7話
GW一日目。俺達は部長様のお呼び出しで全員部室に集まっていた。一体何が始まるんだか。
「結局、みんな予定あわせてくれたのに私が熱だしていけなくなってごめんね!」
美花は自分の顔の前で手を合わせて、座りながらだがお辞儀をした。
まあ、美花が言うように、予定となっていた日の前日になんと美花自身が熱を出してしまい、前日のうちに行くのは中止になってしまったのだ。ほんとあの時の看病は苦労したよ…。美奈がいてくれたから色々助かったけど…。
「大丈夫っすよ!気にしちゃいけない!」
それに対してなぜか男っ気がある言葉を返す琴美。
「ありがとう琴美!」
そういって顔を上げる美花。
「………。」
本を読み、完全スルーの香奈枝とニコニコしている冬香ちゃん。
ほんと、個性的なメンツばっかりの部活だな…ここ。
「それでなんだけどさ、みんな明日は暇?」
「暇っすよ!」
元気に返す琴美。
「暇。」
本を読みながら素っ気無く返す香奈枝。
「暇だよ~。」
ほんわかとしながら返す冬香ちゃん。
明日…か。なるほどね。今ここでみんなに確認をとって、行く場所を決めちゃおうってオチか。
「それじゃあ、みんな大丈夫ってことね!それなら明日、どこに行きたい?」
「北海道!」
元気に手をあげ、目を輝かせて琴美がそんな無茶なことをいってきたので、ここは俺がつっこむことにする。
「なんで北海道なんかいきたいんだよっ!?費用考えろよ!」
「いや、部費でどうにかなるだろ。」
「いや、こんなんで部費出せるかっての!ってかその前にこの部活には部費まだおりねえし。」
「なんで!?一応、部として認められたんじゃないのかよ!?」
琴美が両手を机の上に叩きつけ、体を俺のほうに向け前のめりになりながら質問してきた。
説明するのはちょっと難しいんだよな…。ここは話し逸らしとくか。
「それよりもだ。北海道なんか無理だ。なあ、美花?」
「え、あ、うん。」
いきなりふられた美花は驚いた顔でうなずいた。
「えー!部長がだめっていうなら…うーん。しょうがないあきらめるか。」
そんなことで諦めるんだ!?美花の権限は強いんだな…。
「北海道はさすがに無理があると思うんだよね…。だからごめんね琴美!」
「いやいや、しょうがないっすよ。よくよく考えれば無茶でしたしね。」
ちょっとしょぼくれてしまっているが、自分がいった言葉が無茶だったってことに気がついてくれたみたいだ。
「そういえば、香奈枝ちゃんとか、冬香ちゃんはなんかないの?」
「私は特には…。」
っと本をから顔をあげ、美花の顔を見て答える香奈枝。
「私は…。ゆっくりできるところに行きたいですね~。」
いつものようにほんわかとした口調で自分の要望を言う冬香ちゃん。
ゆっくりできる場所…か。どこがあるかな。
「なるほど、なるほど。ゆっくりできる場所ねえ…。」
美花はうなずいた後に、俯いて考え始めてしまった。
「ちょっといいですか?」
手をあげる琴美。
「また変なこというなよ?」
「今度は真面目だって!」
こっちを見ながらむきになってそう琴美が言ってきた。
「ほお。そこまで言うんなら聞こうじゃないか。」
琴美が真面目に考えたことか。これは気になるな。
「田舎に行こう!」
「…。ごめん期待した俺が馬鹿だったわ。」
はあ…。ここまで琴美がばかだったとは。もう期待しないようにしようかな。
「なんで!?田舎静かじゃん!ゆっくりできるじゃん!」
「あーはいはい。静かにしましょうねー。」
「ひどっ!」
琴美はかなり自信があったのだろう。その分却下されて、すごく落ち込んでしまった。
さすがにもうちょっと聞いてあげればよかったかな。
「ちょっとまって。」
っと美花が悩んでいるような顔をしながら言ってきた。
「どうした?」
「いや、さっきの琴美の案いいかもしれない。」
「…え?」
俺は思わず聞き返してしまった。
「いや、だから。さっきの琴美の案いいかもしれないって言ったの!」
「は?」
「まじっすか!?」
俺はぽかーんっと口が開いたままになってしまった。あわてて口を閉じる。琴美のほうを見ると、目が思いっきり輝いている…。まあ、いきなりの助け舟だしな。そりゃそうなるわな。
「あ、さっきの案は私も賛成だわ。」
っとここでいきなり香奈枝も賛成派として立候補してきた。
「なんでだよっ!田舎いってなにすんだよ!」
どうやら、今のところ俺だけが反対派らしい。なんでみんな田舎がいいんだよ。
「いや、だって…ねえ?冬香ちゃんのこと考えたらゆっくりしたいじゃない?」
「あ、そういうことでしたら~。私、別荘もってるんでそこに行きますか~?」
「「「「え?」」」」
俺を含めて四人とも冬香ちゃんの言ってることのわけがわからなかった。
「あ、いや。私の親が別荘もってましてね~。そこを二日間だけ貸してもらうことができると思うんですよ~。多分ですけど。」
「も、もしかして。冬香ちゃんってお嬢様?」
「え、そうですよ~?美花ちゃんに前話したと思うんだけど…?」
「え、あ、ああー!あれ本当だったの!?あの時嘘だとおもってスルーしてた!」
「ひどいな~。それじゃあ、そういうことでいい~?」
「うん。」
美花は返事できたが、俺を含め三人は声を出さずにうなずくだけだった。
「それじゃあ、交渉してくるね~。」
そういって部室の外にいってしまった。
遠くにいったのを見計らって、俺は美花に質問することにした。
「お、お前あんな子をうちの部活にいれちゃったのかよ!?」
「い、いや。お嬢様だって知らなかったんだもん。それに誘ったのはたまたま席が近くて話したら仲良くなっちゃったからってだけだし…。」
「な、なにやってんだか…。」
「ま、まぁいいじゃない!これで場所決まったようなもんだし!」
「まあ、大丈夫だったらだけどな。」
この場合冬香ちゃんの交渉がうまくいけばってことになるからな。どっちに転ぶかはまだわからないに等しい。
「ちょっといい?」
香奈枝が手を上げて、そういった。
「どうしたの、香奈枝ちゃん?」
「あー、いやですね。もし仮にですよ、決まったとします。そしたらそこまでどうやっていくの?しかも場所もわかってないと思うんだけど…。」
あー、確かに言われてみればその通りだと思う。
っとここで冬香ちゃんが交渉を終えて帰ってきた。
「どうだったの?」
美花がそう問いだした。
「えーっとですね~。大丈夫でした~。」
うわー。さすがお嬢様だ…。あっさり決まってしまった。
「それはよかった。それでねさっきこんな話がでたんだけど…。」
っと美花がさっき香奈枝の言ったことを冬香ちゃんに話す。
「あ、それなら大丈夫ですよ~。」
「っというと?」
「さすがに高校生だけで別荘に行かせるのは危ないから、専属のメイドがついて行くことになったんですよ~。だから別荘に行くときも車が出るので大丈夫です~。」
こ、これは唖然ですわ…。なんもいえねえ。
「そ、そう。それじゃあ荷物とかはどうすればいいの?」
美花も動揺を抑えきれないのか、噛んでしまっている。
「それは夜みんなに伝えますよ~。」
その後、連絡事は全て夜にするということで、今日の部活は解散となった。
こんな感じに俺たちのGWの行く場所が決まってしまったのであった。…大丈夫かな?