ポンコツ聖女
初めまして、もちこと申します
小説が好きすぎる故、読みたいものがないのなら書いてしまえばいいじゃないのもと、書いているので温かく見守っていただけますと、幸いです。
聖女とは、迷える子羊たちを導く存在_
それは誰もが知っている共通認識であり、憧れの職業と言われる理由である。
だが、聖女の中にも迷える子羊たちをさらに迷わせ挙げ句の果てに自分が導かれてしまうようなポンコツなものもいた。
「迷える子羊よ、私が導いて差し上げましょう」
「敬遠なる聖女よ、どうか、いなくなってしまった嫁の元へ、導いてください…」
「かしこまりました。そのお嫁様はどんな方でしたか?」
「嫁は、とても気立のいい嫁でした…。私が仕事してばかりなのにも文句も言わず、家で待っていてくれて、疲れているだろうからと、家のことは全てやってくれて…」
「それはととてもいいお嫁様ですね、いなくなってしまったことに心当たりは?」
「お恥ずかしながらまったく思いつかないのです。私が何かしてしまったのかもと思いましたが、嫁に限ってないとなぜか言い切れてしまって…。」
「なるほど…。おそらくですが、お嫁様はえーっと、あの、そうですね、もしいるとすれば、その、えっと…」
陽の光が差し込み、神秘的な空気が流れる教会に聖女のどもる声が響く。
そう、今日担当しているこの聖女は、教会の中で最もポンコツであった。
幼い頃に聖女に助けてもらったことをきっかけに家を飛び出し、教会に属したこのポンコツは迷える子羊の悩みを聞き、解決に導くことはおろか、方向音痴というポンコツっぷり。
むしろなんで家を飛び出して教会に辿り着けたのかが謎というレベル。
「おそらくですが、お嫁様はご実家に帰られてるかと…。」
「え、ですが、嫁は家族と縁を切ってまして、帰る場所などないと思うのですが…」
「え、あ、そうなんですか、え、それはちょっと予想外と言いますか、えーっとぉ…」
なんとか口から絞り出した答えは毎度当たらない。
なんならちょっと地雷を踏み抜く。
毎度彼女の担当の時は誰かが見守るのが決まりだが、今日に限ってみんな出払っている。
もはや泣きそうになりながらも、えーっと、えーっとぉと言葉を探していると、いきなりドアが開いた。
「あなた!こんなところで何しているの!」
「アリス!どこに行ってたんだ!」
「ほええ!?誰ぇ!?」
困惑している聖女をよそに夫婦は抱き合う。
「家に帰ったらいないし、近所の方は教会に行ったっていうから急いできたのよ」
「アリスこそ、家にいなかったじゃないか!」
「前に言ったでしょう?友達の畑の収穫の手伝いに数日家を開けるって」
「あ、そういえば、そんなことを言っていたような…」
「もうあなたったら」
困惑した聖女はどこまで置いてかれ、夫婦は満足げに帰っていった。
「も、もうなんだったの…?」
ポンコツことリーンは涙を浮かべながらその場にへたり込むのだった。
しばらくリーンはへたり込んでいたが、先輩たちがいない間に勝手に導きをしたことがバレたら怒られると思い、急いで立ち上がって片付け始めた。
以前、リーンの研修をしていた聖女が、一人でやってごらんとリーンにやらせたことがあった。
初めてということもあり、多少の失敗や間違いなどはあるでしょうと、温かく見守っていた先輩は、一人でやらせたことを後悔した。
なぜなら、簡単なはずの内容の導きだったのに相談者はブチギレ、リーンは大泣きをしていて、結局先輩が改めて話を聞き、導いた。
その一件があって以来、リーン一人での導きは禁止されていた。
担当がいない限り導けない。
導こうもんなら先ほどのように見当違いな導きをしてしまう。
「どうしよう…こんなんじゃ、ずーっと誰かに見守られないと導きができない半人前聖女のままだよう…」
べそべそ泣きながら不在中という札を持ち、ドアを開けた。
すると昼間なのに暗く、リーンの視界に影が落ちた。
「ほえ?」
気の抜けた声をあげて上をみた。
そこには、ガタイのいい騎士のような格好をした男がいた。
「すまない、ここは教会であってるだろうか?」
落ち着きのある低い声が降ってくる。
男性耐性などほとんどないリーンはパニックを起こした。
「きょ、教会でしゅ!いまはだれも、お、お、おりませんが」
パニックになりながらも、必死に答える。
今の自分の格好など忘れて。
「えっと、君は聖女ではないのか…?」
首をこてんとかしげながら聞いてくる男。
リーンは同じ方向に首を傾げて答えた。
「一応聖女だと思っています?」
漂う謎の空気。
沈黙が続く中、風がさわさわと木を揺らしメロディーを奏でている。
「では、導きをお願いしてもいいだろうか」
優しい声で言われたその一言はリーンを青ざめさせるには十分すぎる一言であった。
ポンコツっていいですよね。
特に完璧なイメージの聖女がポンコツ。
私は好きです。




