第21話「君と生きる未来」
リリアンナの暴走が鎮圧された後、王城は大きな混乱に包まれた。しかし、カイルの友人であった騎士が中心となり、事態の収拾にあたった。偽りの聖女と宰相の悪行は白日の下に晒され、彼らは法によって裁かれることとなった。
全ての呪いから解放され、本来の力を完全に取り戻したレイルは、もはや苦痛に顔を歪めることはない。その穏やかで威厳に満ちた姿は、まさに王そのものだった。
カイルの名誉は完全に回復された。王や、かつて彼を断罪した貴族たち、そして父親である公爵までもが、カイルの前にひざまずき、涙ながらに謝罪した。
「すまなかった、カイル。どうか、この国に戻り、我々を導いてはくれまいか」
王はカイルに、公爵家への復帰と、宰相の地位への就任を懇願した。それは、誰もが羨む栄光への道だった。
しかし、カイルは静かに首を横に振った。
「お許しください。俺の居場所は、もうここにはありません」
彼は集まった人々から離れ、傍らで静かに成り行きを見守っていたレイルの元へと歩み寄る。そして、迷うことなくその手を取った。
「俺の居場所は、あなたの隣だけです、レイル」
その言葉に、レイルは驚いたように目を見開いたが、すぐに全てを理解したように、深く、優しく微笑んだ。そして、カイルの手を強く握り返す。
「……ああ。帰ろう、カイル。我々の城へ」
王たちの引き留める声も、友人たちの寂しそうな声も、もはや二人の耳には届いていなかった。
カイルは、失った全てを取り戻した。だが、彼が本当に欲しかったものは、名誉でも地位でもない。ただ、愛する人の隣で、穏やかに過ごす日々。それだけだった。
***
二人は、誰にも告げることなく王都を去り、魔の森へと帰っていった。
城に着くと、カイルを追放したあの日と同じように、静かな雨が降っていた。だが、あの日の絶望の雨とは違う。全てを洗い流し、新たな始まりを祝福するような、優しい雨だった。
「レイル」
「なんだ、カイル」
玉座の間で、二人は向き合った。
「大好きです」
カイルがそう言うと、レイルは愛おしそうに彼を抱きしめた。
「我もだ。愛している、カイル。お前は、我の永い夜を終わらせてくれた、たった一つの光だ」
二人はどちらからともなく唇を重ね、そこで永遠の愛を誓う。
追放された公爵令息と、呪われた魔王。絶望の淵で出会った二人は、幾多の困難を乗り越え、唯一無二の絆で結ばれた。
彼らの幸せな物語は、まだ始まったばかりだ。




