3章 サイコパステスト1問目
回想終了。
正直僕は警察署に行くか悩んだ。
警察に協力したところで犯罪者の親父の情報をもらえるとは思えない。だがそれ以上に気になるのがある。
カジスキの爆破方法だ。
警察に気づかれずに爆破なんてできるのか?
どうやってやるのだ?
カジスキと会話をすれば爆破方法のヒントが得られるかもしれない。
そんな期待を込めて僕は警察署に行った。
そして現在。取調室には僕、モモ刑事、人形のカジスキがいる。
詐欺師の息子、刑事、爆弾魔、とひどい面子である。
そしてカジスキが語る。
「では、クイズを出そう。
ある男がいる。
男は数年に1度職場を異動する。
男は毎日の通勤に多くの時間をかけるのを非常に嫌っている。
そのため、職場を異動するたび引っ越しをする。
具体的には職場まで4キロ以内のアパートに引っ越す。
そして必ず、学校の目の前や、学校のすぐ近くにあるアパートを選ぶ。
なぜ学校のそばを選ぶのか?
では、俺に質問して答えを導きだしてくれ」
人形は話し終えた。
さっそく僕は考える。
引っ越しをするたび学校の目の前のアパートを選ぶ男。普通に考えれば子ども好きだろう。
では質問しよう。
「男は子どもが好きですか?」
「いいえ、男は子どもが好きではない」そう人形のカジスキが答える。
「では、男は子どもが嫌いですか?」
「いいえ、嫌いじゃない」
好きでも嫌いでもないとはどういうことだ? この問題に関係ないということだろうか。
「男は子どもが関係する仕事をしていますか?」
「いいえ」
「男は先生や学校に関する仕事をしていますか?」
「いいえ」
「男は犯罪や悪いことをしようとしていますか?」
「いいえ」
となると男の目的は下見や物色ではない。
「男は騒がしいのやにぎやかなのが好きですか?」
「いいえ」
「……」
いいえばっかじゃねーか、この人形。
これじゃあ男の目的がわからない。だって学校の近くに住むのは不便だろう。朝と夕方は子どもが道路に広がっていて移動しにくいし車を動かしにくい。休日も運動場が使われて騒がしい……人がいること、それが目的か?
「男は人通りが多いから、そこに住むことに決めた?」
「はい」
ようやくはいを引き出せた。男は人通りが多いことを目的としているが、騒がしいのを好んでいるわけではない。また、男は悪いことをしようとはしていない。
となると、人通りが多くて学校の前を選ぶ理由はアレか。
「……」
アレだとは思うけど、聞きたくねえな。
「どうした夏木はギブアップか?」カジスキが煽ってくる。
聞くしかねえか。
「男は命を狙われていますか?」
「はい」
ならおそらく答はこれだろう。
「男は殺される確率を下げたいから、殺しをしにくい学校の前のアパートを選んでいる、が正解ですか?」
「正解だ、おめでとう」とカジスキが褒め、人形のスピーカーからパチパチ拍手音がする。
「やるじゃない」とモモさんも賞賛した。
「どうも」
「夏木。正解に変わりはないが、学校の近くのアパートで殺しをしにくい理由を説明してくれ」
刑事の前で説明するのも気が引けるが仕方ない。
「まず犯罪者のほぼ全員は捕まりたくないと思っています。捕まると死刑か刑務所行きです。刑務所は暴力が支配する世界で自由を制限され毎日風呂に入れません。
だから犯罪者は捕まらないために主に2つ気をつけます。
①目撃者がいないこと。
②犯罪発覚の後に、警察などがどの程度力を注ぐか、です。
学校の前の犯罪であっても①はどうにかなります。基本深夜には人がいない。学校に監視カメラがあっても、通学路を映すものであるから、それに映らないようにアパートに進入はできる。問題は②です。
学校の近くで殺人なんてやろうものなら、警察、教師、学校に通う数百人の生徒の親全員がブチ切れます。警察には苦情や激励が多く寄せられるしマスコミも注目します。解決に協力する人は大量にいるし、独自に捜査する人、探偵を雇う人だってでるかもしれません。当然警察は大量の人員と時間を使い捜査します。結果高確率で捕まるので、そんな所で殺人はするべきじゃない。だから男は殺される確率が低いそこに住むのです」
「解説ありがとう。なんでくわしいの?」
「僕の親父が言っていました。暗い場所、人通りが少ない場所は犯罪をやりやすいから通るなって」
「夏木のお父さんって『佐倉本地』?」
佐倉本地は僕の父で詐欺師であり国際指名手配されている。
「ええ、そうです。会ったことありますか?」
「あるよ。偉大な科学者だ」
「……?」
科学者? 同姓同名の別人か?
「僕の親父は詐欺師ですよ」
「それは本地さんの一面に過ぎない。じゃあ小手調べのクイズに正解したから本題に入ろうか」




