18話
次の日の朝。あの後どっかのライトノベルのようなラッキースケベなどなく、ただ普通にいつも家にいるような感じに美花に起こされる。
「おはよう、玲。もうみんな下にいるから早めに着替えて降りてきてね」
とっくにパジャマから普段着に着替えていた美花はそう言って、部屋を出て階段を降りて行った。
ん…まてよ?もしかして美花はこの部屋で着替えていたのか?…くそおおおおおお…ちゃんと起きて寝たふりをしておけば…。ま、まあしゃーないか…過ぎたことは気にしてはいけないと思うんだ、うん。ちゃちゃっと着替えよう。
俺は普段着に着替え階段を降りていくと、下に琴美がいた。
「おはよう琴美。昨日は風邪ひかなかったか?」
「おはよう。まあね、そういや昨日の話に関してだけど、また今度ゆっくり話合おっか」
「そうだな。俺も琴美に聞きたいことは山ほどあるから、今度ゆっくり邪魔が入らなさそうなところで話そう」
「うん。それじゃあ、また」
「おう」
俺と琴美はそこで別れ、俺は洗面台へと向かった。
洗面台で顔を洗った後、暖簾をくぐってテーブルへ向かうともうみんな席についていて、完全に俺待ちの状態だった。
「悪い、待たせちゃったかな」
「いえいえ、さっきみんな集まったところですしそれに…」
っといって冬香ちゃんは台所の方を指差す。その方向を見ると丁度メイドさんが朝食を運んでくるのが見えた。
「丁度ご飯の支度もできたみたいですし、タイミングよかったですよ」
「そっかそれならよかった」
メイドさんがご飯を運び終わり、美花がみんなに声をかける。
「それじゃあ、食べましょっか。いただきまーす」
「「「「いただきます」」」」
それと同時にみんな一斉に食べ始めた。
それからしばらくして、みんなが食べ終わったころに美花が提案する。
「今日は各々荷物をまとめた後車に乗り、アウトレットモールにでも行きましょうか。そこで色々と回って買い物とかしながら各家庭それぞれのお土産とか買ったりして、夕方には帰宅できるようにする形でどう?」
「それでいいと思います~」
「うん」
「いいと思うぜ!」
女子達が各々反応を見せる。
それを確認してから美花はこっちを見て問いかけてくる。
「で、玲は?」
「もちろんOKさ」
美花は俺の返事を聞いてうなづいてから正面を向きなおす
「それじゃあ、そういうことで決まり!これから各々部屋に戻って帰り支度えおすること。忘れ物には注意してねー。集合時間は…多めにとって1時間後でどう?」
この美花の問いかけみんなうなづく。
「うん!それじゃあそういうことで…。ごちそうさまでした!」
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
そしてみんなそれぞれ同じ部屋の人たち同士で会話しながら部屋へと戻っていく。その流れで俺と美花も自然と横並びに歩きながら部屋へと戻る。
歩き始めたところで俺はふと思い出したように美花に話しかける。
「そういえば、昨日琴美と何話してたの?」
「あー、あの後?うーんまあ、女の子同士の少しだけ大事な話…かな」
「ふーんそっか」
「あれ、詮索しないんだ」
「うーん。もちろん気にはなるけど、あんまり聞かない方がいいかなーってね」
「そっか。それじゃあ気になる玲に少しだけ教えてあげるよ」
「お、なんだ?」
「まあ、部屋についてからのお楽しみってことで」
「はあ?もうつくから別に今でもよくないか?」
「まあまあ、そう焦らなくてもー」
「ふーむ…。まあそういうなら…」
俺は仕方なくという感じに答える。ちょっと気になるけど、それならそれで仕方ないのかなって思い、そのあとは黙っていた。
その後、部屋についても美花は教えようとはしてくれなかった。俺が何度聞こうとしても、『片付けが終わってからねー』っとしか言われず、片付けを始めてから二人ともその会話以外話しをせず、黙々と片付けだけをしていた。
片付けも終わりかけの頃、美花が俺の肩を叩いてきた。
「玲」
「ん?どうした?」
俺は振り返って美花の方を見る。
「これ覚えてたりする?」
美花が見せてきたのは見覚えのない写真だっ…
「っ!」
「玲!?大丈夫?」
俺は瞬間的に目を瞑ってしまう。
「いや、大丈夫…。一瞬頭が痛くなっただけだから…」
「そう、それならよかった」
美花には頭が痛くなったとだけ言ったけど、本当はそれだけではなかった。一瞬だけだが、目を瞑ったときにどこか懐かしい光景が目の前に広がった。ただその光景がいつの記憶なのかもわからないし、それになんとなく自分の記憶のようなそうじゃないような曖昧な感じな光景だった。
どこかで見た。ただそれだけが今の俺には残っていた。
とりあえず美花にはこのことを伝えないようにはぐらかすことにした。
「まったく記憶にないけど…。それがどうかしたん?」
「うーん覚えてないか…そっか…。なんでもないよ、ちょっとした確認みたいなもんだからさ」
「お、おう…。それで少しだけ教えてあげるってやつはなんだったんだ?」
「あーそれね、ちょっとした昔話をしてただけだよ。それとやり直し…かな」
「ん?どういうことだ?」
「これ以上は詮索禁止!ほら、忘れ物とかないかの確認して下に行くよ!もう時間ないんだし」
「おう…。わかった」
なんかよくわからなかったな…。後で琴美にでも確認してみようかな。
「あ、この話したこと琴美には話さないでね」
「お、おう」
こいつエスパーかなんかなの?俺の心でも読んでんの?って言いたくなったわ。
「いいわね?」
「わかった。わーかったから。ほら、確認するぞー」
「ん」
威圧的に言ってきた美花であったが、俺が観念したかのような言い方をしたら納得したのか、最後の確認をし始めた。
そんなに琴美に確認されるのが嫌なのか…。というか昨日の琴美の件といい過去の俺になんかあったのだろうか…。全くもって思い出せん。
とりあえず今は忘れ物の確認をしてしまおう。このことはきっとまた後で教えてくれるさ、きっと。
その後俺と美花は最終チェックを済ませ、忘れ物がないことを確認して、下へと降りる。そこにはもうみんなが荷物を持って待っていた。
「ごめん!待たせちゃったわね!」
「大丈夫ですよ!みんなさっき来たばっかだったし!」
美花の発言に琴美が元気よく答える。
あの事があって少しだけこの二人のことが気になるけど、みんなに、特に琴美と美花にはいつも通り接することにしよう。じゃないとまだ日はそんなに経ってないけど、俺はこのみんなでいる空気が好きだから壊したくない。今はそう…思ってる。
「それじゃあみんな揃ったことだし行きましょっか!」
美花が元気よくそう言ってみんなより一歩前に出て家を出ていき、その後を女子のみんなが追いついて、今日どこ回ろうか?とか他愛のない会話をしている。
俺はそれを見て、ああここでこうしていられるのが幸せなんだな…。っと思うのと同時に、もしかすると、昨日の琴美のことや今日の美花のことを深くまで知ってしまうと、ここが壊れてしまうのではないかという不安にも駆られた。
でも、今はそのことは忘れて今を楽しもう。そう心に決めて俺は歩き出して、家を出ることにした。