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2章 爆弾魔カジスキ

 3日前。

 ボランティア部の部室。 

 僕と顧問の渡川三途とがわさんずがいる。変な名前だが本名だ。

 渡川が僕に話しかける。

「夏木君。君は水平思考クイズを知っているか?」

「知ってますよ。ウミガメのスープですよね」

「それはよかった話が早い。3日後警察署に行ってくれ。警察官の『百白紅子ももしろべにこ』がいる」

「べにこ? 変わった名前ですね」

「君の性格が悪いことは知っているが、『べにくらげ』とか『くらげちゃん』とか呼ぶんじゃねえぞ」

 こいつほんと失礼な奴だな、小学生かよ。

「僕のこと何だと思っているんですか……」

「彼女のことはモモさんと呼ぶように」

「はあ。それで僕がなんで警察署に行く必要があるのですか?」

 前科者のあなたが行けよ、と言いたくなるがやめておく。

「モモはうちの部出身だ。水平思考クイズをやるからつきあってくれ」

 クイズにつきあう?

「それは僕に何か良いことあるんですか?」

「クイズに答えて警察に恩を売れば、君の親父の情報が手に入るかもしれないだろう」

 警察に恩を売る?

 どういう意味だ。

「遊びのクイズですよね?」

「夏木君、忙しい警察官が中学生の君と遊ぶと思うか?」

「……」

 そんなもん人によるだろう。

「じゃあ遊びじゃないクイズってなんですか?」

「そりゃあ犯罪がらみだよ。犯罪を解決したいんだよ」

 犯罪に関するクイズだと?

「え? 警察が犯罪の情報を話していいんですか?」

「これはクイズです、とか作り話って形にすればいけるだろ、大丈夫大丈夫」

 大丈夫なわけあるか、ふざけてるのかこいつ。

 というか……。

「水平思考クイズって、出題者が質問に『はい』か『いいえ』で答えるやつですよね?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、モモさんが答を知らないとクイズが成立しませんよ」

 沈黙。

 渡川が口を開く。

「クイズを出すのはモモじゃない」

「モモさん以外に誰かいるんですか?」

「いるのはモモだけだ。モモが持っている人形がしゃべる、そいつがクイズを出す」

「……ぶ、不気味だ」

 人形がしゃべるとかホラー映画みたいだな。

「当然普通の人形はしゃべらない、遠隔操作でカジスキって犯罪者が話している。カジスキのクイズに正解すれば犯罪が中止される」「なんで警察が犯罪者の人形を持っているのですか?」

「しょうがねえだろ、送られてきたんだから」

「……」

 話がややこしいので整理して考える。

 僕は警察署に行きモモさんに会う。しゃべる人形がいる。

 人形はカジスキという犯罪者が遠隔で操作してしゃべる。

 そのカジスキが出すクイズに正解すれば犯罪が中止される、ということか。

 ややこしいし、そんなやつ捕まえろよ。

「というか、そんな気味の悪い人形捨てましょうよ」

「犯罪を防ぐのが警察の仕事だ。それに人形を捨てれば、どこかの誰かに人形が送られてその人が苦しむことになる。モモは立派だよ」

 警察って大変な仕事なんだな。

「人形……カジスキは何の犯罪者なんですか?」

「連続爆弾魔だ」

 前作でテロリストときて今回は爆弾魔か。

「やばいですね」

「やべえよ。初対面でカジスキが『警察署の屋根を爆破したらみんなびっくりするかな?』って私とモモにきいてきたんだよ。私がそりゃあ驚くよって言ったら本当に爆破したからな。しかも建物内部からの爆破だった。いったいどうやったんだろうな……」

 カジスキは警察にケンカを売るイカれた犯罪者のようだ。

「カジスキはどんな人なんですか?」

「まったくわからない。初爆破の後、私とモモは人形を説得した。犯罪はやめるべきだってな。人形は説得を聞かなかった。そしてクイズに答えてくれたら次の爆破をやめてやると脅してきた」

「嫌な人形ですね」

「ほんとにな。私とモモは3年間で8回クイズを出されて、内2回失敗して建物を爆破された。死人が0なのが幸いだ」

 けっこう失敗しているようだ。

「カジスキと付き合い長いですね。初めの警察署と合わせて3回も爆破されているのにカジスキは捕まらないのですか?」

「見つかってすらいない。警察が3回とも監視カメラを調べて聞き込みもしたが、不審な人物がいなかった」

 そんなことが可能なのか?

「見つからない爆破が3回もできますか?」

「普通に考えてありえない。だから、私とモモは爆破の方法について3つの仮説を考えた。

 ①爆弾を仕掛けた者はいたが、監視カメラの映像が加工されて記録に残らなかった。

 ②建物を造った時点で爆弾が仕掛けられている。

 ③何らかの方法で誰にも気づかれず爆破している。

 まず①はありえない、警察署の監視カメラの映像を加工すれば記録に残る。②も可能性は低い、あの警察署は不審物が無いか定期的に建物内部もふくめて検査している。だからおそらく③、何らかの方法で誰にもバレずに爆破しているのだろう」

「どうやってですか?」

「わからない。だから武器や兵器の製造販売をしている友人の墨土佐衛門ぼくどざえもんに相談したよ」

 ん? なんか今変なこと言わなかったか?

「え? 友人の名前もう1回言ってもらえます?」

墨土佐衛門ぼくどざえもん

 土座衛門って水死体のことだぞ。

「それ本名ですか?」

「本名だ」

「噓でしょう……」

「いやマジ、小学生の時から友人で名前は墨土座衛門だった」

 だって、ぼくどざえもん、だぞ?

