姉を探して~三千里~風の使徒は、方向音痴
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さてさて、第一王子は、弟に、どんなアドバイスをしたんやら。
怒涛の如く現れて、第一王子は、さっさと去って行った。忙しいらしい。
「じゃあ、頑張れよ、スターシオ」
第一王子は、辺境伯令嬢の所に遊びに来ている自分の婚約者を回収して帰るんだそうだ。
あー、あの威勢が良くて、可愛いけど賑やかなご令嬢、ね。女の子の友達は欲しいけど、スターシオ様を悪し様に言う子とは、仲良くなれそうにないな。
「兄上が情報を持って来てくれたのだが、その中の1つに『鳥が、小人を掴んで空を飛んでいた』と言う話がある」
スターシオ様が、私を見て、そう言った。
鳥、小人……怪しい。お姉ちゃんかも。鳥は、雷鳥のサンダーボルト先輩か?
「但し、場所は、国境に近い隣国の村の付近。その辺りは、昨日、隣国の騎士団が魔獣討伐を行ったばかりだ」
スゴいな、お姉ちゃん。ひょっとして、サンダーボルト先輩に運んでもらって、小さいまんまでも、お仕事をしてるのかも。
これは、私も馳せ参じなければならない。
「スターシオ様。今までありがとうございました。私、その村に行ってみます!では!」
「いや、待って、待って!お願いだから、待ってくれ!」
踵を返して急いで現場に行こうとする私を、スターシオ様が抱きついて止めた。
すいません、急いでるんで。
「大体、ミオウは、その村の場所が判るの?」
……判りませんねー。うん。
「私が、案内するけど?」
「スターシオ様は、ご存知なんですね」
「まあ、地図も持ってるし、馬もあるし。トーマスとドナテロも同行するから、1人で探すよりも、皆で探した方が良いんじゃないかな」
スターシオ様は、私の両肩を掴んで、私の顔を覗き込んだ。
「昨日から、トリは留守だし。実は、トリに頼まれているんだ。ミオウを決して1人で外に出さないようにと。何か、帰って来れなくなるから?とか」
はい、そうですね~。
実は、今、スターファルコン先輩は、お留守なのだ。
そして、私は、先輩に『究極の方向音痴』と呼ばれている。
空を飛んで山を目指す。そこまでは、良い。山にたどり着くと、どっちから来たんだったか、判らなくなるので、帰れない。
いや、だって、後ろ見て飛んでる訳じゃないんだし。
目印を覚えろって言われても、木とか岩とか、川?日本みたいに店の看板があるわけじゃなし、住所もないし、スマホないし、道を聞ける交番もコンビニも、ないんだよ?
先輩みたいに、鳥じゃないんだし。人間だよ?帰巣本能なんて、ないから。
まあ、日本にいた頃から、方向音痴でしたけどね……。
「殿下、頑張って下さい」
「ファイトです。殿下」
「陰ながら応援してます。殿下」
砦を出る前に、何故かスターシオ様は、通りすがりに騎士達に励まされていた。騎士達は、まるで、今から試合に向かう子供を励ます保護者の様だ。
声をかけない者も、何故か、私と殿下を温かい目で見ていた。中には、拳を握りしめて、私達を見て、うんうんと頷いている者もいた。
何が、何なの???
「昨日の町での騒ぎを、一部始終、見ていた団員が居たらしくて。砦の全員に、ミオウが女の子で、私が、好きな女の子--ミオウに女と間違えられていたと言う一件が知れ渡っている。で、今、私が皆に同情されている最中だ」
スターシオ様は、大きく溜め息を吐いて、私の手を握って、そのまま歩き出した。
流石の私も、真っ直ぐな廊下では、迷子になりませんよ。多分。
スターシオ様のホワイトアローに乗せてもらう事になった。
お姉ちゃんが見つかったら、ホワイトアローとも、サヨナラだね。私は、ホワイトアローと顔を寄せあった。
「何か、妬けるんだけど?馬に嫉妬するとは、思わなかったよ。まあ、いいけど」
キレイな顔を強ばらせて、スターシオ殿下は、ホワイトアローを睨み付けた。ホワイトアローは、ヒヒンと、スターシオ様を嘲笑った。
スターシオ様は、ホワイトアローに乗り、私を前に乗せた。まるで、初めて会った時の様に。あの時私は、スターシオ様を女騎士様だと思っていたので、浮かれてワクワクしていた。
今の私は、普通に男の人の格好をしたスターシオ様に後ろから抱かれて馬に乗っている為、かなり緊張している。ドキドキする。
動悸が、止まらないんですけど?
「顔が赤いよ、ミオウ」
先程まで余裕のなかったスターシオ様のくせに、今は、私をからかって楽しんでいる様だ。私の頭の上から、私の顔を覗き込んでニコニコしている。
身長、高いもんな~。これで、14歳。まだまだ、背が高くなるんだろうな。
鳥と小人の目撃情報があった現場近くの村は、未だ荒らされた跡があり、がっしりとした男達が家を建て直していた。
「昨日、こちらでは、魔狼の一群が退治されたそうです。鳥と小人ですが、正しくは妖精だった様で、こちらの砦の騎士団長が連れて帰ったと言う話です」
ドナテロ先生とトーマスさんが、村人から話を聞いてきてくれた。私とスターシオ様では目立ち過ぎるからと、私達はマントのフードを被せられていた。
まあ、確かにスターシオ様程の美形になると、目立って仕方がないよね。うんうん。
スターシオ様は、村に着いてからずっと私と手を繋いでくれている。私、すぐに迷子になっちゃうからね~。申し訳ない。
「それにしても、昨日は、こちらにも魔獣の群れが出たんですね」
「いつもなら、もうちょっと間が空くはずなんだが」
ドナテロ先生とトーマスさんが、心配そうにそう言った。
風神様雷神様は、次元嵐の為に異世界から帰れなくなっている。私とお姉ちゃんも、今はバラバラでお仕事が出来ない。
この状況は、ちょっとマズい気がする。
「弟よ。恋に正解など有りはしない」
「それで?アドバイスは?」
「諦めるな。好きだと言い続けろ。大抵の女は、お前の顔で落ちる」
「顔とか言われても、それしか取り柄が無いようで、あんまり嬉しくないけど?」
「まあ、女と思われてた時は、好かれていたんだろう?性別以外は変わらないんだから、嫌われては、いない筈だ。諦めるな。今までと同じ態度で、行け」
「役に立たないアドバイス、ありがとう」
まあ、頑張れ、スターシオ。ミオウは、恋にも方向音痴ですけど。




