第二王子は、風の使徒とイチャイチャしたい
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回は、スターシオの視点です。
第二王子スターシオ side
朝早く、朝も明けきらぬ内から、ミオウの部屋に入り、ミオウの眠るベッドの横に陣取った。
ミオウが、まだ、私の元に居る事を確認したかった。ただ、それだけ。
眠るミオウは、美しく、それでいて、あどけなさがあって、愛らしい。小さな顔、長い睫毛、可愛らしい鼻、サクランボの様な唇。美しい人は、眠っていても美しいんだな。
姉の行方を探すなら、砦で情報を探った方が良い……とか何とか誤魔化して、私はミオウを砦に連れて帰った。
これは、私のモノだから手を出すなと、砦から私を探しに来た皆に見えるように、皆の前でミオウをかき抱き、彼女の頭にキスをする。
ミオウを男の子と間違えているなら好都合。それで、大半の奴らは手を出さないだろう。
私が同性愛者と間違えられるというデメリットがあるが、私の婚約者を奪い、男しかいないこの砦に私を放り込んだ兄上には、噂を聞いて油断しておいてもらおう。
美しく可愛く優しいミオウを私の馬に乗せて皆に見せびらかし、私は騎士団と共に砦に帰った。
「風神様の御使いの女の子ミオウだ。神聖力が尽きて魔獣に襲われている所を助けられた。私の従者見習いにする」
従者のトーマスに簡単に説明し、騎士団長とドナテロ以外には、『従者見習いにする』以外の情報を伏せさせた。
「確かに。男の子としても女の子としても、あの美しさです。まあ、男の子としておいた方が、まだ波乱が少ないでしょうね」
性別を伏せる件については、トーマスも賛成してくれた。
可愛いミオウを砦中連れ歩いて案内して周り、皆に自分のモノだと見せびらかしたい。
手を繋いで、デートの様に一緒に歩き回り、ずっと一緒にいたい。そんな気持ちをトーマスに見透かされたのか、私1人で、団長とドナテロに事情を説明しに行けと言われた。
「私が先輩として砦を案内して、ミオウ様の必需品を一緒に調達しに行った方が、自然に見えますので」
トーマスは私に『浮かれてんじゃない、このガキが』という目線で、私を部屋から追い出した。乳兄弟なんて、何処もこんな感じなんだろうか。
奴は、いつも私に遠慮がない。まあ、6歳も年下なんだから、奴から見れば、私なんてまだまだ子供なんだろうな。同い年の乳兄弟、トーマスの弟ヘンリーが、ここにいてくれたら。早く、ヘンリーの怪我が治って合流して欲しい。
はっ!もしや、トーマスもミオウに気があるんじゃないだろうな。くそっ、早く用事を済ませて2人に合流しよう。二人っきりに、させるものか!
ドナテロに話をし、団長にもミオウの正体を話した。どちらも、万が一、ミオウの正体がばれた時には、彼女を庇ってくれるだろう。
そう思っていた。
ドナテロは、騎士団の医師として、砦に向かう私に付いてきた私の配下だ。私が彼と彼の弟の命を助けてから、私に忠誠を誓ってくれている。トーマスもだ。
そんなドナテロとトーマスに、裏切られるなんて。
「お前達は、私の言葉を信用しないんだな」
そう言いながら、私の中で、2人に対する信頼が薄れていった。
まあ、いきなり、風神様の御使いと言われて信用しろと言われても、無理な話かもしれない。だが、相手と話もせずに、薬と精神干渉を使おうとするのは、私への信頼が丸っきり無いんじゃないだろうか。
ドナテロは、風神様の鳥スターファルコンに報復を受け、ミオウが風神様の御使いである事を認めた。
トーマスが、副団長に痛め付けられかけたミオウを助けたのは、反省の印なのだろう。続いて、空を飛んで魔牛の一群を殲滅させたミオウを見たトーマスは、ミオウが風神様の御使いである事を少し信用したらしい。
だからと言って、この手の平返しの様な状況は、何なんだ?
「女の子に自分も女だという振りをして、女の子が眠る部屋に侵入し、眠る女の子に触れるなんて、恥を知りなさい」
そこから、延々、トーマスのお説教が始まった。
だいたい、ミオウは女騎士である私を好きなんであって、男である私を好きなんでは、ない。悲しいことに。
性別を越えて、私自身を好きになってもらおうと言う作戦を実行中なんだが、トーマスには、理解してもらえないだろうな。
私は、自分が女だとは、ミオウに一度も言ったことはない。男だとも言ってないが。
男だと知られたとたんに嫌われるんじゃないか、ミオウが私の元から去ってしまうんじゃないかと、怖がっているだけだ。
延々お説教を受けた私に、部屋から出てきたミオウがにっこりと微笑んだ。
小さな子供の様に自分が、説教をされているのが、少し恥ずかしい。
ああ、ミオウが好きだ。失いたくない。
その恥ずかしさが故に、ドアの外でミオウに土下座している副団長に、八つ当たりしてしまったが、まあ、良いんじゃないか。
ミオウを、ひどい目に合わせた男だしな。このまま殴り倒して、副団長の甥のケネスと共に、騎士団を首にして、砦から放り出してしまいたい程だ。
「私、今まで人と戦ったことがなかったので、加減がわからないんです。お詫びがしたいと、仰るんでしたら、今日から演習に混ぜてもらえます?」
そんな事で許してやるのか。ミオウは、優しいな。ミオウの先輩だとか言うトリなら、もっと容赦しないぞ。
ミオウに言われて、私が副団長の頭から足を退けると、ミオウの言葉に副団長は、顔を青くしていた。
ミオウの強さも皆に知ってもらえて、副団長も強くなれて、一石二鳥だな。副団長、しっかり相手してこい。
あ、そうすると、私がミオウと一緒にいる時間が減るんじゃないのか?
やはり、腹が立つな、副団長め。全部、お前が悪い。もう一回、踏んづけてやりたい。
「ちゃんと自分が男だって言わないと、バレた時に大変ですよ、殿下」
「わかってるよ、トーマス」
「嫌われても、知りませんからね」
「言い出しにくいんだよ。お前だって、『男です』って自己紹介しないだろ?」
「まあ、普通は、しませんね」
「勝手に女にされてしまった私も、可哀想じゃないか?」
いつか、ミオウが自分で気付いてくれないかな~と、ちょっと他力本願なスターシオでした。




