16話
大富豪による罰ゲームが終わった後、少しみんなで今日あったことの雑談などをしていた。
そして俺が部屋に置いてあった時計を見て呟く。
「もう0時回ってたのか…」
「ほんとだ!時間って経つの本当に早いんだねー」
「そうですね~。ふわぁ~…私ちょっと眠くなってきました~」
「ふわぁ…。私もちょっと…眠い」
冬香ちゃんと香奈枝はさすがにそろそろ眠気がきているみたいだった。それに対し俺はまだ眠気はきそうになかった。
そんな二人を見て美花が立ち上がる。
「よいっしょ。それじゃあもう遅いし、まだ明日もあるから今日はここでお開きにして寝ておこうか」
「そうですね~歯磨きしてこないと~」
「あ、私も行きます」
美花がそう言った後、冬香ちゃんと香奈枝は立ち上がって自分の部屋に戻るために、階段の方へ向かっていった。そしてその場には俺と美花と琴美が残った。
二人が階段を上って行ったのを見てから、美花は俺たちが座っている方に振り返って聞いてくる。
「二人はどうする?」
「んー。俺はまだそんなに眠くないけどみんなが寝るっていうなら部屋に戻ろうかな。琴美は?」
「え?うーん。二人に合わせるよ」
「そっか。ってことらしいが、美花はどうする?」
「うーん…」
そう問いかけると美花は腕を組んで少しうねりながら考え始めた。が、すぐに組んでいた腕をほどいて申し訳なさそうな顔をしながら
「ごめん、実は私も眠いんだよね…あはは」
っと、左腕を後頭部にもっていって、乾いた笑い声をもらす。
「そっか。そういうことなら歯磨きしてもう寝るか」
「そうだね、その方がうれしいかも」
そして俺と琴美は立ち上がり、美花と一緒に自室へと戻り、それぞれ寝る支度をし始めた。
はてさてどうしたものか。今、俺は寝るためにというか寝るふりをするために自室にいるのだが…。
「玲は絶対にベッドに入ってこないでよね!っというか寝てる時は境界線超えないでよね!絶対っ!!」
「いや待て待て。ベッドに入るつもりはないが、せめて毛布ぐらいはくれよ!」
「嫌!毛布これしかないし。冬香ちゃんにでも言ってもらってくれば?」
「そうか…そうすればよかったな。よし、冬香ちゃんのところに行ってもらってくるよ」
「いってらっしゃーい」
そういう美花に見送られて自室を出て、冬香ちゃんがいる部屋のところへ…。寝てしまっていては申し訳ないが、この件については俺の体調面にも影響がある。風邪をひくのは嫌だからな。
そうこうしてるうちに冬香ちゃんの部屋の前に着く。そして軽くドアをノックすると、少し経ってからドアが開き、中から冬香ちゃんが出てきた。よかった、まだ寝てなかったみたいだ。
「どうしたのですか?」
「いやさ、毛布が足らなくて」
「毛布?ベッドに置いてなかったのですか?それなら申し訳なかったです。すぐに彼女に取ってきてもらいますので少々お待ちを~」
冬香ちゃんはそう言うと振り返って部屋の中にいるであろうメイドさんを呼ぼうとする。が、しかし俺はその掛け声をかける前のを遮るように冬香ちゃんに事情を説明しようとする。
「あー、いや。ベッドにはあったんだけど…ほら、男子と女子だから一緒のベッドに入るわけにはいかないじゃん?だから俺が床で寝るつもりだったんだけど、毛布がベッドにあった一枚しかなくてさ。それでもらいに来たってわけ」
「え?一緒?二つもあるのにですか?」
「え?」
「ん?」
俺達二人は頭の上にはてなマークを三つぐらい浮かべて、困惑していた。
そんな状況の中先に言葉を発したのは冬香ちゃんからだった。
「もしかして、ベッドが一つしかないってことですか?」
「あ、ああ。そうだけど」
「えーっと…あれ?おかしいですね~二つあるはずなんですけど~」
「ちょっと中確認させてもらってもいい?」
「どうぞ~。あ、ちらかっているのでやっぱりだめです~!」
「え、あ、うん。ごめん」
俺は確認したいという気持ちだけが先走って、冬香ちゃんのことを考えていなかった。
そして二人の間には気まずい雰囲気が漂い、数秒間沈黙の時間が続いた。俺はさすがに耐えられなくなって、早くこの場から去りたいと思い、冬香ちゃんに一言だけ残してその場を去ることにした。
「そういうことなら琴美のところの部屋にもいって確認してくるよ。その間にでも毛布を部屋に置いといてくれると助かる」
「あ、うん。今準備させておくね」
「それじゃ」
そういって、俺はその場から立ち去った。
そして冬香ちゃんの申し訳なさそうな顔が頭の中に残る。悪かったのはデリカシーのなかった俺なのにそんな顔するなよ。っと言ってやりたかったがなぜかその言葉は俺の口から発せられることはなかった。そんな自分にすごく腹が立った。
毛布が手配される約束はしたので、琴美達の部屋にはいかなかった。ただ俺が部屋にいるのもおかしいかなっと感じ、ちょっとだけ外に出ることにした。それとなんとなく散歩したかったっというのもあった。
「す、すげえ…」
靴を履き外に出て空を見上げると満天の星空が広がっていた。地元とかで見上げた時とは違って、すごく間近に、しかも手が星に届きそうっと思えるぐらいに近くに感じた。
「……い!…れ……い!」
「ん…?」
俺が夜空を見上げて感動しているところに、後ろから誰かに肩を叩かれた。
そして振り返るとそこには少しだけ顔を膨らまして怒り顔の琴美がいた。
「お、おお、琴美。どうしたんだ?」
「どうしたんだ?じゃなくてだな、さっきから呼んでたんだが」
「おっとわりい、あまりにも星が綺麗でな」
「そうだね。ほんとここの星空は綺麗だよ。…と……にね…」
最後の方が途切れ途切れにしか聞こえなかったが、まあ気にしないでおこう。
しばらくの間立ちながら二人で星を眺めていたのだが、琴美の「その辺に座ろっか」の一声で、近くにあった石段に並んで座ることにした。
そしてまた無言のまま星空を眺めていると、琴美から話しかけてきた。
「あのさ、お風呂に入る前に話があるって言ったじゃん?」
「ああ、そうだな」
「その話さ、今ここでしちゃってもいいかな」
「ああ、別に構わないぞ」
あの時から今まで、このことが気になっていて頭の隅から離れなかった。それに、あの去り際を見てしまったから、なにか重要な話かな?まさかこくは…いやいやないない。などと一人で妄想してただなんてとてもじゃないが言えない。
そして琴美は多分星空を見ながら俺に話始めた。
「あの…さ、玲ってさ、昔ここに来た事あるでしょ?」
「え?ないけど?」
琴美のその言葉を聞いて思い出そうとしても、ここに来たことがあるっという思い出はなかった。
「そっか。やっぱりか」
「え?どういうことだ?」
「ううん。なんでもない。それじゃあさ、昔好きな子はいた?」
俺は琴美のその質問にちょっとだけ恥ずかしくなりながら答える。そのとき脳裏に浮かんでいたのは美花ではなかった。
「そ、そりゃあまあ、誰しもいたことはあるだろうよ」
「そっか。私もいたなあ、好きな人」
「琴美にもいたんだ」
「そりゃそうだよー。でもね、その子と離れ離れになっちゃったの」
「へぇー。転校しちゃったとか?」
「まあそんなところかな」
そしてほんの少し沈黙した時間が続くと、また琴美が話の続きをし始める。満天だった星空にほんの少し雲が覆いかぶさり始めた。
「その子と離れ離れになる時さ、プレゼント…もらったんだよね」
「へえ、どんなの?」
「今は持ってないから今度見せるね」
「無理に見せてもらうことないよ!機会があったらでいいからさ」
「うん。それでさ、もうちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」
「ん?なんだ?」
「玲って、昔事故にあったことあるでしょ?」
「な…」
俺は慌てて視線を星空から琴美に移すが、琴美は星空を見たままだった。
「私知ってるんだ。あの時のこと、そして…」
琴美が視線を星空から俺に移して言う。
「美花と離れ離れになってからの三年間を」