへたりこんでしまった。
坂上が何か俺に語り掛けていたが、何を言われたのか覚えていない。
それから俺は加藤に連れられて家に帰った。
そこからは何もできずに三日が経った。
三日後に沙希の母親が訪ねてきた。
母親は俺とは違い晴れやかな顔をしていた。
はじめは娘を亡くしたのにどうしてこんな顔をしていられるのか不思議でならなかった。
しかし母親は俺に確かに言ったのだ。
「沙希の人生を晴れやかにしたのはあなたです。あたしは沙希のあんなにも楽しそうな姿を見られただけで満足です。
あなたがいなければ沙希は何も得られず、何も感じられないまま悲しみに満ちて終わりを迎えたと思います。
でも、あなたのおかげであたしもあの子も満足できました。ありがとうございます」
俺は沙希に何をしてやれただろうか。
俺は沙希を動揺させ、沙希の寿命を短くした。
それなのにどうしてこのように言われるのか、不思議でならなかった。
それから四日が経ち、今日に至る。
携帯に加藤からの着信があった。
五回ほどかかってきたので、ただ事ではないと思いようやく電話に出た。
<滝沢さん、出頭してきました。神田を殺した犯人が、沙希ちゃんの叔父に当たる人物が出頭してきました>
犯人が出頭した。
全てが終わったのだ。
神田を殺した犯人は罪を認めた。
俺は一体何をしていたのだろうか。
俺は家を飛び出した。
何処に行くとも決めていなかったが、俺の足は自然とある場所へと向かっていた。
「坂上幸一はいらっしゃいますか」
病院の受付で俺は卑怯にも警察手帳を示しながら看護婦に言った。
看護婦は慌てたように内線を繋いだ。
数十分して坂上がロビーに現れた。
「お待ちしていました」
坂上はそう言うと庭へと向かった。
今回の全ての始まりとなった場所へと向かった。
「出頭してきましたよ」
「そうですか」
坂上は俺の顔を見ずに静かに呟いた。
「俺がここに来る意味はなかったんだな。沙希ちゃんに出会う必要はなかったんだな」
俺が呟くと、坂上は近づいてきて俺の肩をがっしりと掴んだ。
「それは違います。確かに今回出会ったばかりのあなたにとっては辛いことかもしれません。
でも、沙希ちゃんを含めあなた以外の誰もがあなたが来てくれて良かったと思っているのです。
だから、沙希ちゃんと出会ったことを失敗のように言わないでください。
沙希ちゃんと出会ったことを、沙希ちゃんとの日々をもっと大切に思ってください」
坂上は俺を窘めると言うよりは、懇願するように言ってきた。
沙希と出会ったこと。
俺は沙希と出会えて本当にうれしかった。
沙希は最期、俺に・・・。
俺は沙希がいなくなってから一度も流さなかった涙を流した。
今まで沙希がいなくなった事実にばかり動揺していて、沙希が自分の中でどのような存在でいたか考えられなかった。
沙希は俺にとってかけがえのない存在だ。
たった数日の出会いだったが、何十年も共に過ごした者よりもかけがえのない存在だ。
たった一人の小さな少女と、たった数日の出会い。
事件が呼び寄せた輝かしい出会い。
運命は本当にある。
沙希、生まれ変わってまた出会えたのなら今度はもっと長く永遠に俺の傍にいてくれ。




