12話
移動の中の車は地獄だった。
さっきの出来事の、最後の言い合いの辺りのことを知ってしまった琴美は、『なんでそうなったの?なんで?』っとしつこく聞いてきた。そのたびに俺は『後でな』っというのだが、琴美は中々引き下がらない。そして、教えてくれないことに苛立ったのか、頭を叩いてきたところで駐車場についたため、うまく逃れることができたのだった。
車を降りると冬香ちゃんを先頭に、白糸の滝へと向かう。
その道中も琴美が横で執拗に聞いてくるのだが、そのたびにうまくはぐらかそうとするだけで精一杯だった。ってか、なんで俺ばっかりで美花には聞かねえんだよ…おい。
そんなやりとりをしているうちに白糸の滝への入り口についた。
「それじゃあ、ここからこの道を歩いて、白糸の滝へと向かいま~す」
その冬香ちゃんの掛け声に続いて、みんなが後ろをついていく。
この道は山道なのだろうか、周りに木々が生い茂っていて、どこからか涼しい風が吹き抜けていく。それに駐車場のところよりも涼しいような…。
そして、脇を流れる川?みたいなのもすごく綺麗で自然を感じる。
「玲、すごいね…」
物思いにふけっていると、不意に隣から美花の声が聞こえる。
「ああ、こんなに自然を感じられるだなんてな…」
いつの間にか隣が琴美から美花に変わっていた。そして前では琴美と香奈枝が楽しそうに話していて、さらにその前ではメイドさんと冬香ちゃんが並んで歩いていた。
「そういえばさ、ありがとね」
「え、何が?」
俺はなんで美花が俺に対して感謝しているのかわからなかった。
「いや…その…。さっきの件私がいけなかったのに、琴美がそっちにずっと聞いててさ…。なんかその…玲に対して申し訳なくなっちゃって…」
美花は頬を人差し指で掻きながら、あはは…っと苦笑いをしてくる。
ああ、一応さっきの自分が悪かったっていう自覚はあるんだな。でもこんな顔されたら攻めることなんかできねえな…おい。
「別に気にすんなって。琴美にはばれてなさそうだし、それに今ここで話せたことがよかったかもしれないな」
「え、なんで?」
「辻褄さえあわせればうまく騙せるだろ?」
「あー!そうだね!……っ!わ、わかってたし…!」
そんなに意地はらなくてもわかってなかったのばればれだっての…。っという言葉を心の中で突っ込んでおき、本題へと移る。
「それでだな…こうしよう」
俺はさっき考えたことを美花に伝える。
「なるほどねえ…。まあ、一番は聞かれないことがいいんだけどね…」
「そうだな。おっと、なんか見えてきたぞ?」
視界の奥のほうに滝っぽいのが見えてきた。
「わあ、すごい!ねえねえすごいよ!ねえ!」
美花が隣で少し鬱陶しいぐらいにはしゃぎ始めた。
「あ、ああそうだな…」
「なーにそれー!まあ、いいや。いこ!」
美花は少しむくれた後、俺に一声かけてみんながいる方へと走っていった。
「おう」
俺も返事をしてその後を追いかけていった。