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風の使徒は、女騎士がお好き  作者: Hatsuenya


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6/23

風の使徒は、三角関係を外から眺めたい

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 ミオウは、結構、勝手に斜めに走るタイプです。



 外が騒がしくなった。おや、どうやら、スターシオ様がいらっしゃったらしい。スターシオ様がトーマスさんと押し問答をしているみたいだ。


「ドナテロ、ここを開けろ!一体、何をしているんだ」


 スターファルコン先輩の方を見てみると、先輩は片目を瞑った。もうちょっとって、事かな?


「すいません。取り込み中なんで、少々お待ち下さい。スターシオ様」


 私がそう言うと、いきなりドアが開いて、トーマスさんが焦った顔で、私と、中腰に固まった体勢で頭に先輩を乗っけているドナテロ先生を交互に見た。ンフフフフ。

 スターシオ様が、自分より頭1つ分は優にでかいトーマスさんを押し退けて入ってきて、私を抱き締め、私の肩に顔を埋めると、安堵の溜め息を吐いた。

 納得いくまでドナテロ先生の頭の中を見たのか、スターシオ様の頭のある反対側の私の肩に、先輩が止まった。


「無事?ドナテロに何もされてない?」


 ドナテロ先生は、頭を両手で抱え込み、自分の椅子の上に力なく崩れ落ちた。


「何て事をしてくれるんだ……」


 何とか絞り出した様な声で、ドナテロが呟いた。


『何を言う。俺がお前達を助けてやったんだぞ。風神様の御使いに、薬と精神干渉を使おうとするからだ。うちの後輩は若輩者なんで、そんな事をすれば壊れてしまう。こいつが壊れれば、風神様の天罰がお前達に下る。お前だけじゃない、お前とそこの男が大事にしているスターシオにもな。』


 まったく、止めていただきたい。私がそんな目に遇えば、風神様は私を連れ戻し、私は2度と私の女騎士スターシオ様に会えなくなるだろう。冗談じゃない。

 私は、スターシオ様の頭を撫で、背中に手を回した。よしよし。


「もし、そんな事になったら、私がお前を八つ裂きにしてやる。そして、ミオウを連れて国を出る。そして、この国は光の女神の加護を失うだろう」


「スターシオ様!」


「覚えておけ」


 取りなそうとしたトーマスさんを、スターシオ様が、そう言って睨め付けた。

 私の肩から顔を上げると、スターシオ様は、私を胸に抱き直し、私の髪を撫で、頭の天辺にキスをした。

 私は、溜め息を吐いた。

 そう言う事をするから、トーマスさんとの関係が拗れるんですよ。


「スターシオ様、トーマスさんに、心にも無い事を言っちゃ駄目です。トーマスさんはスターシオ様が大事なんです。おそらく、ドナテロ先生も」


 泣きそうな顔をしてスターシオ様を見ていたトーマスさんが、僅かながら頷いた。


『まあ、こいつ、ドナテロの頭ん中を見る限り、スターシオを大事に思っているのは、確かだな。ミオが偽物の風神の御使いじゃないかと疑って、確かめる為に薬だの精神干渉だのを使おうとしやがった』


 おおっ!三角関係か!?ひょっとして、私、お邪魔虫?

 まあ、スターシオ様のこの美貌、格好良さ、冷たい目で見られてさえも、心が痺れる。わかります、わかりますとも。


「申し訳ありません、我が君」


「申し訳ありません。この方には、もう2度とこの様な事をしません。いえ、出来ません」


 やっと顔を上げたドナテロ先生は、切なそうにスターシオ様を見た。

 ああ、2人共、心の底からスターシオ様を愛しているのだ。ささっ、私は、一歩下がって皆さんの邪魔にならない所に居ますから。


「こら待て、抜け出そうとするんじゃない。せっかく良い気分で抱いているのに」


 私が、スターシオ様の懐から、ササッと抜け出ようとすると、更にスターシオ様に絡め取られた。


「ほら、お二人共、どうか、お気にせずに。私なんて、スターシオ様にしたら、新しいペットとか弟みたいなもんですから」


 暴れる私の肩は居心地が悪いのか、先輩はドナテロ先生の机の上に止まった。ドナテロ先生が『ひいっ』と小さく悲鳴を上げて、頭を庇い、椅子ごと後ずさった。


「ペット……弟……」


 トーマスさんと先輩が、可哀想なモノを見る目で、私とスターシオ様を見た。


「ミオウは、私より2歳も年上なんだよね?で、弟?」


「あ、じゃあ、ペット?」


 私がそう言った途端に、スターシオ様の機嫌が悪くなった。

 いや、だって、皆そう言うんですよ。『可愛い。弟みたい』とか『小さなペットみたい、可愛い』って。


「ふーん、ペット。ペット扱いで、いいんだ。よし、わかった。そう、ペット。ペットね。

 ペットなら、一緒のベッドに寝ても良いよね。お風呂も一緒に……ああ、もう一緒に入ったんだった。後で、もう一度一緒に入ろうか。ペットなんだから、頭も身体も、それこそ全身洗ってあげる。

 ペットには、こうしてキスしても良いんだよね」


 スターシオ様は、私の頬やら耳やら、果ては首筋にまでキスをしだした。『ひゃん』って、ちょっと変な声が出てしまった。


「ごほん。スターシオ殿下」


 わざとらしく咳払いしたトーマスさんが、呆れた顔で、私とスターシオ様を見た。先輩は、莫迦かお前は、という顔をしている。鳥の癖に、何故か表情豊かだよね、先輩は。


「わかってる。手は出さない。煽ったのは、ミオウだよ。腹立たしい」


 そう言いながら、スターシオ様は、私を抱き締め直して、私の髪を撫でた。






「ドナテロ、大丈夫か?」


「まあ、何とか」


「何をやられた?」


「ミオウに手を出した場合の俺の悲惨な死の未来をリアルに見せられて、再び生まれて、今までの一生分の追体験をした」


「……」


「だから、今、ここにいるのは、新しい俺なんだよ。生まれてきて、おめでとう、俺」





 スターファルコンは、後輩に手を出そうとしたやつには、容赦しません。フンフン!

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