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眠り

「昏睡状態?」



先程まで元気だった沙希が何故・・・。


俺は沙希が起き上がってからのことを考えていた。


はじめは虚ろな目をしていたが、俺を絵を描くにつれ次第にいつもの笑顔を取り戻していった。


そして最期は・・・。



「こんしんの力だったというわけか」



沙希があんなことをするはずがない。



最期の別れを沙希は悟っていたのだろうか。



「沙希ちゃん」



俺はいたたまれずに沙希の元に歩み寄った。


坂上は驚いたような、困ったような顔をしていたが、止めようとはしなかった。



「沙希ちゃん」



沙希はやはり目を開けてくれない。

笑ってくれない。



見ると沙希の腕の中には俺の描いた絵がぎゅっと抱きしめられていた。


まだ息があるのは確からしい。



「沙希ちゃん」



俺はもう一度呼びかけた。


いつものように笑顔で名を呼んでくれると信じて俺は何度も名を叫んだ。



そのうちに先程の看護婦が戻ってきて、坂上が沙希に何やら処置を始めた。


俺は一歩下がってその光景を見つめていた。



今は坂上にかけている。


坂上ならばもう一度沙希の笑顔を見せてくれると信じている。



「沙希ちゃん」



俺は祈るように両手を握りしめた。



「たき、ざわさん」



微かな声が俺の鼓膜を震わせた。


一瞬幻聴でも聞こえたのかと思ったが、目を向ければそこには力なく笑っている沙希の姿があった。


「沙希ちゃん」



「たきざわさん」



沙希はもう一度掠れそうな声で俺の名を呼んだ。



「あのね、本当はね。犯人ね。叔父さんなの」



沙希ははっきりとそう告げた。


悲しげに瞳を震わせているのがわかる。


俺は激しくうなずいた。



「わかった、ありがとう」



俺は沙希の傍に顔を寄せた。



「君と過ごせて本当に良かった。ありがとう」



俺は涙がこぼれないように精いっぱいの笑顔を向けた。



「あたしも」



沙希はいつもの顔いっぱいに広がる笑顔を向けてくれた。



そして、ゆっくりと目を閉じた。



俺の描いた絵がぱらぱらとベッドの下に落ちた。



「沙希、ちゃん?」



坂上が慌てたように駆け寄った。

脈拍を見たり、瞳孔を確認したり、何やら沙希に色々と手を施している。


俺はそれを遠くに見つめながら

沙希が落とした絵を見つめていた。



先程描いていた時の沙希の笑顔が蘇ってくる。


楽しげな表情。



しかし沙希は・・・。



少しして坂上はゆっくりと沙希から離れた。



時計を見ながらゆっくりと坂上の唇が動いた。



「午前十時五分、心肺停止」



そんな機械などこの場にはないのに、テレビでよく聞く心臓が止まったことを告げる機械音が耳の奥で聞こえた。



沙希はもう動かない。

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