 国民的青ダヌキを意識した名前だ。

 許されるのかその名前は! 役所は何やってんだ役所は。

「ぼくどざえもん、が許されるのですか?」

「夏木君、ド〇えもんじゃなくてどざえもんな、気をつけろよ」

「どざえもんって言いましたよ僕は」

「ちなみに私と彼は三途と土座衛門だから、学生時代に水難コンビと言われて恐れられていた」

「それ、ぜってー馬鹿にされてますよ」

「……話を戻そう。で、土座衛門が言うんだよ。『大量の爆薬を積んだドローンを建物に侵入させ屋根に突撃させた可能性がある。それに光学迷彩技術を使い見えなくした、大量の爆薬のため移動音がしてバレる、今の技術では不可能だ』って」

 光学迷彩とは透明化して見えなくする技術である。

 なるほどその可能性があるか。 

「うーん、爆破の方法が気になりますね」

「謎だよな。ちなみに今回のクイズに私は参加しない」

 僕は驚いた。

「えっ? 渡川先生はモモさんに協力しないんですか?」

「協力したいが、私とカジスキの相性が悪い」

「相性、ですか?」

「やつは会うたびにクイズの難易度を上げてくる。私は医者なのに数学の未解決問題を出してきやがった」

「それで問題が解けずに爆破されたと?」

「いや、問題は解いた。土座衛門がブラジルの毒ヘビ島に住む世界一賢い数学者なら解けると教えてくれた」

「……行ったんですか? 毒ヘビ島に」

「モモを助けたかったから行ったぞ。地獄だった」

「ひええ。ちなみに毒ヘビの毒は渡川先生に効くのですか?」

「効かないよ。でも、毒が効かなくてもヘビに嚙まれる痛みは感じるし出血もする」

 人助けのためにそこまでするのか。

 いや待てよ。蛇に噛まれない方法があるのではないか?

「……ちょっと待ってください渡川先生、ヘビに噛まれない厚着や装備はありますよね?」

「あるよ、でも暑くて汗だくになるから嫌なんだよ」

「汗かきたくないから厚着せず、噛まれたと?」

「うん」

「……」

 汗かくより、蛇に噛まれるのを選ぶのかこの人。

 前から狂人だと思ってたけど、ここまでおかしいのか。

 よく今まで生きてこれたな。

「それで私は苦労の末に数学者に会った。彼は毒ヘビを生でバクバク食べている変人だった、変人のくせに血だらけの私を見てドン引きしていた」

「でしょうね」

 ドン引きしないと逆に失礼だろ。

「私は彼に未解決問題を解いてもらいカジスキは爆破を中止した。後日数学誌に論文を送ったら賞金をくれたから寿司屋に行ったよ。焼きナスの握りが名物で絶品だった」

「それは良かったですね」

 ナスの握りが名物なのは寿司屋としてどうなんだ。

「もし、私が次にクイズに参加すれば未解決問題以上の難問を出されてしまう。だから私以外の人に参加してもらう。そうすれば難易度も抑えられるだろう」

「そういうものですかね」

 カジスキも初対面の中学生に超難問は出さないのかな。

 というかなんでクイズをしたいんだ?

「渡川先生、カジスキは何が目的なのですか?」

「逆に聞くが、何が目的だと思う」

 僕は考える。

「爆破が目的なら何回も爆破中止するのは変ですよね。……カジスキはモモさんのことが好きなんじゃないですか?」

「私もそう思った。彼は美人警官とおしゃべりしたいのではないかと。私は彼と何回も会話してわかったがそうではないな。モモに対して特別な感情をいだいていない」

「では何が目的だと思います?」

「会話をすることが目的だと思う」

「会話? そんなのどこでもできるじゃないですか」

「夏木君は中学生だからわからないだろう。大人になると会話相手を見つけるのが大変なんだ。例えば天気やニュースの話は誰とでもできるが、フォレストシャッフルや白ブラスの話はそれがわかる相手に話すべきことだ」

「……なるほど」

「カジスキは犯罪やそれにまつわる話を真剣にしたいと思っている。だから爆破中止のご褒美があるのだろう」

「……」

 理にかなっている気がするな。

「僕じゃなくて別の警察官がクイズに参加すればよくないですか? 犯罪に詳しいから正解しやすいでしょう」

「カジスキがモモ以外の警察官の参加は認めていない。だから今までは私が参加していた」

「それでモモさんがクイズに正解することもあったのですか?」

「無いぞ」

「すごく不安になってきました」

「モモは警察としては優秀なんだ、仕事熱心で地域住民にも愛されている。だが犯罪者の心理を考えたり、相手の言葉の裏をつくのが苦手なんだ。

 その点夏木君は素晴らしい。君の親父が国際指名手配犯のせいで命を狙われているから常に相手の裏を考えて成功している。天才だ」

 ぜってー僕のこと馬鹿にしているぞこの人。

「わかりました、成功するかはわかりませんがクイズに協力します」

「クイズが解けなくても気に病まないでくれ夏木君。私だって2回失敗しているし、たぶん爆破されたって死人は出ない」

「ふと思ったのですが。中学生の僕を犯罪に巻き込むのおかしくないですか?」

「ん? 君はクソ親父のせいですでに巻き込まれているだろ。たいして変わらない」

「……。いや、カジスキと会話をすれば、僕の情報を握られますよね? 危ない人に僕のことを知られたくないです」

「ああ心配するな。君の親父は世界中の人間から恨まれている、だから息子の君の情報なんてネットで調べれば簡単にヒットする」

「僕のプライバシーどうなってるんですか?」

 僕はやけになってわめく。

「有名人の息子なんてそんなもんだぞ」

 なぐさめにもならない言葉を渡川がかける。

「早く捕まれよクソ親父」

 僕はそう吐き捨てた。

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