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第16話「最後の遺物の在処」

 魔の森の城へと帰還したカイルは、レイルに二つ目の遺物「忘却の遺跡の羅針盤」を手渡した。羅針盤の力はレイルの魂に働きかけ、英雄に裏切られたという過去の記憶の痛みを和らげた。


 彼の呪いは今やかなり弱まり、日中であれば城の中を自由に歩き回れるほどに回復していた。


「これで残るは一つだな」


 レイルは穏やかな表情でカイルに告げる。


「はい。最後の遺物は『守護の宝剣』……それがどこにあるのか、この羅針盤が示してくれるはずです」


 カイルが羅針盤に魔力を込めると、針はゆっくりと、しかし真っ直ぐに一つの方向を指し示した。南東――そこは、カイルが追放された王国の方向だった。


「やはり……そうか」


 カイルの表情が曇る。一縷の望みを持っていたが、羅針盤は無情にも古文書の記述が正しいことを示していた。自分を陥れ、絶望の底に突き落とした王城の宝物庫。あの場所へ戻らなければならないのだ。


「……行きたくないのなら、無理強いはしない」


 カイルの葛藤を察したレイルが、優しい声で言う。


「お前の心が癒えぬうちに、辛い場所へ行かせるわけにはいかない。他の方法を探そう」


 その言葉は嬉しかった。だが、カイルは静かに首を横に振った。


「ううん、行きます。あなたを完全に救うためには、避けては通れない道だから」


 それに、とカイルは続ける。


「リリアンナが俺を追放した理由も、ずっと気になっていました。彼女の力の秘密と、最後の遺物には、何か関係があるのかもしれない」


 カイルの瞳には、もはや過去への恐怖はなかった。あるのは、レイルを救うという固い決意と、真実を突き止めようとする強い意志だけだ。


「俺はもう、一人じゃない。レイルさん、あなたがついていてくれるから」


 その言葉に、レイルは愛おしそうに目を細めた。


「当然だ。今度はお前一人にはさせん。我も行こう」


「えっ、でも、あなたの体は……」


「呪いはほとんど弱まっている。それに、この姿ならば問題あるまい」


 レイルがそう言うと、彼の体が黒い靄に包まれた。そして靄が晴れた時、そこに立っていたのは魔王の姿ではなく、黒髪に深い青色の瞳を持つ、穏やかな雰囲気の青年の姿だった。


 人間に化ける魔法だ。魔王の気配は完全に消え、誰も彼の正体に気づくことはないだろう。


「これなら、お前の護衛としてそばにいられる」


 そう言って悪戯っぽく笑うレイルに、カイルは驚きながらも、心が温かくなるのを感じた。


「決まりですね。二人で王国へ乗り込みましょう」


 カイルは力強く頷いた。


 レイルを完全に救うため。そして、自らの過去に決着をつけるため。


 二人の最後の旅が、今、始まろうとしていた。

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