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生徒会長様々‼  作者: 林田一樹
○勧誘編
4/6

[4]忠告と先輩と個人の意見の尊重

「ちょっとあなたどういう神経してますの! あの方の気を引こうとしてたんでしょ!」

「馬鹿じゃないの!」「図々しいたらありゃしない!」「最低ーな女!」



「…………はあ?」



 気の抜けたような声がその人たちの話を聞いた後の第一一声だった。

「あ、あの……それってどういうことですか? 話がまったく見えないんですけど」

 女軍団は私の言ってることが癇に障ったのだろう。怒りを露にしていた。女って怖い。



「あんたは自覚してないの! この女狐! 堂々と先輩に色目つかって私たちが気付かないとでも思ってるのかしらっ!」



 ――先輩……? 誰のことだろう? 今まで私とよく会っていた先輩ってことだよね。



 入学してからの記憶を探り出して彼女たちが嫉妬するほどの人にはあってない……と思う。

「ええーと失礼ですけど、誰のこと言ってるんですか?」

 その一言が彼女たちの逆鱗に触れたらしく、肩を思いっきり押された。私は制服のまま、地面に尻餅をついてしまった。

 ――あーあ、スカートが汚くなっちゃう。制服はすこしでも綺麗にしたいのになんてことするんだ、この女軍団!

「ちょっと何するんですか!」



「忘れたとは言わせないわよ。夾君のことに決まってるでしょ!」



 ――きょ、夾くん? 



 聞いたことのない名前だった。誰だかわからない先輩の名前呼びとか分からないんですけど。

「まだ気付いてない振りをするの! この白々しい!」

 女軍団があーだこーだ言っている隙に、私は立ち上がってスカートを掃いながら『夾君』らしい先輩を記憶の中から探すけど、ヒットしなかった。

「あの人違いじゃないですか? 私、そもそも夾先輩のこと知りませんですし」

「はあっ!? ふざけないで! 私たち知ってるんだから、ここのところ毎日夾君の気を引いているでしょ!」

「だから、見に覚えがありませんし、先輩たちが言っている夾先輩のことを知りませんから。では私はこれで」



 * * *



「あーはははははっ! 今の時代、漫画みたいなリンチですかw ヤバい、お腹痛いぃwwww!」



 遅くなった私を不審に思った愛実に突っ込みまくられて、自白したら大笑いされた。それはそうだろう、本当に漫画だったし。でもすこし心配とかしてほしい。

「ちょっと、大笑いしないでさ……大変だったんだよ」

 愛実は相当ツボったらしくて、大笑い中。

「てか、『夾君』って誰? あの先輩達、その人と私が何かあるって誤解してるんだけど」

 すると愛実は笑うのをやめて、私を凝視した。なにをそんなに驚いているんだろう?

「……あんた、夾って名前に聞き覚えないの?」

「うん」

「…………あーははっ! 優貴も優貴で鈍感だー! 普通気付くでしょ!」

 そこまで言われると、ムッとする。てか、夾って名前だけじゃ分かんないじゃん。



「だからー、夾先輩って誰「私がどうかしたのか」



 思わず、私の思考が停止した。

 え、この声って……まさか。

 唾を飲み込んでから、私は後ろを振り返ってみる。

「坂本先輩! いつからいたんですか!」

 私の思惑通りに坂本先輩がいた。たしかしばらく会ってなかったから、久しぶりにみる薄ら笑い。

「私はさっきからいたが? 君の友達は気付いていたようだけどね」

「えっ! ちょっと愛実、気付いたなら言ってよ」

「いやーおもしろいからねえw」

「意味分かんない」

 私に付きまとう坂本先輩も。それを見て私に鈍感という愛実も。忠告してきた先輩達も。

 ……アレ? つまり、坂本先輩=夾君。ああ、坂本先輩の名前って夾なのか。初めて知った。まあ、私は関心がなかったし、坂本って苗字も本人が名乗ったから知ったわけで。

「そういえば、坂本先輩は何しに来たんですか?」

 坂本先輩は驚いた様子で言った。

「……何って。それは入部届けを貰いにきたに決まってるだろう」

「はあ? いや、私じゃなくて入部届けを貰うなら、先生に貰ってくださいよ。私、一枚しかもってないですよ」

 馬鹿なのか、こいつは。なぜ私に入部届けを貰う必要があるんだろう。

 すると、先輩は額に手をやり、溜息をついた。

「私は一応、二年生でそれぐらい知っているのだが。そうじゃなくて、入部蘭に生徒会と書いた君の入部届けがほしいんだよ」

 この学校では、生徒会は部活扱いになるので、生徒会に入る時にも入部届けに書き、部と同じ期限に提出するらしい。

「え、なんで。私、一言も生徒会に入るって言ってないですよ」

「残念だが、そういうことを言ってる暇はない。とっとと書け。来週の月曜が締め切りなんだから」

「書いちゃいなよー」

 どうして、私個人の意見の尊重はされないのかな。

 いつもこの先輩と話していると、そう思えてきた。 

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