表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の使徒は、女騎士がお好き  作者: Hatsuenya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/23

風の使徒、従者見習いになる

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 スターシオの国の辺境砦のお話です。



 まあね、働かざる者は食うべかざる、ですよね。

 と言うわけで、私はスターシオ様の従者見習いになった。言ってしまえば、アイドルの付き人、推しの第1信者みたいなものかな?と聞いたら、従者のトーマスさんに呆れられた。


「第1信者って、どちらかと言うと、あなたの方が信者が付く立場でしょうに」


 風神様に信者は居るけど、御使いには、居ないですね~。うちの神様、あんまり手のかかる方ではないので、私は、神殿の供物を取りに行ったり、スタンピード時の魔獣のお掃除したりするくらいで、人の前に出ることはないです。

 そう言えば、スターファルコン先輩が言うには、風神様と雷神様は、異世界旅行中らしい。やはり、お姉ちゃんは自力で見つけねばならないみたいだ。


 さて、スターシオ様は、どうやら王族の方らしく、殿下と呼ばれている。そして、このトーマスさんが従者兼護衛としてスターシオ様のお世話をしているらしい。このトーマスさん、20歳のイケメンお兄さんだ。

 いや、髭ダルマばかり見てきたから、まあ、イケメンかな?多分という感想しかない。薄茶の髪に、茶色の瞳の背の高い優しそうなお兄さんである。筋肉は、程々。細マッチョとか言うやつだな。うんうん。

 スターシオ様は、トーマスさんを信頼しているらしく、彼に私の素性を話し、私をトーマスさんに預け、着替え終えるとすぐに団長さんの元へと行ってしまった。


 この、『あ、うん』の呼吸、スターシオ様のトーマスさんへの信頼度合い、トーマスさんのスターシオ様への慈しみや愛しさの混ざった眼差し……お二人は、愛し合っている?

 うん、横に並ぶと中々、お似合いかもしれない。ンフフフフ。


「とにかく、何も持っていらっしゃらないと言うことなので、騎士見習いの服を貰ってきましょう」


 神殿には、あるんですよー。櫛とか、鏡とか、生活用品一揃え。しかも、キラッキラで宝石付きのやつ。風神様のお下がりだけど。信者さん達が、色々献上してくれるんだって。


 補給係に行くと、色んなサイズの見習い服が揃っていたので、一番小さいサイズの服を貰ってきた。多分、これでも大きいかも。生活用品一式も、配給。ありがとうございます。

 ついでに、砦の中も案内して貰った。食堂、風呂場(これは、私はスターシオ様の部屋の物を使うので、使用しない)、鍛冶場、洗濯場、図書室、団長室、武器庫。


「何か、武器は必要ですか?万が一の護身用に1つ持っておかれた方が良いかもしれません」


「包丁しか握ったことがないので、止めておきます」


「むしろ、包丁は使ったことがあるんですね」


「風神様雷神様の酒の肴は、時々、私が作ってましたので」


 えへへへへ。酒の肴を作るのは、得意なんですよ~。


「風神様雷神様の料理人なんですか?」


「いえ、主に掃除を担当しています。ですから、魔獣退治の折は、お任せください」


 キリッ!私は真剣な顔をし、トーマスさんを見上げて、頷いてみせた。

 トーマスさんは、怪訝そうな顔をした。


 最後に医療室に連れて行かれた。


「私は、外で待っています。医者には、スターシオ様が話を通していますので、心配事があれば、ご相談下さい」




 お医者さんは、髪の長い眼鏡をかけた先生だった。ちょっと鍛えてますよ~と言う感じで、適度な筋肉度合い、ニコニコと優しそうに微笑んでいるが、目は笑ってない。油断のならない先生だ。


「おや、大丈夫ですよ。初めまして。風神様の御使いでいらっしゃるそうですね。私は、砦の医師をしていますドナテロと申します。さあ、こちらへ」


 ドアを開けた途端に、一歩外に戻ろうとした私を、ドナテロ先生は、そう言った。

 医者なの?とてもじゃないが、違う職業の人に思える。


「そう警戒なさらずとも、大丈夫ですよ。私は、スターシオ様の味方ですからね。ちょっと診察をさせて下さい。スターシオ様に万が一の事があったら、困りますので」


 わかった事が1つある。当然ながら私は余所者で、味方はスターシオ様のみ。ドナテロとトーマスはスターシオ様の味方なだけだ、多分。そして、スターシオ様は、甘い。この2人はスターシオ様に近づくモノを見極めるお目付け役だ。

 ドナテロとトーマスは、スターシオ様の為に、私を警戒している。そして、私はスターシオ様の為に、逆にこの2人を警戒しよう。


 私は、ドナテロの前にある椅子に座った。


「目を見せてもらいますね」


「目を見るのは結構ですが、頭の中に忍び込まれるのは、嫌ですね。後、薬を使うのも、止めてください。どちらも、危険ですよ?」


 ドナテロ先生は、片眉を上げた。


「先輩」


 私がそう呼ぶと、窓をすり抜けてスターファルコン先輩がドナテロ先生の頭の上に止まった。


『これは、これは初めまして。人間の挨拶は、これでいいんだよな?それとも、目ん玉くり貫くんだったか?』


 ドナテロ先生は、私に触れようと手を伸ばしたまま、固まった。先輩に心の中を覗かれているのだ。





「先輩、ドナテロ先生の頭の中、どうですか?」


「ミオに話せない程、ヤバい感じ」


「えー?話してくださいよ~」


「ダメだ。お子ちゃまなミオには、教えられんくらい、真っ黒だ」


「ちぇっ」





 まあ、ドナテロは、敵ではありません。味方でもないですけど。用心深いだけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