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第15話「聖女の焦り」

 二つ目の遺物である羅針盤がカイルの手に渡った瞬間、王国の聖女リリアンナは、自室で激しい目眩に襲われていた。


「……うっ……また、力が……!」


 彼女の力の源である呪具は、魔王レイルの呪いから漏れ出す魔力を利用している。その呪いが二つの遺物によって弱められたことで、呪具の力が著しく低下し、それに伴ってリリアンナの「聖女の力」も失われつつあったのだ。


 もはや、軽い傷を癒すことすらままならない。奇跡を求める民衆の声に応えられず、彼女への不信感は日増しに高まっていた。


「いったい、魔の森で何が起きているの……!? あの追放者、まさか本当に……!」


 リリアンナの美しい顔が、焦りと憎悪で歪む。このままでは、自分が偽りの聖女であることが露見してしまう。それは、彼女のプライドが絶対に許さなかった。


「こうなったら……」


 リリアンナは決意を固め、秘密の通路を通って城の地下深くへと向かった。そこには、彼女と宰相だけが知る、禁忌の研究室があった。


 研究室の中央には、黒く禍々しいオーラを放つ祭壇が鎮座しており、その上に鎮座するのが、彼女の力の源である呪具――『簒奪の聖杯』だった。


「リリアンナ様、お待ちしておりました」


 祭壇の傍には、腹心の部下である宰相が待っていた。


「宰相、もう待てませんわ。あの男がこれ以上何かをする前に、全てを終わらせるのです」


「しかし、まだ準備が……。あの儀式は危険すぎます」


「黙りなさい! 私が偽物だとバレるくらいなら、死んだほうがマシですわ!」


 リリアンナはヒステリックに叫ぶ。追い詰められた彼女は、もはや正常な判断力を失っていた。


 彼女がやろうとしている最後の手段。それは、呪具の力を暴走させ、大陸中に残る魔王の魔力の痕跡を強制的に集め、全てを自分の力へと変換する禁断の儀式だった。


 成功すれば、彼女は真の聖女をも超える絶大な力を手に入れることができる。しかし、失敗すれば、暴走した呪力が王国そのものを飲み込み、大惨事を引き起こす危険な賭けでもあった。


「儀式の準備を急がせなさい。そして、最後の遺物……『守護の宝剣』をこの祭壇へ。あれを生贄に捧げれば、儀式の成功率は格段に上がるはず」


「かしこまりました……」


 宰相は深々と頭を下げたが、その顔にはリリアンナにも見せない野心が浮かんでいた。彼は、彼女が手に入れるであろう強大な力を、いずれは自分が乗っ取ろうと画策していたのだ。


 二人の欲望が渦巻く中、王国の運命を左右する邪悪な儀式の準備が、着々と進められていく。偽りの聖女の焦りが、世界を新たな混沌へと導こうとしていた。

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